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時間だ、と私はテレビを点けた

「始まる始まる……」


 カップに注いだコーヒーを持ってリビングへと急ぐ。こぼさないよう慎重にテーブルの上に置いてから、ソファにゆったりと腰掛けつつ、リモコンの電源ボタンをオンにする。


 画面に映し出されたのは、部屋を模したセット。


 カメラが室内の不自然な位置にあるらせん階段と豪奢な革張りのソファーセットを舐めてから、ひとりの人物にフォーカスが当たる。


 華やかな格好をした美しい女性が、階段をゆっくりと降りてくる。


  らららー昼のひととき~


 耳に馴染んだオープニング曲が流れた。

 お昼の人気番組『知子の友』のテーマソングである。

 女優のかじ知子ともこが、自分の友人という設定で毎回ゲストを招き、色々な話をするというトーク番組だ。


 チャイムの音が鳴り響き、ドアへと向かう梶知子。

 にこやかに出迎える彼女がアップで映る。

 さすが有名女優、肌つやが若々しい。六十インチ4K画質のアップにも耐えうるとは。

 私の記憶では、たしかもう五十は過ぎているはずである。

 女優は来客を迎え、カメラに向き直ると、


「今日お招きするわたしの友人は、人気作家の織原おりはらかよこさんです!」


 ゲストを紹介した。


「こんにちは~ お邪魔しま~す」


 ドアの向こうから、おずおずと織原かよこ(47)が現れる。

 こちらも女優に負けず、とても美しい。



 白いソファに掛けながら、楽しいトーク番組が進んでいく。

 話題はいつしかゲストの家族の話になっている。


「ご家族は?」

「夫と一人息子と三人暮らしです」

「ご主人は一般の社会人でいらっしゃる」

「はい、いろいろ協力してくれます。私がこんな仕事をしているもので」

「まあ、いいご主人ですね」

「はい、とても」

「息子さんは……」


 と話がはずんでいく。


 ちなみに、梶知子は織原かよこと友達でも何でもない。

 その証拠に、友達なら当然知っていそうなことまで驚き顔でいちいち反応している。

 それは番組の演出なのだからまあいい。

 そんなことにいまさら苦言を呈したいわけではない。


 もし本当に友達なら、一度くらいうちに連れてきてくれたっていいじゃあないかね、と私は画面の中の女流作家に呟いた。

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