執筆中の妻に食事をつくってあげた
翌日は土曜日だった。
部活を始めるとなれば、また何かと迷惑をかけるかもしれないので、いちおう妻にも報告をしておこうと思った。
妻のかよこはいつものように、二階の執筆部屋にこもってとある文芸誌に連載している作品の執筆最中だった。
控えめに部屋のドアをノックする。
「そろそろお昼にしませんか」
「はーい」
と部屋の奥からくぐもった声が返ってきた。
「わー、パスタね!」
「アラビアータです」
「パスタ食べたかったのよ~」
「それはよかった」
妻にはふだんかまってあげられない分、お休みにはせいぜいゆっくり接してあげようとしている。これもその一環だ。
「アナタが作ったのこれ?」
「ソースは出来合いですが。ちょっとだけ手も加えました」
妻は皿のペンネリガーテをフォークで器用に掬って口に運び、
「おいしいわ!」とニッコリ。
「そうかい? よかった」
私もフォークを取って食べ始めた。
「そういえば、部活に入りましたよ」
すると妻は皿の上のペンネを一つブスッと刺して、目の前でふりかざしはじめた。
「アナタちょっと入り込みすぎじゃないの? 学級委員の次は部活? 本当に大丈夫?」
「学級委員じゃなくてクラス委員ですよ」
「そんなのどっちだっていいわよ。光流くんもこのところ何やってんだか帰りが遅いし……正直ちょっとどうかと思うけど?」
いつも筆が乗っているときは私や光流が話しかけるとすぐ鬱陶しがるくせに。
「五月蠅いのがいない所で少しは落ち着いて執筆できるんじゃないですかね。だめかい?」
おそるおそるそう言うと、
「ダメとかいう問題じゃないのよ。ダメなら最初から反対しているわよ」
「ごめんよ」
「べっつに、謝ることなんかないんじゃない?」
妻は何かが気に食わないのだ。
私としても妻の機嫌を損ねてまで何かをしようとは思わないので、原因を探ろうとさらに会話を重ねる。
「でも活動が緩い部活だから、そんなに忙しくはならないよ。生徒会長が部長なんだ。彼女そっちの仕事で忙しいし」
「彼女? また女なの?」
妻の方眉が吊り上がった。
これか。
「あのですね……何度も言ってるけど女子高生ですよ。子供ですよ。それにたまたまですからね? 僕から進んで女子に近づいているわけではありません」
「どうだか……」と難しい顔をする妻。
「そんなに信用ないですかね……」
不安そうに妻を見つめると、
「ま、いいわ。好きにしてみたら? いまさらだものね」
諦めたように溜息をつく。
「ありがとう!」




