エーレンベルク稿
美咲は⦅もう! お兄ちゃんったら、お父さんに対抗して……怖い話はこう懲り懲り!⦆と兄にほんの少しの苛立ちを覚えながらベッドに横になった。
深い闇のような美咲の睡眠の時間が始まった。
昔々、ある国に黒檀の木のように黒い瞳を持つ、それはそれは美しい姫がいた。
母親(王妃)が自ら白雪姫を森の中に置き去りにした。
「お母様、おいて行かないで下さいまし。
お母様……お母様ぁ~。」
置き去りにされた森には小人が住んでいた。
小人たちに姫は頼んだ。
「お食事を作りますから、どうか、ここに置いて下さい。」
「作れるのかい?」
「ええ、作れます。」
「じゃあ、頼もうよ。」
「ええ―――っ! 頼むのか?」
「仕事が終わって帰ってから作るの大変だから頼むよ。」
「じゃあ……ここに置いて下さるの?」
「いいよ。」
小人たちは姫の願いを叶え、一緒に住み始めた。
姫の母親(王妃)は、姫の生存を知った。
美しい姫に母親(王妃)は姫に半分だけ毒が仕掛けられた林檎を食べさせた。
毒が仕掛けられた林檎を食べた姫は息を引き取った。
小人たちは悲しみ、そして美しい姿を永遠に残すために白雪姫の遺体をガラスの棺に入れた。
小人たちは白雪姫が入れられたガラスの棺を、自分達の住む小屋の中に安置し、交代で見張った。
ある日、小人たちが住む森に、ある国の王子がやって来た。
王子は小人たちの住む小屋に泊めてもらうために訪れた。
その時、王子はガラスの棺に入っている美しい姫を見た。
姫に心惹かれた王子は小人たちに頼んだ。
「お願いだ。この美しい人を私は買いたい。
ガラスの棺ごと買わせてくれないか。」
「買いたいって?」
「幾らでも出す!」
「白雪姫を売ったりしない!」
「売れないなら……どうすればいい?」
「どうすればって……。」
「私は、どうしても姫が欲しいのだ。
ガラスの棺は要らない。
姫だけが欲しいのだ。
どうか、私に譲ってくれ! 頼む!」
「そんなに……?」
「ああ! 姫に心惹かれたのだ。」
「大事にするか?」
「勿論だ!」
「大事にしてくれるなら……。」
白雪姫はガラスの棺に入ったまま王子のお城に運び入れられた。
「これから、私が傍近くに居るから……安心して。」
王子は四六時中、白雪姫の傍から離れなかった。
棺から離れなければならない時は、王子は白雪姫を見られないことに悲しみ、棺が横にないと食事も喉を通らない程だった。
召使たちはいつも白雪姫の入った棺を運ばされるので腹を立てていた。
そのうちの一人が怒りに任せて白雪姫の背中を殴ると、喉につかえていた林檎の芯が飛び出して、白雪姫は生き返った。
毒で命絶えたのではなかったのだ。
「ここは……どこ?」
「……姫!」
「貴方はだぁれ?」
「私は、この国の王子です。
姫っ! これから永遠に私の傍に……貴女を……。」
王子は白雪姫を抱き締めた。
白雪姫は王子と結婚した。
その祝宴の時に………白雪姫を謀殺しようとした王妃である白雪姫の実の母親は、その報いを受けた。
祝宴の最中に白雪姫らの目前で真っ赤に灼けた鉄の上履きを履かされ、火傷を負いながら死ぬまで踊り続けさせられた。
王子と白雪姫が幸せそうに微笑んでいるその時、実の母は命を終えた。
⦅怖い~~ぃ。⦆と思った瞬間、美咲は目覚めた。




