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生徒会長とおさんぽ

「すまなかったな」


「いえ……」と私は首を振ったが、いろいろと事情がありそうでつい心配になり、「大丈夫ですか?」と聞いた。


 すると大原詩子はキョトンとして、「大丈夫って?」と聞き返す。


「いえ、先輩がなんだか辛そうに見えたものですから」


 彼女に対しては、他からもいろいろあるように思う。部活紹介の時の倉沢先輩といい、委員会のオダキョー先輩などもそうだ。


「実は僕、クラス委員なんです。先日の全体員会にも出席していたんですよ。あのときも他の人からの先輩に対する風当たりが強そうだったので、つい心配になってしまって……余計なお世話だったらすみません」


「そうか、あそこにいたのか」

「一年なので目立たないよう隅っこで小さくなってました」

「ははは」と彼女は笑い、「ありがとう。でもキミが気にすることではないよ」という。


「そうですか。では気にしないことにします」


 私がそう言うと彼女はふたたび目を丸くした。

 根掘り葉掘り問い詰められるとでも思ったのだろうか。

 大原部長は小さくクスリと笑うと、歩きながらこちらを振り返った。


「誰かに何か言われたら遠慮なく私に言いなさい。これでも生徒会長だからね。理不尽な相手の言いがかりなど黙らせるくらいの手管は持っているから」

「職権乱用じゃないですか」

「アハハハ」


 笑うととてもチャーミングな女の子である。

 ところがその直後、大原部長は一転して表情を曇らせた。


「まあ、わたしにだって判ってる。あいつの言うとおり、こんな部続けたって、なんの意味もないんだ」

「そんなことはないでしょう。部長の紹介を聞いて意味深いことをやっている部だと思いましたよ。こんな部活、他校にはなかなかありません」

「そうかな」

「散策部には、他の部員はいないんですか?」

「いないよ。実質的にはね(・・・・・・)。わたしと織原くんだけだ。先日、先輩方がこぞって卒業しちゃったから」

「そうですか、それは残念です」


 その言葉から察するに、誰かから名前だけ借りてこの部を存続させているのだろうことがうかがえる。それを聞いたら立ち入ったことだろうかと逡巡していると、


「部活紹介はしなくてはならない決まりなので仕方なくやったまでだよ。生徒会長が規則を破っては示しがつかないからね。正直、新入部員なんか来ないと思っていた。そうしたら自然にお取り潰しになるだろうと思った。それでいいと思っていたんだ。この部はわたしの代で消滅させるつもりなんだ」

「えっ、じゃあやっぱりご迷惑だったんじゃ……入部を断ってもらってもよかったのに」

「いずれ部員が二名だけでは同じことさ。だからそれまでならいいよ」

「そうですか」

「いい加減な部活で失望したろう?」

「まあ、できれば続けたいと思って入りましたからね。白状しますと実は僕も今のところ他の部活のアテなんかないんです。自分に参加できそうな部活がここしかなかったというくらいで……」


「わが部は、もともとは『歴史散策部』といったんだよ。ほら何年か前にナントカ歴史散策という番組が流行ったろう? 当時非常に人気のあったタレントの……木元なんとかという人が登場して土地の史跡を巡り歩く番組。知らないか?」


「それならたしか『キモさんの気ままにブラブラ歴史散策』でしたかね?」


「よく知ってたね。キミは当時まだ子供だろ?」

「大原先輩だってそうじゃないですか」

「わたしは記憶力はいいんだ。君こそふたつも年下のくせに……」

「あはは、それもそうですね。僕も部長と一緒で記憶力がいいんですよ」


「あの番組のブームと部の創立が同時期だったらしくて、あの番組にあやかって名付けられたらしいが……部の活動としてはあの番組よろしく地元の歴史を調べ史跡を巡る、そんな目的があったらしい。つまりウチの部の活動のメインは古跡めぐりだったりするわけだが」


「散策部は『この界隈を散策することによってより深く地域を知り、歴史を知り、文化を知ることを目的として活動している』ということでしたね」


「うん。けれど『おさんぽ部』なんてつまらない中傷をしてくるヤツも多い。イヤだと思ったらいつでもやめていいんだぞ」

 苦笑まじりに彼女は言った。

「いや、やめませんて」と私も苦笑い。「そう思ったら遠慮なくそうさせてもらいますが、今のところそんな気はありません。少なくとも廃部という判断を学校がするまでは居させてもらいたいと思ってます。せっかくの部活なんですから」

「そうか。じゃあよろしく頼むよ」

「こちらこそ、お願いします」

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