七夕と夏祭り
入社して初めての夏。
七夕の日。
美咲は姉の家に行った。
姉は悪阻で辛そうだった。
「美咲ちゃんも来てくれたんだ。」
「はい。お姉ちゃんが心配で付いて来てしまったの。」
「ありがとう。」
「美琴、悪阻があるから赤ちゃんは無事だって証拠なのよ。」
「お母さん、産めば終わるわ。」
「産むまで続くの?」
「そういう人も居るのよ。」
「もう辛くって、早く終わりになって欲しい。」
「5ヶ月になったら、多くの人は悪阻とオサラバするのよ。
もう少しだからね。」
「うん……。」
「お義母さん、また申し訳ないんですが……美琴を実家で過ごさせて貰えません
か? お願いします。」
「あらっ? どうして?」
「お義兄さん、また出張なんですか?」
「出張じゃないけど、帰る時間が遅くなるんだ。
今ね、新規事業立ち上げで俺はそのメンバーなんだ。」
「そうなのよ。同じ会社で私が総務だから、先に知ったのよ。」
「そうなの。」
「美琴のこと看れないんですよ。」
「会社は? 休んでるの?」
「行ってるけど、仕事に成んなくって……早く悪阻とさよならしたい!
……ごめん……。」
そう言って姉はお手洗いへ急いだ。
その後を義兄が続く。
姉がまた家で過ごす。
美咲は嬉しかった。
「ねぇ、週一回は最低でも会いに来てね。」
「勿論!…………お義母さん、済みません。お邪魔させて頂きます。」
「週一回の織姫と彦星みたい!」
「美咲は…………。」
そう言って姉はまたお手洗いへ急いだ。
美咲は⦅妊娠って大変なんだ! お姉ちゃん、大丈夫かな?⦆と姉を案じた。
会社の近くの神社があり、そこでも夏祭りがある。
会社の人達と行くことになった。
美咲は同期の女子社員たちと歩いた。
夜店が沢山出ていて、それだけで美咲たち新入社員は楽しめた。
金魚すくいをして、焼きそばを食べて、かき氷も食べた。
傍で先輩たちが歩いている。
付き合ってる人が意外と多いように美咲は感じた。
「ねぇ、なんだか多いと思わない?」
「うん? 何が?」
「社内恋愛してるかも……の先輩。」
「あぁ……多いかどうかは分かんないけど、今日の二人っきりの人達は彼と彼
女だよ。」
「そうなんだ。知らなかった。」
「ってか、美咲は気付かなかったのよ。」
「そうなの?」
「うん、ほんわかしてるから……と、仕事覚えるのに必死って感じ?」
「あ……それだわ。仕事覚えるのに必死!」
⦅でも、私でも分かるよ。香川先輩と……先輩のことは……。⦆
いつも美咲は見つけてしまうのだ。
香川と美咲が片思いしている先輩の二人を……。
二人一緒の時を……。
二人で楽しそうに話している時を……そして、帰りの電車で一緒だったことを……美咲は見ていた。
今も目の端に二人の姿を捉えている。




