紅葉狩り
歩道の樹木も少し色付き始めた頃、美咲は家族と紅葉狩りに出掛けた。
姉の悪阻が治まり、少し遠出が出来るようになった。
姉の夫が「紅葉狩りに行きませんか?」と誘ってくれたのだ。
両親と美咲も姉夫婦との紅葉狩りは思っても居ない贈り物だ。
色付いた山の木々。
寺の紅葉は見事なばかりに紅い。
「綺麗ね。」
「本当!
……お義兄さん、連れて来てくれて本当にありがとう!」
「美琴が喜ぶことだから……美咲ちゃんも喜んでくれて嬉しいよ。」
「もおっ! ラブラブなんだからぁ~。」
「美咲……大人を揶揄うんじゃありませんよ。」
「もう18よ、お母さん。もう直ぐ19になるんだから……。」
「まだまだ18歳よ。」
「そうだな。まだまだ18だ。」
「お父さんも!」
「美琴、気分はどう?」
「ありがとう、駿。大丈夫よ。」
「お姉ちゃん、イチャイチャしないでね。」
「美咲っ! もう、あんたって子は……。」
「じゃあ、美咲ちゃんのご期待に応えてイチャイチャしようか。」
「もう、駿まで……。」
姉の頬が紅葉に負けないほどに紅くなっている。
両親の後ろを付いて歩いている美咲の後ろを姉夫婦が歩いた。
ふと、「お姉ちゃん。」と振り返って姉を呼ぶと、姉夫婦は手を繋いでいる。
繋いだその手を義兄のポケットに中に入れている。
「なぁに?」と慌てて返事をした姉は、手を離そうとしたようだ。
たが、義兄は離さなかった。
姉は抗議をするような眼差しを義兄に向けたが、義兄は全く意に介さずに笑みを浮かべている。
「仲がお宜しくて……おほほ……。」
「美咲っ!」
「お姉ちゃん、無理してない?」
「大丈夫よ、ありがとね。」
⦅お姉ちゃん、悪阻が治まって本当に良かった。⦆
美咲は姉夫婦に笑みを向けて、両親の元へ走った。
とても楽しい一日だった。
翌日、会社で紅葉狩りの話をして、スマホに収めた写真を見せていた。
「おっ! 紅葉狩り? いいね。」
「!………先輩………。」
「行って来たの?」
「はい。」
「誰と?」
「家族と行ってきました。」
「家族と……そっか……。」
同期が「先輩は紅葉狩りに行きます?」と聞いた。
それに「今年は行かないかな?」と答えた先輩は、「じゃあね。」と手を振ってフロアを後にした。
⦅顔、熱い……。
……まさか……赤くなったりして無いよね。
誰にも知られたくない。
だから、赤くなったらいけないのよ。
気を付けなくっちゃ……。⦆
「美咲、どうしたの?」
「何が?」
「なんか、さっきのもみじ狩りの話してる時から顔が赤いよ。
熱でも出てる?」
「大丈夫だよ。
すっごく楽しかったから、きっと興奮したんだよ。」
「そうなんだ。美咲ってお姉さんのこと大好きだよね。」
「うん! 大好き!」
「うふふ……仲良い姉妹ですな。いいなぁ~。
あ……行った所を詳しく教えてよ。
今度のデート先にするわ。」
「うん、メッセージ送るね。」
「よろしく!」
同期にメッセージを送った。




