1 俺と愛梨
あなたならどうしますか?
「わ、私!ずっと、優弥の事、好きだったの!私と付き合ってください!!」
いつも元気で明るいはずの水口愛梨が、俯きながら真っ赤な顔でそう告げた。
目の前の女の子、愛梨は俺の小学校からの幼馴染で、俺と同じ現在高校一年生。
ショートカットの黒髪、活発な性格で、男子女子問わず人気がある。
勉強もスポーツも得意で、クラスの中心にいるような人気者。
「え?マジで?お、俺でいいのか?」
戸惑いながらそう答えたのは、俺、佐伯優弥。
俺は平凡な男子学生だ。
特に目立つところのない、中肉中背、顔はどうだろう、平均以上だと思いたい。
「優弥でいいっていうか、優弥じゃなきゃダメなの!!」
「お、おう。そ、そうか」
「な、なによ!!なんかどうでもいいみたいな反応しちゃって!!」
「い、いや!どうでもいいわけじゃなくて、信じられねえんだよ……」
「え、ど、どういうこと……?」
「ほ、ホントはな?俺だって愛梨の事、好きだったんだよ。けど、愛梨は男からも人気あるだろ?俺じゃ無理かなって……」
「そんな事思ってたの?!ずっと一緒に居たのに!!」
「ずっと一緒だったからだよ!俺じゃ愛梨に相応しくないんじゃないかって……」
「バカ!!そんなワケないでしょ!!好きじゃなきゃこの年までこんな仲良くしてないよ!!」
「わ、わかんねえだろ?!ただの友達としてとか……」
「もう!わかってよ!!結構アピールしてたつもりだったのに!」
「え?アピール?」
「やっぱり気付いてなかった!あ!!そ、そんな事は良いの!!あ、あの、返事は……?」
「あ、そ、そっか。えーと、俺も愛梨の事ずっと好きだった。付き合って欲しい」
「や、やった!!こ、これで、彼氏と彼女?」
「あ、そ、そうだな。彼氏と彼女……」
「へ、へへ……。良かったぁ……」
いつもはちょっと気の強そうな目つきの愛梨が、ふにゃっと表情を崩し、笑顔を見せた。
そんな笑顔を、いつもとは違う感情だからなのか、見とれてしまった。
「ど、どうしたの?私の顔、なんか変?」
「あ、ち、違うんだ。なんか、見とれちまって……」
「や、ヤダっ!そんな見ないでよ!恥ずかしいよ……」
「わ、悪い!そうだよな、ずっと見つめてたら、キモイよな」
「そ、そうじゃなくて!イヤじゃないけど、恥ずかしいよ……」
「な、なんか、恥ずいな……」
「だ、だね!なんか、照れ臭いっていうか、なんていうか……」
いつもの気軽なやり取りが出来ない。
付き合いは長いけど、彼氏彼女となると……。
「と、とにかく、これから恋人同士ってことで、よろしくね!!」
「お、おう!よろしくな!」
こんな感じで、俺と愛梨は付き合い始めた。