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おばあちゃんは名探偵!〜お隣さんは謎だらけ〜  作者: 地野千塩


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犯人逮捕大作戦編(5)

 香村刑事と華名を逮捕するというミッションの元、一同は話しあっていた。かれこれ1時間以上たつ。


 途中で仕事を終えた牧師もこの場所に混じったが、悩むばかりで答えは出なかった。何しろ相手は権力を握っているカルトだ。一般庶民が頑張っても負け戦である事は予想がついてしまった。


「ネットで公表するのはどうですか? 司法に問えなくても、世間的には抹消する事は可能じゃないですか。あとは、森口さんが目覚めてきちんと証言するのを待つとか」


 この中で一番常識がありそうな牧師が提案していた。理世はみんなの意見をホワイトボードに書いていた。理世はやっぱ意見を言うよりは聞き手なので、書記の役割を自然とやってしまっていた。


「森口さんがちゃんと証言するなんて無理よ。子供の圭吾くんを銃価の教祖に捧げていたとしたら、絶対口を割らないわ。多分、動機はそれだし、香村刑事が脅している可能性がある」


 普段、口うるさく喧しい石子だが、推理している時は、やたらと冷静だった。


「証拠があればいいんじゃない? いくら銃価でも、確固とした証拠があれば、動かざるおえないでしょ」


 理世は環奈の発言もホワイトボードに書く。やはり証拠が何より大事だと一同の共通認識となっていく。


「砂原さん、こう音声や画像みたいな物は残して無いんですじゃ?」

「礼央くん、残念ながら、そんなものはないのだよ」


 陰謀論者である礼央も犯人を目撃した砂原も、確固とした証拠は持っていないようだった。


 こうして話し合うが、時間だけが過ぎていく。


「結局、本人達に自供させるのがいいんじゃないですか。私が神様について説教すれば、改心する可能性は無きにしもあらず」


 結局、牧師のこの提案を採用する事になった。香村刑事と華名を呼び出し、自供するよう説得するしか無いようだった。確かに牧師に直々に説教されれば、改心する余地はありそうだった。牧師は過去には刑務所に訪問し、メンタル面でのサポートをする仕事もしていたらしい。そんな話を聞けば、一同も希望が出てきた。


「でもさ、あの華名と香村上刑事が素直にこっちにやってくるかな?」


 環奈の指摘はもっともだった。牧師は町内会の名簿を引っ張り出し、華名や香村刑事に電話をかけていたが、繋がってもすぐに切られていた。


「だったらさ、相手の弱みをつけこんでおびき出せばいいんじゃない?」


 ずっと黙っていた砂原は、初めて意見を出していた。住む場所が決まり、お腹も膨れて安心したような表情を浮かべていた。


「グッドよ、砂原さん。囮作戦って事ね?」


 石子も砂原の意見に同意していた。


「そうだわ。秀太くんを呼び出せば、華名や香村刑事だってやって来るに違いないわ」

「ちょ、グランマ。それは本当に囮みたいだよ」


 書記に徹していた理世も思わず突っ込んでしまった。


「でも秀太くん、どうやって呼び出すのよ。きっと電話してもこないよ」


 環奈も冷静に突っ込んでいた。この場では女子高生の環奈や理世が一番冷静のようだった。


「そうだ、お前がいけよ」


 なぜか砂原は、理世を呼び出していた。理世は久々にクマに睨まれたリスのような気分になってしまった。


「え? 私?」

「この中では、お前が一番ガキが油断しそうな顔してる。こっちの女子高生は、小賢しそうだから警戒されるかも?」

「ちょっと砂原さーん、どういう事ー? 汚い砂原さんのがヤバいよ」


 環奈と砂原はいつの間にか冗談を言える仲になっていて、理世は驚くばかりだった。


「でも、そのアイデア良くない? 理世ちゃんが秀太くんを呼び出す、それから香村刑事と華名を呼び出し、牧師さんが説教して自首させる。パーフェクト!」


 礼央は、この砂原の案を採用し拍手までしていた。この場のムードがこの案に流れていき、理世は断れない状況になっていた。確かに子供である秀太を呼び出すだけなら簡単だが。


「そう言えば昨日、秀太くん教会に来てたけど、今日は川辺で遊ぶとか言ってたよ。ここで、秀太くんを連れてくれば大丈夫じゃない?」


 環奈にもそう言われてしまい、理世はますます断れなくなってしまい、この役を引き受ける事になってしまった。


 今はまだ15時過ぎだったので、まだ日は暮れていない。それに子供一人を連れてくるだけだ。大した役割でもないだろう。


「わかった。秀太くんを連れて来る。まず、川の方に行ってみる」


 という事で理世は、一人で行く事になり、さっそく玄関に向かった。


「理世! ちょっと待って。この鞄を持って行きなさい」


 石子が追いかけてきて、理世に鞄を渡した。それは石子がいつも持っている花柄の鞄だった。中には、小銭入れやペットボトルだけでなく、メモ帳とペン、オペラグラス、デジカメ、ICレコーダーも入っていた。催涙スプレーや防犯ブザーまで入っている。


「グランマ、何これ?」

「私がいつも持ち歩いている鞄よ。これさえあれば大体大丈夫」

「大袈裟だよ。っていうか、いつもこんなの持ち歩いてたの?」

「そうよ、名探偵の必需品ね」


 自分で名探偵っていう?


 思わずツッコミを入れそうになるが、確かに石子の最初の推理は当たっていた。最初に華名や香村刑事が犯人と言っていたのは、石子だけだった。


「わかった。まあ、すぐ帰ってくるよ」

「気をつけてね」

「うん」


 こうして理世は牧師館を後にし、村の川辺に向かった。石子から借りた鞄は意外と重く、ちょっと手が痺れていた。


 日曜日の午後という中途半端な時間のせいか、今日は川で釣りなどをしている大人もいなかった。まだ夕方では無いのに妙に静かで、理世はちょっと怖くなってきた。一見長閑な田舎の風景なのに、蓋をあければ闇や悪意が満ちていたなんて。


 秀太の姿も見えなかった。


「秀太くーん、いる?」


 一応、呼びかけてみたが返事はなかった。


 それにしても本当に華名と香村刑事が犯人だったなんて。石子の推理が当たった事も驚きだが、銃価の闇に深さにも引いていた。


 都会でにいじめも裏で銃価が関わっていた可能性もあり、理世は何とも言えない気持ちになっていた。牧師はいじめの原因は大人である事が多いとも言っていたが、麹村の事件が都会でのいじめと関係あるかもしれないと思うと、他人事ではない。


「秀太くーん、いる?」


 理世はさらに声を上げるが、返事はない。川辺にはいないようなので、家の方に行ってみようかと考えた瞬間だった。


 口元に何か強烈な匂いを嗅がされていた。何者かに手足を掴まれ、身動きが全く出来なかった。


「だ、誰か!」


 大声で、叫ぶが何者かに口を塞がれた。変な匂いがし、お陰で意識が消えかけていた。


 どうやら自分は、香村刑事に襲われているようだった。それは全く予想通りだったが、香村刑事のそばに華名だけなく、坂下の姿があるのが、意外だった。


 坂下は銃価信者で、騒音問題で悲劇のヒロインをやっていたわけだが、まさか共犯者だったなんて。


 そんな事を考えている冷静さは残っていたが、だんだんと意識が消えかけていた。石子の鞄から防犯ブザーを取り出そうとしたが、華名や坂下にその手を阻まれてしまった。


「悪いな。お前も教祖の生贄になって貰おう」


 香村刑事の声が聞こえたと同時に、理世の意識もすっかり消えてしまった。

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