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名残りの雪  作者: yukko
17/30

七夕女房― 徳島県祖谷山地方 ―

昔々、ある村にひとりの狩人かりゅうどが住んでいたそうな。


七月のある暑い日に、川のそばを通りかかると、三人の若い娘が水浴びをしていたと。

「はて、どこの娘ぞ」と近づいてみたら、岸の松の木に美しいころもが掛けてあった。

狩人は、その中の一枚をとって隠したと。

夕方を待って、再び川へ行ってみると、娘が一人、しくしく泣いておった。

狩人は、何くわぬ顔で聞いたと。


「おい、おい。お前はどうして泣いている。」

「はい、私は、実は天人てんにんの娘です。

 ここへは時々水浴びに降りていたのですが、今日にかぎって、松の木の枝に掛けて

 置いた私のぎぬが無くなっていたのです。

 あれが無いと天に帰ることが出来ません。」

「それは困ったことだ。

 どうじゃろ、行くところがないのなら、おらの家に来ないか?」

天人の娘は、下界ではこの狩人よりたよる人がないのでいて来たそうな。


次の日、狩人は大工だいくをよんで来て、大黒柱の中をくりぬいてもらった。山へりょうに行く前には、必ず、柱の中をのぞいて行くのだと。

いつしか天人の娘は狩人の女房になり、子供が生まれて、三歳になったと。

ある日、狩人が山へ猟に行った留守るすに、子供が、「おとうちゃんは、山へ行くときにはいつも、この中をのぞいて行くけど、何があるの」と、大黒柱を指差して、おっ母さんに聞いた。

女房が大黒柱の中をのぞくと、なんと、自分の飛び衣が隠してあったそうな。

「さては、あの時飛び衣を盗ったのは、我が夫であったか」と、嘆いたと。

女房は、飛び衣を着ると子どもを負ぶって、飛び上がった。

一度あおると庭の松の木の上に、二度あおると雲のみねに、三度あおると天上てんじょうに届いたそうな。


夕方になって狩人が家に帰ったら、誰も居ない。

慌てて大黒柱の中を覗くと飛び衣が無い。

それで、天に帰ったと知れたと。

狩人の家の門先かどさきには、イゴツルの木があって、それが天まで伸びていたと。

狩人は、()()()()()()()の二匹の犬を連れて、イゴツルの木をつたって天に登って行った。

天上の女房の家へ行き、女房の父に、「おらを、是非ぜひ、この家のむこにしてくれろ。」と頼んだと。

そしたら父は、「ソバ山へ行って、明日一日のうちに三斗三升さんとさんしょうまきって来たら婿にする。」と言った。

狩人が、⦅とても出来ん。⦆と思って途方とほうに暮れていると、女房が、「大丈夫、この扇子せんす(あお)げばいい。」と言って、一本の扇子をくれた。


次の日、言われた通り扇子で扇いだら、三斗三升の薪の木は、たちまち伐れた。

そしたら、次に、「昨日伐った三斗三升の木株を、明日一日で焼いて来い。」と言う。

これも途方に暮れていると、女房が、扇子で扇げと教えてくれた。

次の日、言われた通りにして木株を焼いたと。

そうしたら、今度は、「三斗三升のソバの種を明日一日でけ。」と言われた。

これも扇子を使って、なんなく済ました。

そしたら女房の父は、「それでは婿にしてやるが、山小屋へうりの番に行ってくれ。」と言う。

女房は狩人にそっと教えた。

「天上では、瓜は食べてはいけないことになっているから、決して食べないように!」

ところが、山小屋に行った狩人は、のどかわいてならないのだと。

我慢出来なくなって、一つぐらいはいいだろうと、瓜をもぎ取ったと。

食べようとして割ったら、瓜の中から大水がどおっと出て、狩人はとうとう下界へ流されてしまったと。

ちょうどその日は七月六日だった。

七夕様には狩人と天人の女房をまつってあるが、瓜を七夕様にお供えしないのは、そのためなんだそうな。


もうないと。



「!………夢、見てた。

 七夕……私が知らない七夕。

 織姫と彦星じゃない七夕。

 アニメの昔話を見てから寝たから?

 天女は香川先輩だった。

 そして、狩人は……やっぱり……先輩。」


美咲はそう呟いて⦅諦めないといけないのに、どうして夢に出て来るの?⦆と悲しかった。

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