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おばあちゃんは名探偵!〜お隣さんは謎だらけ〜  作者: 地野千塩


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スケープゴート編(1)

  教会から家に帰るとすっかり夜になっていた。石子はリビングのテレビに齧り付き、鬼頭の報道の様子を調べているようだった。


 一方、理世は風呂に入り、以前礼央に出された宿題をした。勉強を教えてくれる約束もしてて、数学や英語の課題を出されていた。明日は土曜日なので、礼央が勉強を教えてくれる約束もしていた。


 理世は勉強は嫌いではなく、成績は良い方だったので、宿題はあっという間終わってしまった。


「鬼頭さん、大丈夫かな?」


 2階の自分の部屋から鬼頭の家の方を見てみたが、特に変わりは無いようだった。マスコミも夜は流石に撤退したようだが、静かすぎるのが逆にちょっと怖くなってきた。


 夜空は相変わらず、チラチラと星が出ていて、綺麗だった。都会では見られない空だが、やっぱり田舎暮らしは一筋縄では行かないようだ。


 森口の事件調査は順調のようだが、ここに来て予想外の事が起こったいた。


 ネットで検索してみたが、鬼頭の事はさっそく話題になっているようだ。若者のテレビ離れと言われているが、やっぱりテレビの影響力は大きいようだった。鬼頭のルックスもネット民達にインパクトがあったようで、茶化すような画像や動画もいっぱい上がっていて気分が悪くなってくる。


 それにテレビでは鬼頭の発言が、意図的に切り取られて編集されれいるようだった。


 鬼頭は家族が病人である事を叫んでいたが、そこは綺麗にカットされていた。


 まるで、何か違う方向に誘導しているような。例えば鬼頭が森口事件の犯人説に。


 そんな気がするといてもたってもいられなくなり、一階のリビングへ向かった。


 石子はホットミルクを啜りながら、テレビに齧り付き、メモもとっていた。もうメイクを落とし、部屋着姿の石子はさすがに年相応に見えた。


「ちょっと、グランマ。まだ寝ないの?」

「ええ。このテレビの事が気になってね」


 テレビはドラマチックな音楽とともに鬼頭の般若のような顔が写っていた。確かにこの姿は怖いけれど、過剰演出というか、わざと悪役に仕向けている事は否定できない。


 理世は石子のそばに座り、あらためてテレビを見てみた。被害者である坂下は悲劇のヒロインのような扱われ方だった。いかに鬼頭の家からの騒音やクレームがうるさいとか、診療内科に受診していると涙ながらに語っていたが、理世の記憶では坂下も鬼頭に言い返していたはずだが。


 そしてテレビは森口の件も無理矢理結びつけ、鬼頭との関連を匂わせて終わった。


「まった、犯人は香村刑事よ。あるいは華名と共犯。鬼頭さんは悪くない」


 石子はイライラしながらテレビの電源を切った。急にあたりは静かになったようで、遠くで何かの鳥の鳴き声が聞こえるだけだった。


「でも、なんで? なんでこんなテレビで鬼頭さんが悪者になってるの? グランマ、どういう事?」


 今の鬼頭の心情を思うと、いたたまれない。確かに鬼頭だって完全に良い人では無いだろう。しれでもテレビやネットで面白おかしく取り上げられるのは違和感がある。それに森口を襲うようには見えない。単なる理世の勘であり、証拠は全くないが。


「テレビでは、銃価のことは1秒も報道していないの。礼央くんの話では、メディアと銃価って関連深いって言ってたでしょ? 私もちょっと調べてみたんだけど、鬼頭さんを取り上げていたテレビ番組のスポンサーは、銃価の大学や新聞社だった」


 石子はイライラとしながらも冷静に述べた。


「という事は、銃価が鬼頭さんを悪く言ってるわけ? でもなんで……」


 何か答えが見つかりそうだったが、余計なパズルのピースが邪魔して、なかなかそこに辿り着けない。もしかしたら、鬼頭と坂下の騒音トラブルは、余計なパズルのピースだろうか。森口の件とは全く関係ないのかもしれない。


「おそらく鬼頭さんは、銃価の勧誘を断ったから嫌がらせを受けているんじゃないの? 礼央くんの調べたら陰謀論でも、そんな事例がいっぱい書いてあったじゃない?」

「そうだけど、グランマ。陰謀論なんて信じていいの?」

「デマも多いでしょうけど、全部が間違っているのは、言い過ぎよ」

「だったら、森口さんの件と何か関係あるの?」


 ここで石子は、一呼吸してスマートフォンに保存している画像を見せた。そこには、香村刑事と記者らしき男は写っている。今日の夕方、偶然見た二人の姿だ。


「これは、香村刑事の撹乱工作としか思えない。おそらくメディアにコネがあって、そう誘導したんじゃない? 香村刑事だって銃価信者よ。何かメディアと繋がりがあってもおかしくない」

「そうだけど、こんなカルトが社会の害悪だったなんて」


 理世は全身の力が抜けそうになる。確かにカルトは悪いという認識はあったが、人に人生を破壊し過ぎていないだろうか。


「私たち、クリスチャンからすると、他の宗教は全部悪魔が裏にいるからね。カルトが悪魔的でも、全く不自然ではないわ。そもそも聖書では、この世の支配者は悪魔って書かれてるしね」

「そんな、どうすればいいの? グランマ」

「大丈夫。私には神様がいるからね」


 石子は理世の頭を撫でた。子供扱いされたわけだが、あまり嫌な気分にはならなかった。石子の妙な気の強さも何となく理解できてきた。石子の心の中には、ぶれずに存在する神様の存在がいるからじゃないかと思い始めた。


「大丈夫、なんとかなるわ。鬼頭さんもきっと悪くない。悪い人は必ず神様に裁かれる」

「う、うん……」


 石子に励まされ、理世もだんだんと不安やイライラとした気持ちがとれてきた。


 同時に理世のスマートフィンに母から電話がかかってきた。この騒ぎで、実家の周辺がテレビに写って興奮しているようだった。


 理世は興奮している母の声を聞きながら、一つ聞きたい事を思い出した。


「ところで、ママ。うちって銃価から勧誘された事ある?」

「あるわよー。去年、理世の学校に保護者会に出たら、学校の先生も他の親御さんも銃価信者多いみたい。もちろん断ったけど、嫌ねぇ」


 理世はこの情報を聞きながら、気が抜けていた。もしかしたら、自分のいじめも銃価が原因だったりする?


 電話を終えると、理世はこの事を石子に相談した。


「理世のいじめも、銃価信者の嫌がらせの可能性があるわ。全く許せないわね?」

「そうだね!」

「この事件も絶対、銃価が関わってる。早く調査して犯人見つけましょう!」

「うん!」


 気づくと理世もこの調査のやる気になっていた。いじめも銃価が原因だったら、自分にも関係がある事になる。このまま放っておく事はどうしても出来なかった。

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