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ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回もsideストーリーを、本日3話アップしてます。

〜アンジェリーナside 1〜


こっ、殺されるかと思ったーーーー!!!


ルドルフ殿下に私の出自を嘘偽りなく伝えたところ、当然だが信じてくれなかった。それどころか、殺気をたっぷりと纏い、王族らしい威圧感に押し潰されるかと思った!


お嬢様は、このサイコパスのような男のどこがいんでしょう? 顔か? まぁ、顔はとても良い。いや、顔どころかスタイルも声も良い。私の推しではないだけだ。


私は杏奈。日本に生きて40うん年。人より入院しがちの人生だったんだけど、気付いたら、はまってやりこんだゲームの世界の中だった。それもロゼリア・フリューゲルの侍女になっていた。


え? こういうときって、侍女になるものなの? ラノベだとヒロインか悪役令嬢よね? せめて、目の前にいる美しいロゼリアになるのがテンプレじゃないの? まぁ夢に文句を言ってもしゃーないな、とこの時の私は思ったのよ。


現実の私はまだギリギリ生きていたもんで、眠ったりして意識がない時に侍女として過ごしていたの。最期の時は、異世界にいる時間の方が長く感じたけどね。憑依していることになかなか気づかなかったしね!


しっかし、この美しいお嬢様、本当に、本当に我儘だったー。私ね、いわゆるお節介だったの。この侍女の身体って元気でエネルギーに満ちていてさ、お節介するには申し分なかったわ。


お嬢様と根気よく接していると、わかってきたことがある。我儘なのも寂しかったからなのよね。お嬢様は公爵令嬢に忖度しない私が珍しかったみたいで、有難いことに懐いてくれちゃった。


もうさ、情が湧いちゃって、この美人ちゃんが醜い嫉妬で、罪を犯すなんてナンセンスすぎる!! ゲームの世界観を壊すかもしれないけど、不幸になる人間が減ることは悪いことではない! はず。てなわけで、清く正しく美しく。私の座右の銘を彼女に教え込んだ。押し付けたとも言う。


ていうか、ゲームの強制力って本当にあるもんなのねー。王子様の婚約者にならなきゃいいじゃん! て、お気楽に考えないで、お嬢様の性格改善しておいて良かったわー。じゃなきゃ、後悔したまま死ぬところだったわ。


ついに現実の寿命が尽き、異世界の侍女とも現実の自分とも、おさらばしたんだけど、どうしてもこちらの世界との縁が強かったのか、今度はヒロインに転移しちゃったわけさ。マジかよ……だよ。


侍女の方が気楽だったわー。お嬢様を間近で見ていたから、貴族はないわぁと思っていて、結果的に侍女で良かったーと思っていたのにー。しかも、平民の母を持つ庶子とか、苦労するとしか考えられないんですけど。てか、お嬢様の婚約者を奪うかもしれないの? ないわー。


でも結局、私はお父様に見つかってしまって、あれよあれよという間に子爵家のご令嬢になっていた。なんでも、ハインツ侯爵様が手引きしたみたい。


ハインツ侯爵家といえば、確か、お嬢様とルドルフ殿下の婚約が決定するまで、同じく婚約者候補となっていた家よね。余計なことをしてくれちゃって!


そして大至急、貴族令嬢として、ある程度の形にしなくてはいけなくなり、ハインツ侯爵家のご令嬢である、スカーレット様が積極的に面倒を見てくれたのよ。


スカーレット様は金髪に青い目のお嬢様とはタイプが違う美女で、正統派って感じの子でさ。なんでこの子が婚約者にならなかった? ていうくらい完璧。お嬢様も完璧だけど、元々は我儘だしな。地味に地味ーにサボったりもしていたな。そこが可愛らしかったけど。


スカーレット様が婚約者にならなかったのは、政治的思惑や家の背景があるんだろうなー、と適当に自分を納得させる。そんな正統派美女のスカーレット様だけど、40うん年(辛うじてだけど)生きてきた私としては、目の奥が笑っていないことくらいわかりますよ。


ハンカチや香袋、茶葉や髪飾りまでいただいたり、良くしてはもらっているけど、いまいち信用できないんだよね。うまくやっているけどさ。


入学してからも、お嬢様とは全然接点がない日々だったけど、ゲームの強制力なのか、なんだか私が人気者みたいになってしまってるし、お嬢様が心配だし、気になるのに、当のお嬢様は私のこと避けまくっているし……。きちんと私の教えを守っているのね、なーんて染み染み思っちゃったりして。


そんなとき、ルドルフ殿下は私と距離を置き始めた。


あれ? なんだかゲームの強制力が薄れている? 私のこと見る目が冷たくなってない? これは……ある意味チャンスではないかしら??


私はこのチャンスを逃さない! と言わんばかりに、ルドルフ殿下に違う意味で近づいた。お嬢様の内緒エピソードを餌に、殿下は訝しがりながらも、やっとこ私の話を聞いてくれましたよ。お嬢様……ごめんなさい。


どうやら殿下は自分がおかしかったことに気づき、その原因の一つが私の存在だと思い、内密に調査をしていたんですって。私はゲームの強制力だって言っているのに、そこについては納得してくれない。気持ちはわかるけどさ。確かに、この世界の人はそれぞれの人生がある。


この世界に魔法や魔道具の類はないから、洗脳や催眠の可能性を示唆されたけど、私にそんな能力はないし、ゲーム以外の説明ができないんだよなぁ。


だって、アンジェリーナに転移してさ、平民時代や子爵家に引き取られた後も、こんなにチヤホヤされることはなかったし。どちらかといえば、生死の淵を何度も経験したアラフォーでも心が折れそうなほど、蔑まれていたよね。


それが、入学して少ししたら、周りが私を持ち上げ出したのよ、なぜか。ただねぇ、自分で言うのもなんだけど、このアンジェリーナ、とても可愛いからかなーって思ってた。うん、美少女。さすがヒロイン。身体も元気だし最高! だからチヤホヤされたのも、ゲームのストーリーが始まったんだと、お気楽に考えていたけど、やっぱりおかしいよね。



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