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おばあちゃんは名探偵!〜お隣さんは謎だらけ〜  作者: 地野千塩


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おばあちゃんと聞き込み編(1)

 理世と石子は軽くお昼ご飯を済ませた。蒸しパンを二人で食べ過ぎてしまい、お昼をあまり食べられなかったからだ。


 その後、華名にあげる為の蒸しパンを綺麗に袋に包み、紙袋に入れた。こうして綺麗にラッピングすると、店で売っているものと大差ないように見えた。実際、味も市販製品と変わりないというか、それ以上だった。


 身支度も整えて、華名に会う為に家を出る事にした。理世は髪の毛を結び直すぐらいだったが、石子は入念に化粧をしていた。濃すぎず、薄すぎず、上品なメイクに纏めていた。服は黒のワンピースに薄手のカーディガンを着ていた。おばあちゃんらしいファッションで、ちょっとダサいのがかえって親しみやすい雰囲気だった。


「世の中の人は外見で判断するからね。無難なおばあちゃんファッションで纏めてみましたよ」


 玄関にある姿見で最終確認しながら、石子は呟いた。


「そんなもん?」


 理世はスニカーの紐を結び直しながら質問する。


「そうよぉ。外見で警戒されて口が硬くなったら困りますからね!」

「そういうもんなの?」

「ええ。大人って馬鹿なのよ」

「ふーん。ちなみにグランマは、誰が犯人だと思う?」

「どう考えても香村刑事ね」


 石子は胸をはって断言している。


「動機は?」

「おそらくカルト関係の揉め事ね。勧誘されて邪魔になったか、弱みでも握られて脅されてるか……」

「証拠はないよ」


 確かに石子の推理は論理としては筋が通っているが、証拠は何もない。いじめでさえも証拠がなければ信じてくれなかった。森口の事件も証拠がない以上、憶測だけで逮捕はできないだろう。


「だからこれから奥さんの華名にあって証拠を探るんじゃない。ふふ、これはICレコーダーよ」

「え!? グランマ、何でそんなもん持ってるの!?」


 石子の鞄は、花柄で可愛らしいものだったが、そこからICレコーダーが出てくるとギャップで目を見開いてしまう。


「坂下さんや森口さんが勧誘に来た事もあったから。その時の為に一応買っておいたの」

「それはわかったけど、しつこそうなカルト信者をよく追い返せたね」


 これで坂下もガチ信者である事が確定したが、石子はどうやって追い払ったのだろうか。


「私はクリスチャンで、イエス様のためだっら病気になっても殺されても死んでも良いって言ったら、さすがにドン引きして帰っていったわ」

「なんかキリスト教の方がカルトっぽいじゃん……」

「意外とアタオカなのよ。ご利益宗教じゃないしねー」

「へー」


 そんな会話をしていたら、外の方が何やら騒がしかった。


「また何かトラブル?」


 石子は目をキラリとさせながら、外に出た。


「ちょっと待ってよ、グランマ。鍵も閉めて」

「わかった、わかったから」


 外に出ると、鬼頭や坂下の家の周りに人が集まっていた。カメラを持っている人やレポーターらしき人影もある。なぜかマスコミが押し寄せていた。


「何? なんでマスコミが来てるの!?」


 石子はけっこう大声で騒いでいたが、人だかりのせいで、理世もその声が聞こえにくかった。


「石子さん、おはようございます」


 そこに昨日の朝と同じように柴犬を散歩させている百合名に会った。


「おはよう、百合名ちゃん。この騒ぎは何?」

「さあ。よくわからないけど、森口さんの件で取材が来てるっぽい。うちの親にもインタビュー記者が来てた。森口さんの事を聞いてたみたいだけど……」


 百合名は太眉をハの字にしながら、石子と話していた。


「百合名さん、こんな森口さんの事件でマスコミってくるものなの?」


 理世は騒がしいマスコミの様子を見てみた。どうやらローカル局ばかりのようだが、森口の事件程度でマスコミが騒ぐだろうか。他に重大な事件もありそうだと理世は考えた。


「さあ。昔、クマに襲われた人がいた時もテレビ局が来てたけど……」


 それは百合名も疑問だったようだ。


「確かに死人が出たわけでもないのに、マスコミが出てくるのはおかしいわね。しかも坂下さんや鬼頭さんを疑ってるの? 現場ではなく、ここに集まる理由って何?」


 百合名は家の用があると柴犬を連れて帰ってしまったが、石子はマスコミの一人をとっ捕まえていた。


「何を騒いでるの? あなたたち」


 下っ端のスタッフなのだろう。石子に凄まれたこのマスコミの人が慄いていた。スタッフジャンパーを来た若い男性だった。


「いや、僕もわからないんですけど。上司からは面白い騒音問題があるからって聞かされて」

「騒音問題? 森口さんの件じゃないの?」


 石子はさらのマスコミの人に凄んだが、怖がられてしまったようで、逃げられた。今日はタバコ臭は防臭剤で抑えているらしいが、この石子の圧の強さは、やっぱりちょっと怖いだろう。


「グランマ、もうそろそろ時間じゃない? 華名さんのところに行かなくていいの?」


 暴走しそうな石子の肩を掴みながら、理世は冷静に忠告した時だった。


「うるさい! マスコミども、さっさと出てけ! こっちは病人が家にいるんだよ! もし具合が悪くなって死んだら、責任取れるのか!!!」


 鬼頭が家から出てきたと思ったら、まさに鬼の形相で吠えていた。その姿や声だけ聞いたら恐ろしいが、事情は伝わってくる。こんな場面もカメラにおさえ、取材を始めようとするマスコミに石子も理世も辟易としてしまった。品が無い。


 こんな愚かな人間を嘲笑うかのように、頭上で飛ぶカラスが鳴いていた。


「そうね、理世。ここに居ても仕方がないわ。一緒に華名さんの職場に行きましょう」

「そうだね」


 こうして二人で麹衣村の駅まで歩き、隣町へ向かった。


 麹衣村の駅にもザワザワとマスコミがいて、ペットボトルや缶コーヒーのゴミが散らかっていた。駅員は呆れながら、そのゴミを片付けている。


「全くどうしたもんかね。なんでマスコミなんか来てるんだ?」


 駅員はのんびりと呟いていたが、明らかに麹衣村の日常が壊されていると実感していた。

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