恋人たちのクリスマス
美咲は初めての冬のボーナスで家族にプレゼントをすることにした。
何がいいか?と考えに考えた結果、両親には映画のチケットを2枚買った。
両親が見たいと話していた映画である。
「なんとっ! 美咲が……。」
「美咲、いいの?」
「いいよっ! クリスマスに観に行ってよ。」
「どうして?」
「クリスマスデートして欲しいなぁ~。」
「デー……美咲、親を揶揄わないで!」
「揶揄ってなんかないよぉ~。
二人でデートって何時以来?」
「美咲……。」
「美琴が生まれる前だな。」
「お父さん……恥ずかしいから止めて……。」
「へぇ~~~っ、でっ、どこに行ったの?」
「初めてのデートは映画だったよ。」
「そうなんだ。どんな?」
「お終い!」
「お母さん、いいじゃん。」
「駄目よ。お父さんとの大切な想い出だから内緒。」
「それは、それは……御馳走様でした。」
「美咲っ!」
「ご馳走様でした!って言うのよね。」
「そうだ。合ってるよ。」
「もう………。」
「合ってたんだ………ご馳走様でした。」
姉夫婦には豪華な食事を!言えるほどのボーナスを貰っていない。
それでも食べられるようになった姉に食べて欲しくて、実家の近くの店を選んだ。
小さな店だが、小さな個室もある。
そこをクリスマスに予約した。
勿論、先に支払い済みで……。
「美咲ちゃん、いいのかなぁ?」
「いいんです。その代わり!」
「その代わりが怖いわ。」
「お姉ちゃん!」
「その代わり、何?」
「赤ちゃんを抱っこさせて!」
「なんだ。そんなことでいいのか?」
「うん、いいの。お義兄さん。」
「美咲……抱っこだけじゃなくてオムツ替えの権利も取得出来るわよ。」
「オムツぅ~………それは、ちょっとご辞退申し上げます。」
「まぁ………うふふ………。」
兄夫婦には……見つからなかった。
見つからなかったので、食事券を贈った。
「おおっ! クリスマス前にThank you!」
「これで良かった?」
「もちのろんだ!
クリスマスで奥さんとディナーする時に使わせて貰うぜ。」
「奥さん、って………プっ……。」
「笑ったな。」
「……いいえ、そのようなこと致しておりません。
では、兄上様、義姉上様に宜しくお伝え下さい。」
「承知!」
⦅夏のボーナスは少なかったから、冬のボーナスでプレゼントしたけど……
みんな喜んでくれて、めっちゃ嬉しい!
それにしても……仲が良くって……なんか嬉しいな。
……あれっ? ひょっとしてクリスマスは私一人?
あ………一人でクリスマスか……まぁ、いいや。
チキンは……コンビニで買おう! ショートケーキも買って……。
ローソクは……無くていいや。⦆
そう呟いて、美咲は少しだけ寂しくなった。
両親もデート、姉夫婦もデート、兄夫婦もデート。
美咲だけが一人で家に居る一人だけのクリスマスを今年は迎える。
そして、同期も恋人とのクリスマス。
先輩たちも恋人とのクリスマス。
⦅クリスマスは恋人たちの為にあるんじゃないかな?
恋人たちのクリスマス。
………先輩は………先輩は………香川先輩とデートなのかな?⦆
その二人が寄り添う姿を目にしたら、きっと、また胸が痛む。
それだけは美咲にもはっきり分かる。




