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第七話 「滅びの時、目を閉じた瞬間」

 深雪は、ただ歩き続けていた。

 街の広場を、無表情で、足音だけが虚しく響いている。

 その音は、どこまでも広がり、また吸い込まれるように消えていく。

 意識が完全にぼやけていくのを感じながら、深雪は足を止めることなく前進し続けた。

 無意識に、無感覚に。

 ただ、動き続けることしかできない。


 目の前の道は、途中で曲がっている。

 彼女の目には、前方の景色が徐々に見えなくなっていくように感じられた。

 今、自分がどこにいるのか、どこを歩いているのか、全くわからなかった。

 体が動く限り、ただひたすらに歩き続ける。

 それが、今の深雪にできる唯一のことだった。


 視界がぼんやりと揺れ、目の前にあるものが滲んでいく。

 しかし、ふと立ち止まり、足元を見ると、そこには鮮やかな血の跡が残っていた。

 その血痕は、深雪の歩みを追うかのように続いていた。

 やがてその先には、倒れた人々が横たわっている。


 深雪はその一人一人を見つめる。

 顔が見覚えのある人物の顔に変わったかと思うと、すぐにその記憶も消え去る。

 誰が誰だったのか、もう全く思い出せない。

 ただ、その顔が血に塗れて、息絶えているだけだ。


 足を一歩踏み出す。

 それでも動く身体は、何も感じず、ただ前に進む。

 目の前に現れるものは、全て消えていくかのようにすぐに薄れていった。


 だが、ある瞬間、深雪は止まる。

 目の前に広がっていた景色が、ぼやけながらも鮮明に見えるようになった。

 その先には、見たことのある人物が立っていた。

 彼の目は、深雪をしっかりと見つめている。


 その目を見た瞬間、深雪は心の奥底で何かが揺れるのを感じた。

 その人物の顔に見覚えがあった。

 昔、何度も一緒に過ごしたはずの顔だった。


 深雪は、無意識にその人物に向かって歩みを進める。

 だが、足元はしっかりと地面を捉えているわけではなかった。

 身体はふらふらと揺れ、何度も踏み外しそうになる。


「助けて…」

 その言葉が、深雪の喉の奥からこぼれ落ちる。

 しかし、声は出ない。

 深雪の口が動き、心の中では助けを求める声が響いているにもかかわらず、その声は全く届かない。


 目の前の人物がゆっくりと近づいてきた。

 その目は、何も語らずにただ深雪を見つめている。

 そして、その目の奥に、確かに何かが宿っているのを感じた。


 深雪はその目を見つめ返す。

 その目に引き寄せられるように、少しずつ歩みを進める。


「私は、まだ…」

 深雪は自分の体に言い聞かせる。

 だがその言葉すら、無力だった。

 その声が、どこか遠くで消えていく。


 足元が崩れ、深雪はついに膝をついて倒れ込んだ。

 身体が震え、そして心臓が激しく鼓動を打つ。

 その鼓動の音だけが、深雪の耳に響く。


 目の前の人物が、深雪の方に一歩近づいた。

 その顔が少しずつ鮮明になり、深雪の記憶が呼び覚まされる。

 その人物の名前を、深雪は思い出した。

 それは、かつて深雪と一緒にいた、あの人だった。


「…あなたは、誰だ…」


 深雪はふらふらと立ち上がり、その人物の方に手を伸ばす。

 その手が、その人に触れた瞬間、深雪の心は揺れ動いた。

「あなたが、ずっと…」


 その瞬間、深雪の身体が再び動く。

 無意識に前に進み、あの人に触れようとした。

 だがその手を、何かが引き寄せた。


 その時、深雪は恐ろしいほどの感覚に襲われた。

 身体の奥深くから湧き上がる絶望感、空虚感、無力感。

 それが一気に押し寄せ、深雪は目を見開いたままその場に倒れ込んだ。


 すべてが崩れ去った瞬間、深雪は最後の思いを抱えて目を閉じる。

 それは、彼女が失ったすべてを見守るような静かな時間だった。


 その瞳が閉じられた瞬間、全てが終わった。

 深雪は最後に、心の中で静かに呟いた。

「さようなら…」


 その瞬間、目の前に広がる世界は完全に消え去り、深雪の存在もまた、虚無の中に溶け込んだ。


 物語はここで終焉を迎え、深雪の運命が完全に閉じられました。

 最期の瞬間、彼女が何を感じ、どのように思ったのかは、もはや誰にも知ることはない。

 そして、滅びゆく世界はそのまま静かに終わりを迎えた。

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