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まるちりんがる魔法使い ~情報学部の大学生が冒険者ギルドに就職しました~  作者: しゅがーべる


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220/236

220話

「俺がやってみてもいいですか?」


 クールミンさんにやってもらって正解だったな。俺一人だったら付与がどうの以前に、魔法陣がわからなくて終わってたわ。

 注入棒を受け取って『硬化』の付与魔法が書かれている文字列をじっと見つめる。


 うーむ『マナを集める』ってどうやるんだ?

 が、四の五の考えても始まらない。おでこ発動なんだから、おでこ近づけるしかないよね。


 立てた注入棒の先端におでこを近づけて魔法を詠唱する。


《詠唱、入力》


 杞憂だった。注入棒がふわりと発光した。

 おおー! うまくいった!!

 いそいそと藁の束でひもを作り、注入棒の先端をひもに、柄のほうをおでこにくっつけて詠唱する。


《詠唱、強化》


 注入棒の発光が消えた。すかさず藁の束のひもを手に取り、机を叩くと……コンコンと硬い音がした。


「できました、師匠!」

「師匠って……」


 無邪気に喜ぶ俺に、クールミンは照れた笑いを浮かべた。もう師匠でいいよね?



 とりあえず付与のやり方は覚えた。となると他の付与魔法も気になる。

 本をめくってみると、


「……『耐化』って何です?」

「耐久度を上げるんです」


 よくわからない顔をして首を捻る。


「やってみましょう」


 クールミンは緩衝材の藁を取り、それを横に引っ張ってみせた。もちろんブチブチとちぎれる。元の強度を見せたわけだ。


「それじゃあ『耐化』の付与をしてみますね」


 数本の藁に『耐化』の付与を施し、先ほどのように引っ張る。今度はかなり力を込めても簡単にはちぎれない。


 自分も試す。藁は柔らかさを保っているのに、ちぎれにくくなっている。

 ふーむ、これが耐久が上がるという効果か。紙や衣服に使うとよさそうだなと、すぐにアイデアが浮かんだ。


「結構便利ですね。これってみんな使ってるんですか?」

「いえ、全然」


 意外な答え。理由を尋ねると「需要がない」と返ってきた。

 俺が思いつくアイデアをいくつか出してみたが、「そもさん!」「せっぱ!」と禅問答のやり取りのごとく論破された。


「木剣が鉄剣になれば安上がりなのでは?」と問えば、「木は朽ちる。重量で打ち負ける。命を預けられない」と返る。

「建築物が丈夫になるのでは?」と問えば、「石造りで十分。家全体に付加する手間がかかる」と返る。

「衣服が破けにくくなるのでは?」と問えば、「値段が上がって庶民は買えない。金持ちは買い替える」と返された。


 要するに、俺が付加魔法を便利だと思う理由は『自分でタダでできるから』に尽きるのだ。


「魔法学校では使い方の基礎しか学びません。『できたら終わり』で、試験科目にもなってませんから」

「試験……あーなるほど。そりゃ学ばないわな」


 進級試験か卒業試験かは知らないが、単位にならないとなれば深くは学ばないな。俺も心当たりがある……美術とか。


「それにこの注入棒、実習で作る練習用ですからねー。簡単な付与魔法しかできないんですよ」

「えっ? 練習用!?」

「ええ。作成もやるんですよ……ヒイラギの木を削って形にして。なのでたいした付与もできません」

「そんな!? じゃあこの後ろのほうにある付与魔法は――」

「できません」

「なんで?」

「んー、素材的に能力不足……とでも言うんですかねー? この注入棒では入力できないんです」


 目が点になり、自分が言った言葉が頭をよぎった。

 たしかに言った……「勉強したいから何か本を」と。なので侯爵は間違っていないし、フロスト殿の対応も正しい。だけどさ~……。

 全部の付与魔法が試せないことにショックを受ける。


「……注入棒にもランクがあってですね――」


 クールミンは本の始めのほうを開いて説明する。

 注入棒のランクは『練習用』『中級』『上級』『特級』で、違いは『素材のマナ保有量』だ。

 中級は金属、上級は中級に宝石をはめ込んだもの、特級は上質な魔物の素材だ。


「上質な魔物の素材って何?」

「魔法学校で見たのはトレントという木の魔物でしたね」

「へ?」


 間の抜けた返事をしてしまう。


「木の魔物って? 木が動くんですか?」

「木に擬態している魔物ですね。学校で見た死体は普通に枯れ木にしか見えませんでしたが、マナの残留量はすごかったですね」

「…………この辺にいます?」

「さあ。森の奥深くに生息していると教わりましたのでいないでしょう。というか、魔物となればそれこそ冒険者ギルドで扱う案件でしょう?」


 おっしゃる通りだ。

 映画で見たような、木がヒョコヒョコ歩いている奴かな? それとも木がいきなり動き出す奴かな?

 どちらにしろ、ティアラではそんな依頼は聞いたこともない。……まあ置いとくか。


 話を戻すと、一般の魔法士は『中級』を使い、魔道具製造に携わる者は『上級』を使う。『特級』は研究や大規模な魔法陣構築などに用いられるそうで、国の魔法研究部門が使っている。


「この本に載っている付与魔法は、上級であれば付与可能なんですか?」

「そのはずです」


 となると、まずは上級の注入棒を手に入れる算段を考えないといけないな…………あっ!


「ねえクールミンさん、ランクの違いは先ほど『素材のマナ保有量』って言いましたよね?」

「はい」

「だったらドラゴンの牙で注入棒を作ったら、特級になりません?」

「!?」


 クールミンは絶句する。国宝級の素材で注入棒を作ろうという発想は常識外れ、当然わかるわけがなかった。


「んー……ま、置いときましょうか」

「ハハハ」


 彼の乾いた笑いが耳に届く。

 だが俺の中では、ドラゴンの牙の使い道がようやっと見つかった気がしていた。


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― 新着の感想 ―
付与魔法と自身の身体強化魔法の差は、マナを一旦"杖"にアウトプット→別の物にインプットか。 "杖"にアウトプットしたマナを自身の"手"等にインプットする手順を踏めば、手から魔法を放っている風には成りそ…
ウポツでーす。 効果を細かく刻めるのなら棒に性能がアップするような付与は出来ないんやろか。
注入棒どうするのかなと思ったらちょうどいい素材すぎますねえ! 問題は使用に適してるかは試したことある人とかいないでしょうから分からないって点ですが
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