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第三話 「消えた声、残された涙」

 深雪は、目を覚ました。

 まるで覚醒したかのように意識が戻るが、身体は思うように動かない。

 無理に手を動かそうとするが、すぐに激しい痛みが走り、力が抜けた。

 どこをどう動かしても、身体のどこかが自由を奪ってくる。


 その瞬間、目の前に広がる景色が目に入る。

 無言で歩く人々、血に染まった地面、倒れた無惨な姿。

 いったいこれは、何なのだろうか。


 心の中で、深雪は必死に問いかける。

 どうしてこうなったのか。どうして、何もかもがこんなにも壊れてしまったのか。

 だけど、答えは見つからない。

 彼女の心が叫び続けるが、その声はもう届くことはない。


 身体は勝手に動く。

 前へ、前へと進み続ける。

 その動きは、まるでどこかに導かれているかのように感じる。

 何かを求め、何かを追いかけている。

 それが何なのか、深雪にはわからなかった。


 ただ、身体が動くままに進んでいく。

 目の前に現れたのは、倒れた男性の姿だった。

 深雪はその体に近づき、手を伸ばす。

 冷たく、硬直したその体を見つめながら、深雪は何もできなかった。


「お願い…」

 その言葉を心の中で叫ぶ。

 でも、その声もまた、誰にも届かない。


 周りの人々は、また一人一人と倒れていく。

 ただ、誰もが無言で、無力なまま命を散らしていく。

 深雪の目には、涙が溢れ出していた。


 その涙が、どこに向かって流れていくのか、深雪はわからない。

 ただ、心の奥で、誰かに助けを求め続ける自分がいるのを感じていた。


 身体は、また勝手に動く。

 歩き続け、また新たなターゲットを見つける。

 でも、心の中ではその一つ一つに対して、強い後悔と罪悪感が込み上げてきた。


 その中で、深雪の意識はどんどんと消えていく。

 心の叫びが、次第に弱まっていくのがわかる。

 それでも、どこかでまだ感じていた。

 まだ、心のどこかで「逃げたい」と願っていた自分がいることを。


 だが、その願いも叶うことはない。

 深雪はただ、目の前に現れるものを手に取ることしかできなかった。

 そして、また食べる。

 何度も何度も、無限に繰り返していく。


 その中で、深雪はただ一つのことを感じる。

 自分が、もはや人間でないことを。

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