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おばあちゃんは名探偵!〜お隣さんは謎だらけ〜  作者: 地野千塩


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犯人逮捕大作戦編(4)

 水を得た魚という言葉があるが、砂原は饒舌に自分の身の上を語っていた。この男は、誰かに話すのが好きなようだった。


 砂原は、スナフというペンネームで陰謀論系のライターというか記者をしていた。その界隈では有名人で、著作も多数だった。顔出しはせず、いつもクマのお面をかぶり、講演会や動画サイトにも出演していた。礼央ももちろん砂原を知っていて、むしろファンのような状況だったが、その顔は全く知らなかった。


「しかし、俺はワクチンの闇を暴くため、製薬会社の社員に接触してたんだよ」

「スナフさん、マジですか! その話詳しく!」


 砂原と礼央は、陰謀論、とりわけワクチンの話題で盛り上がっていたが、他の面々の目はだんだんと死んでいく。


 陰謀論者がなぜホームレスなんてやっていたんだろうか。その事が理世は一番気になったが、ワクチンの話からだんだんと今の砂原に繋がる情報が出てきた。


 なんでも製薬会社にとって問題のある情報を掴んでしまい、命も狙われて、家も捨てギリギリの状況で逃げ回っているという。


「こわ! ワクチンってそんな闇があるの?」


 興味なさそうにしていた環奈も、その話には食いついてきた。石子はつまらなそうにインスタントコーヒーをすすっていたが。


「それで、砂原さん。ワクチンの危険な情報は何だったんですか?」


 礼央はキラキラした目で聞いていた。


「うん。途中で向こうの研究員にボコボコにされてさ、データは全部向こうに戻ってしまったよ。あはは」

「それは残念だ! やっぱりワクチンは打たない方がいいんですね」

「そうそう。あれは今後人間拡張のために免疫を落とす為……」


 再び砂原と礼央は盛り上がってしまったので、石子は手をたたいて話題を変えた。


「ワクチンはどうでもいいわよ。なんで、あの銃価の会館近くの森の中にいたの? 事件と関係ある?」


 石子は単刀直入にきいた。相変わらず、遠回しに話すよりは、ハッキリと話す方が石子は好きみたいだ。一見小柄な老人が、こんな風にハッキリと話している姿を見て、砂原は驚いていた。


「あなた、誰です?」

「私は雲井石子。ここの教会の教会員だわ」


 そう言えば砂原には自己紹介をしていない事を思い出した面々は、一応名前を名乗った。理世も一応自己紹介したが、砂原は「知ってるよ」と言っていた。砂原は理世の事は記憶しているようだった。


「砂原さん、ホームレスやってる事情はわかったけど、何であの森にいたの?」


 理世は思い切って聞いてみた。まだクマに睨まれたリスのような気分もあったが、今は他のみんながいるから少しは安心していた。


「それはな……。ワクチンも気になったが、俺はカルト被害者の事も取材していてな。この村では、教祖が夜な夜なあの会館で子供を連れ込んでいるという極秘情報を得て、こっそり調べていたのさ」


 その砂原の告白に、この場は水を打ったように静かになってしまった。


「この教祖が圭吾くんや秀太くんを性的虐待でしている疑惑ってガチだったの?」


 環奈はホワイトボードを指差し、心底ショックを受けているようだった。陰謀論に詳しい礼央でさえ、さすがにショックを受けているようだった。


「それで、砂原さん。その証拠か何かはあったの?」


 この中で一番冷静な表情の石子が聞いた。その声はいつもより低めで、怒り也ショックが全く無いとは言い切れなかった。


「いいや。目立った証拠が結局得られなくてな……。子供も救えなかったかもしれん。すまなかった」


 そう言い、頭を下げる砂原はとても悪人には見えなかった。一同、言葉につまり、他に何も言えなかった。


「まあ、この人は森口さんの事件とは無関係よね? こんな風に頭を下げられる人が、どうやって人を殴れるの?」


 意外と優しい石子物言いに、砂原は再び泣きそうに目を潤ませていた。確かに演技でここまでは出来ると理世も思えなかった。


「俺も砂原さんが犯人だとは思えないよ」

「私も礼央先生に同意」

「わ、私もそう思います!」


 理世も礼央や環奈に続いて、自分の意見を述べた。そう言えばいつのまにか自分の意見を言えるようになっていた。都会にいた頃は、自分の意見を言ったことなど無かった気がする。


「そうか、じゃあこの話も信じてくれるか?」


 一同から、砂原への疑いの視線が消えた。その同情に、砂原は何か重大な事を話したがっていた。見た目はボロボロで薄汚い男だったが、根は悪人ではない。口篭っている砂原だったが、理世は話の内容を聞きたいと思ってしまった。


「何? 口篭ってないでハッキリと言ってくれない?」


 石子はイライラとしながら、砂原の前に身を乗り出して言った。


「こんな事言っても信じてくれないだろうし」


 若干モジモジとしている砂原に、石子はさらにイラっとしているようだった。


「いいから言いなさい!」


 小柄とはいえ、少々キツいルッククスの石子の迫力に負け、とうとう砂原は告白をし始めた。


「実は見たんだよ。あの華名って女が森口って金髪のおばさんと口論して、殴っていた事……」


 さすがの石子も砂原の告白に、言葉を失っていた。


「なんか、子供の事で揉めてた。あの森で。秀太って子がどうとか。よく聞こえなかったけど」

「それでどうしたのよ?」


 呆気にとられて言葉を失っている一同を無視し、石子はぐいぐいと砂原を問い詰めた。


「なんか華名って女が、旦那呼んでた。色々財布抜き取ったり、工作してた」

「マジか……。石子さんの推理が全部当たってるじゃん」


 ここでようやく礼央が声をあげた。その表情は、呆れているというか、少し楽しんでいるようだったが。


「ほら、みなさい。私の推理が当たったでしょ?」


 石子はドヤ顔で胸を張っていた。


「でも、何で救急車呼ばなかったの? 森口さんは結果的には助かったけど」


 理世はふと思った疑問を口にしていた。


「死んだと思ったんだよ。朝方だったし、薄暗かったし」

「それはいいけど、警察には言ったの?」


 環奈も疑問を口にしていたようだ。


「一応、匿名で電話しておいた。でもな、全く変わりなく」


 今まで来てしまったようだ。


「まあ、ホームレスの証言なんて警察は聞かないでしょ。その上、犯人が銃価関係者で隠蔽工作までやってるのよ? あんたが警察に言っても言わなくても変わりないでしょ」


 石子はそう言いながらホワイトボードに近づき、赤ぺンで大きく「犯人は華名! 共犯者は香村刑事!」と大きく書いていた。ホワイトボードは真っ黒になっていたが、この赤い文字が上書きされていた。


「ありがとうね。あなたのおかげで犯人がわかったじゃない」


 不意打ちに石子に褒められた砂原は、今にも泣きそうだった。


「砂原さん、ホームレス生活辛くない? ウチに住む?」


 環奈の提案に、砂原はポロっと涙をこぼしていた。


「といっても物置小屋化しているウチのプレハブだけど、トイレもあるし。どう? 掃除すれば住めない事ないよ」

「あ、ありがとう……」


 こうして砂原の新しい住処も決まった。


「めでたし、めでたしじゃないか。何か困ったら、ウチにも来てくださいよ。嫁は料理下手ですが、それ以外だったら協力できますよ」


 礼央にも優しくされ、砂原の頬はすっかり涙で濡れていた。この場の雰囲気は、漫画や映画のハッピーエンドシーンのような暖かさに包まれていた。


「ちょっと、待って。犯人がわかった事で満足しないで。どうやって捕まえるの? 圭吾くんや秀太くん被害を受けてしまうかもしれないのよ?」


 理世はこの場でただ一人冷静だった。大事な事を思い起こさせるよう、必死にいう。


「確かにそうね。犯人がわかっただけじゃダメじゃない。捕まえないと」


 石子は再びホワイトボードの前に立ち、書かれたものを全部消した。そして「香村刑事&華名の逮捕大作戦!」と大きく書いた。キュッキュッとホワイトボードのペンを走らす音が響いている。まるで石子の心の中のワクワク感やドキドキ感を表現しているかのような音だった。


「さあ、犯人を捕まえましょう。この村の平和を乱すものは許さないわよ!」


 石子はドヤ顔で決め台詞を吐き、ハッピーエンドのような雰囲気はさっと消えていった。

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