賢者の贈り物
美咲は⦅夢を見るなら、幸せな夢がいいな~。⦆と思った。
そして⦅今日は、いい夢見れそうな気がする。⦆とも思った。
プレゼントして残ったボーナスは僅かだったが、幸福感に包まれている。
だから、良い夢を見られると思ったのだ。
目を瞑っているといつの間にか美咲は夢の世界に入っていた。
貧しいジェイムズ・ディリンガム・ヤング夫妻が、お互いにクリスマスプレゼントを買うお金を工面しようとする。
夫のジムは、祖父から父そして自分へと受け継いだ金の懐中時計を宝物にしていた。
妻のデラは、膝下まで届く美しい髪を持ち、それはまた夫婦の宝物でもあった。
デラは、懐中時計に付けるプラチナの鎖を夫へのプレゼントとして買うために、髪の毛を買い取る商人マダム・ソフロニーの元で宝物の髪をバッサリと切り落として売ってしまう。
「いい値段で売れたわ。
これで、あの人にプラチナの鎖を買えるわ。」
一方、夫のジムは、デラが欲しがっていた鼈甲の櫛をプレゼントとして買うために、宝物の懐中時計を質に入れてしまっていた。
「良かった。この値段なら鼈甲の櫛を買える。
喜んでくれるだろうか?」
そして、クリスマス――夫は妻に……、妻は夫にプレゼントを渡した。
「開けていい?」
「うん、開けて!
僕も開けていいかな?」
「ええ、開けて頂戴!」
二人ともプレゼントを開けた。
「これは………。」
「これって………。」
「デラ!」
「ジェイムズ!」
「デラ、こんな高級品、どうやって手に入れたんだ?」
「ジェイムズ、貴方こそ、こんな高級な櫛……どうやって?」
「デラ……ありがとう。でもね、もう使えないんだ。」
「どうして?」
「質に……入れたんだ。」
「!」
「君の髪に、この鼈甲の櫛を……そう思って質に入れた。
ごめん。君の厚意を無にしてしまって……。」
「いいえ、私こそ……ごめんなさい。」
デラは隠していた頭を見せた。
ジェイムズは驚愕した。
「デラ! その髪は………。」
「売ったの。貴方の懐中時計にプラチナの鎖を付けて貰いたくて……。
ごめんなさい。
私こそ、貴方の厚意を無にしてしまって……。」
「そんなことはいいんだ。
それよりも、あんなに綺麗な君の髪を切らせてしまって……済まない。」
「いいえ、いいえ! 髪はまた伸びるわ。」
「デラ……ありがとう。最高のプレゼントだ。」
「ジェイムズ……私こそ、ありがとう。 最高のプレゼントだわ。」
デラが買ったプラチナの鎖が付くはずだった懐中時計は夫の手元にはすでに無く、ジムが買った鼈甲の櫛が留めるはずだった妻の髪もすでに無く、結局お互いのプレゼントは無駄になってしまった。
だが夫婦は、お互いの「思いやり」をプレゼントとして受け取ることになった。
二人は優しく抱き合った。
クリスマスの夜の優しい時間が過ぎて行った。
天使がその二人を見ていた。
⦅あぁ……やっぱり……先輩と香川先輩だ。
私は?
私は……天使? 天使なんだ……。⦆
そこで、美咲は目覚めた。
「初めて私が夢に出てきた……。
もしかしたら、今までも出て来てたのかな?
覚えてない。
……………夢の中さえも、私は……叶わないのよね。」
そう呟いて、美咲は起き上がった。




