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おばあちゃんは名探偵!〜お隣さんは謎だらけ〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・理世は赤ずきん

 事件が解決し、学校復帰まで準備中の頃だった。理世は石子からジャム作りの方法を教わっていた。


 立花の家でレモンが大量に採れお裾分けを貰った。ジャムはピッタリな保存方法だった。スーパーで売っているレモンと違い、どこか蜜柑っぽいレモンだったが、こうしてジャムにすると、良い匂いがキッチンに漂っていた。出来上がったジャムは、清潔な便につめ、しばらく保存できるという事だった。他にも石子はレモンやイチゴのシロップ漬けも作り、それも冷水や氷で割ると美味しかった。季節の変わり目はよく風邪をひいていた理世だが、シロップ漬けのおかげか、今年は全く風邪をひかなかった。


「理世、このジャム、近所に配ってきてちょうだいよ」

「え!? 一人で!?」

「そうよ。グランマはこれから推理ドラマを観て研究するんだから」


 理世に反対する時間もなく、石子はバスケットに出来上がったジャムをぽいぽいっと入れていく。


「今日の夕飯は、理世の好きなエビグラタンにしてあげる。どう? 行ってきて」


 エビグラタンを餌として出されてしまうと、反論できない。理世は、バスケットを片手に近所に配りに行くことにした。こうしてバスケットを持つ自分は赤ずきんみたいだとも思った。オオカミに出会わなければ良いのだが。


 まず、レモンをくれた立花にジャムを持っていった。立花は相変わらずで、極秘情報の噂話を話していた。病気だった鬼頭の夫だが、だいぶ良くなり、来週にでも自宅に帰ってこれるという話だった。


「鬼頭さん、良かったですね。ジャム食べますか?」


 次は鬼頭の家に行き、ジャムを差し出した。鬼頭は、夫が帰ってくるのが嬉しいようでご機嫌だった。


「そうだ、理世ちゃん。クラッカー作ったんであげるよ。ジャムと合うよ」


 鬼頭からは、大袋に入った手作りクラッカーを貰ってしまった。


「ありがとう、鬼頭さん」


 都会ではこんな風に食べ物を交換する事は無いだろう。事件が終わった後なので、これは憧れのムーミン谷のようなスローライフなのかも知れない。


 鬼頭の家を出ると、坂下や香村の家も見えた。今は人気がなく、ちょっと怖い。特に香村の家はオシャレなデザイナーハウスっぽいので、余計に荒れ放題の庭が気になってしまった。誰か新しい住み手が決まると良いのだが。


 次は教会に向かった。


 川沿いの道を歩き、十字架が見えてきたところで、礼拝堂の方にすすんだ。牧師が礼拝堂の床の掃除をしていた。


「牧師さーん、ちょっと良いですか? これ、おばあちゃんが作ったジャムです」

「おぉ! これは素晴らしいじゃないか。さっそく朝食のパンにつけて食べよう」


 牧師はジャムの瓶を見つめてご機嫌だった。最近、進学の本の売り上げもよく、懐も潤っているという。


「砂原くんにもジャム持っていったらどうだ? まあ、この教会に住んでいるといっても、あっちのプレハブで独立してるから、二世帯住宅みたいなもんだよ」


 牧師に言われ、砂原にもジャムを持って行く事にした。礼拝堂と牧師館の裏手にありプレハブ小屋が今の砂原の住居だった。物置小屋化していたプレハブだが、掃除して砂原でも住めるようにしたらしい。


 砂原はプレハブ小屋の前で、草むしりをしていた。ホームレスの時とはちがい、髪も切り、綺麗なセーターとジーンズ姿だった。髭も剃っている。こうしてみると普通にイケメンだった。


「砂原さん、ジャム要ります?」


 理世はイケメンバージョンの砂原にドキドキしながら、ジャムを手渡した。


「おぉ、ありがとうよ。こうしてみると、理世ちゃん、赤ずきんみたいだな」

「え!?」


 イケメンバージョンの砂原だが、まだクマっぽさが残っている気がした。いや、クマというよりオオカミ? もしかして砂原オオカミに食べられちゃう!? そんな妄想も頭によぎる。


 久々に理世もリスバージョンになり、カタカタと緊張していた。


「いやいや、赤ずきんはもっと可愛いよな、うん」

「えー? 砂原さん、今なんて言いました?」

「冗談だよ!」


 砂原が笑いながら謝っていた。そういえばこんな風に誰かと冗談を言い合うのは、初めてだった気がする。


「じゃあな。学校戻っても頑張れよ。どうせ3年ぐらいしか一緒に過ごさない連中だ。仲良くする必要はねーよ」

「そう?」

「うん。何か言わたらメンチ切ればいいさ」


 砂原に睨みつけ方を教えて貰った。すっかりリスだった時を忘れ、柄の悪いヤンキー風女子高生になっている事は、理世本人は全く気づいていなかった。

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