7 愛梨の真実
なっ!!!!!
なんで!何で今更、愛梨が?!
「な、何の用だよ」
「まあまあ、そう身構えないで。ちょっと話を聞いて欲しいんだ」
「こっちには話なんてねえんだよ!!」
「そうなる気持ちはわかるんだけどね?お願いだ!」
「お願い!優弥!」
何だってんだ……?
「……話?だったら、早く話せよ」
「……長くなりそうなんだ。部屋に入れてもらえないか?」
「長くなる?どういう事だよ?」
「頼む。この通りだ!」
深く頭を下げる男と愛梨。
ふと愛梨を見ると、バッグに高校時代付き合っていた時に買った、イルカのキーホルダーが目に入った。
どういう事だ?
この男と付き合ってるんじゃないのか?
なんで、あの時のキーホルダーをいまだに付けてんだ?
このまま帰したとしても、気になってしまいそうだな……。
話だけでも聞いてやるか……。
「入れよ」
二人を部屋に入れた。
「で?話って?」
「……あの時の事だよ。あれは全部演技だったんだ」
「はあ?」
「そうなの。……あの、私ね?……病気だったの」
「病気?」
「そう、命に関わる病気……」
な?!!そ、そんな事……。
「この先どうなるかわからないって感じだった……」
「そんな……」
「で、愛梨ちゃんは君に心配を掛けたくなかったんだよ。それに自分が弱ってるところを見られたくない、とも言っていたね」
「うん、治療中私がどうなるか、とかその時はわからなかったし……」
「……」
「それで、考えたくはなかったんだけど、長くは生きられないって可能性もあったの……」
「……」
「だから……優弥とは別れなきゃって思って……」
「そんな……言ってくれてれば!」
「うん、優弥なら一緒に居てくれたと思う。だけど、もし……もしね?私が死んだら、優弥、立ち直れないんじゃないかって……」
「そ、れは……」
あんな振られ方をしただけで、立ち直れるかどうかわからないほど、ショックだった。
当時、付き合っていた状態でもしも愛梨が死んでしまったら……確かに立ち直れるかどうか、わからない。
「それで、愛梨ちゃんは僕に頼んだんだよ。従兄の僕にね」
「従兄?」
「そうだよ、愛梨ちゃんは君に徹底的に嫌われて、別れたいって」
「そんな……」
「あの時は本当に愛梨ちゃんは、いつまで生きられるかわからなかったんだ」
「だから……優弥と別れなきゃって、それも本当の事を言ったら、優弥は別れてくれなかったでしょ?」
「あ、当たり前だ!」
「だから……優弥を傷つけることになるけど、ああするしかなかったの」
「さて!僕の役目はここまでかな!後は、愛梨ちゃんと話し合って欲しい」
「ありがとね?」
「ああ、僕も片棒を担いだからね、いいんだよ」
そう言って愛梨の従兄は帰って行った。
「それで……今は?」
「うん、あの後ね?しばらく治療してたんだけど、それが上手くいって、今はもう命の危険はないみたいなの」
「そ、そうなのか……」
「うん、今はね?定期的に検査は必要だし、再発の可能性もあるんだけど、治ったって言われたよ」
「そうか……」
「あ、あの!!ごめんなさい!!優弥、私あの時はホントに酷いことしたと思う!!」
「……」
「で、でもね?あの時はああするしかないって……」
「それでも、言って欲しかった……」
「だ、だって……」
「逆の立場だったらどうだ?俺が病気になって、この先どうなるかわからないってなった時、愛梨はどうしたいと思う?」
「あ……そ、それは……」
「傍に居たいだろ?その後どうなったとしても」
「……」
「俺も当時の愛梨と一緒に居たのに、気付けなくてごめん」
「そ、そんな!優弥は悪くないよ!」
「あまりにもあの時、ショックがデカすぎて、何も考えられなかった……よく考えれば気付けたかもしれない……」
「そ、それは……私が……」
ピンポーン!
ガチャ。
あっ!!!
「優弥くーーーん!!あなたの彼女が来ましたー……よ……?」




