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第2話《ハイハイを習得しました!》



 ――これは、画期的であった。



 とんでもない発明に、俺は歓喜に震えている。これほどの感動を、これまでの人生で俺は知らない。まぁ、生後1ヶ月なのだが。俺はある思い付きから、とんでもない技術を身に付けた。



 それが、ハイハイだ。魔力を全身に流して、肉体強化をできないものかと試してみたのだ。そしたら何と、ハイハイができてしまった。両親も大喜びで、俺は堂々と色んな所へと這いまわる手段を手に入れたのだ。



 まさかこれ程までに、ハイハイが便利だとは思わなかった。両親の目を盗んでは、書庫の本を拝借している。読んでいる所を見付かっても、癇癪(かんしゃく)を起こせば取り上げられないことも学習済みだ。



「ルディアはホントに、お利口さんだなぁ~ッ!」

「あぎゃーッ!」



 抱き締めてく頬擦りをしてくるマルスに、俺は最大級の拒絶反応を示してやった。過度の愛情は、そもそも(くすぐ)ったい。なのでナディアに抱き締められた時も、恥じらいのような気持ちがどうしても拭い切れない。



 両親からの愛は温かいのだが、まだまだ戸惑ってしまう。なのでもう少し、そっとしておいて欲しい。



「マルスったら。ホントに、親バカなんだから」

「だって、こんなに可愛いんだ。パパはルディアが、大好きなんだぞぉ~ッ!」



 だから、止めろよ。俺も中身はオッサンなんだ。オッサンが、オッサンをハグして頬擦り。そんなシチュエーションは、誰も望んでいない。まぁ、絵的には父親が、自分の赤ん坊を抱っこしてるだけだが――そんなことは、俺には関係ない。



「おんぎゃあ~ッ!」

「あんぎゃあ~ッ!」



 防衛のために思わず俺は、覚えたての雷電系の魔術を発動してしまった。マトモに喰らったマルスが、悲鳴を上げている。




「貴方、どうしたの?」

「ルディアが、魔術を使った……?」



 不思議そうに、マルスが俺を見ている。無意識にとはいえ、父親に敵意をぶつけてしまった。後悔と罪悪感が、胸を満たしていく。俺はやってはいけないことを、やってしまったのだ。マルスの澄んだ碧眼が、俺の心を射抜(いぬ)いている。




「凄いな……」



 ぼそり――と、呟くマルス。その顔には、満面の笑顔が浮かんでいる。



「凄いぞ、ルディアッ!」



 俺を抱き抱えて喜ぶマルスを見て、俺のなかの罪悪感は吹き飛んでいた。



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