番外編短編・環奈と理世
ある日の土曜、環奈は家のPCのデータ整理をしていた。春も終わり、最近は梅雨の雨で鬱陶しい。必然的に家に篭りがちになるが、こうして雑用をこなし、時間を潰していた。
このPCは、父親の部屋に置いてあるものだが、旧型で家族の共用PCになっていた。ノートパソコンなので、リビングに持ってきて、勉強の事を調べたり、動画サイトを見たりしていた。
しとしととした雨音を聞きながら、昔撮ったデジカメのデータを整理していた。このデータが、環奈達一家のアルバムみたいなものだった。
「あれ? これ、理世ちゃんじゃん」
10年ぐらい前の写真データを見ていると、友達の理世が写っている写真があった。教会の前で黒い子供服着た理世と、普段着の環奈の写真だった。二人ともまだ幼く、小学一年生ぐらいだった。理世の雰囲気は驚くほど変わらず、臆病な小動物のような可愛らしさが写真でも伝わってきた。一方環奈は田舎娘らしい大らかさな雰囲気だ。今よりもっとガサツっぽい。
「お父さん、この写真なに? 理世ちゃんって前にこの村に来た事あったっけ?」
リビングにたってきた父に画像を見せながら訪ねてみた。さっきまで昼寝をしていたのか、自慢のグレイヘアはグシャグシャだった。
「うーん? ああ、これは石子さんの旦那さん、泰三さんが亡くなった時のだよ。葬式の時、理世ちゃんも来てたよ」
「へー。全然覚えてないよ」
「そういえば二人ともすぐ仲良くなってたね。ウマが合うんだよ」
そう言われると、環奈もちょっと嬉しくなってきた。環奈はヲタクなので、アニメや漫画関係以外の友達は一人もいなかったし、子供の時から仲良しなんて運命的ではないか。
「お父さん、この画像印刷して理世ちゃんに送っていい?」
「いいね。データで送ってもいいけど、紙で見ておくのもいいね」
あれ以来、環奈は漫画の絵や手紙などを理世と送りあっていた。確かに文字だけで済むメールやトークアプリも便利だが。
環奈は理世の喜ぶ顔を想像しながら、父の部屋にあるプリンタでこの画像を印刷してみた。
「また、理世ちゃんと会えるといいな」
「そうだね。夏休みに会えないかなー」
今年の夏休みは、いつもと違って楽しい予感がしていた。
窓の外からは、雨音が止まっていた。いつの間にか雨がやみ、澄んだ青空が見えていた。




