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あの日の親友達の表情を思い出しながらも、キャンキャンとなにやら言ってくる姫咲をまるっと無視して食堂の空いてる席へと向かえば、わざわざ付いてくる姫咲軍団…。

いや、いいからどこか別の場所へ行ってくれ。頼むから貴重な昼休みの時間を邪魔するな。鼻の穴に割り箸ぶち込んでやろうかな?



「──あ、そうだ。『鼻の穴に割り箸ぶち込む』で思い出した!」

「は?え??なんて???」

「あれ…?ボクいま、にほんご、聞きまちがえましたか?」

「今日、授業が終わったらちょっと寄りたいとこがあるのよね。本屋なんだけど」

「わりばしのナゾはのこったままだけど、本やに行くのはイイネ。ちょうどおれも、ほしいのがあったんだ」

「ボクも、新しいpenがほしくてですね…」

「っ、おい!無視してんじゃねーぞ!!」



姫咲軍団の勝手な言い分を無視して、3人での会話を続けていると。見た目通り喧嘩っ早いのか、赤羽が私の方へと詰め寄ってきた

こういう時、ピアスとタトゥーで武装してるフレや、物腰柔らかで女子人気の高い敵に回したら後々面倒そうなシェーン君に行かない辺り、小物感がすごいんだよなぁ



「いや、だって。不毛な言い争いはしたくないし。どうせ君ら、私たちとちゃんとした会話する気もないんでしょ?」

「は?そんなの、決まってるだろ」「君のような子と話するだけ時間の無駄です」「素直じゃない子に何を言ってもねぇ」「頭おかしーんじゃないの?」「…口、聞きたくない」

「うん。君らのその言葉。そっくりそのまま返すね。じゃ、そういうことで。バイバイ」



会話もしたくないのならわざわざ毎回突っかかって来なくてもいいのに…自分で自分を不快にする行動に出るとか。ドMかな?



「っ!お前っ!調子に乗ってんじゃ──」

「おい、何してるんだ!赤羽!!」



さっさと会話を切り上げようとしたのが気に触ったのか、赤羽が私に危害を加えようと手を伸ばした直後。私たちの右方向から一人の男性がやってきた。

姫咲達の担任教師、白川零だ

担当は古文。日本とフランスのクォーターで、白に近い灰色の髪にグレーの瞳の大人な雰囲気が魅力的なイケメン教師である。授業もわかりやすく、話も面白いのもあって学園中で人気のある教師だ。


そして、唯一。ゲームの強制力…つまり、姫咲の魅了に縛られていないゲームの攻略対象者である



「オイ、赤羽!今、どこからどう見ても北村に手をあげようとしてる現場を見たんだが…コレは一体、どーいうことだ?」

「あ、いや…コレには、訳が…」

「訳?なんだよ。聞くだけ聞いてやる。オラ、言ってみろー」

「そ、それは!この女が、姫咲に酷いこと言ったから…」

「北村が?姫咲に?…それで?何でお前たちが出てくるんだ。それが仮にもし本当なら、話し合うべきは当人たちだけで十分だろ。…オイ、もう一度聞くぞ。

赤羽。なんで、第三者であるお前が、北村に、手をあげようとしていたんだ?」

「…っ、い、いえ…その…」

「大体、だ。どんな理由がアレ、女に手を上げるなんざ、男としてやっちゃいけねぇことだろ?お前は、そんな理性さえもないのかぁ?恥を知れ!!恥を!!!」



白川先生の本気の怒りが、赤羽とその背後にいる姫咲軍団をも怯ませる。

が、1番に立ち直ったのは流石と言うべきか。姫咲だった



「せ、先生っ、誤解です!赤羽くんは本当に、私を庇ってくれただけなんです!私…その、北村さんに昔から嫌われてて。さっきも、酷いこと言われたから…。赤羽君が、それを見て怒ってくれてっ!悪いのは酷いことを言う北村さんなんですっ。赤羽君を怒らないでくださいっ!」



姫咲が涙で瞳をうるませながら、白川先生に縋り付くようにして訴えかける。

…いや、縋り付くって言うか、最早腕を先生に絡ませてるんですけど?

え?いつ動いた?いつの間にか捕らえられてる感じだったんだけど。いや…いや、マジでいつ動いた??!



「へー…。北村さんが、姫咲さんに?」

「はい。そ、それで私、怖くなって…。それに気がついた赤羽くんが庇ってくれてっ!」

「へ〜、そうだったのか〜。…いや、でも。それならおかしいなー

…先生が聞いたのは、姫咲さんが、北村さんに向かって怒鳴りあげる、怒声だったぞ?」

「………え?」



姫咲のマヌケな声が、シン…と静まり返った食堂に、いやに響いた。

そんな生徒たちの様子などお構い無しに。白川先生は尚も、口を動かして姫咲を追い詰めていく



「いや、実はな〜。先生、結構前に食堂に来てたんだよねー。ココでご飯食べようと思ってさ。そしたらさぁ、なんか反対側の方で怒鳴る声がするからさ〜。一応?こんなんでも教師だし?『クッソだりぃけど、注意するかー』って来てみたら、あらビックリ!うちのクラスの生徒が、揃いも揃って女の子1人に詰め寄ってるわけよ〜!いやぁ、もうびっくりしたよね!びっくりしすぎて、ちょっと声かけずらかったもん♪」



白川先生がそう言って「てへぺろ(´>ω∂`)♪」と、舌をだす。

いや、いい性格してんな先生。その表情、確実に出てくるタイミング狙ってただろ?アンタ。…いや、まあ。嬉しい事には変わりないんですけどね



「ち、ちがっ、違いますっ!わ、私っ、ほんとに!」

「あー…なんなら、アソコにある監視カメラの映像、ちょっと見てみる?ちょーどいい位置にあるから、バッチリ写ってると思うよ!…それこそ。一部始終、何もかも…な♪」

「っ!?」



白川先生の親指が指す方向を見れば。そこには確かに、よく見たら壁の端っこに、監視カメラが置いてあった。

先生の言う通り、この角度ならいい感じに映ってるだろうなー。姫咲の激ヤバ言動の一部始終が



──と。白川零の言葉に、ギャラリーがざわざわと騒ぎ始めた。

生徒達は次々に、(どういうこと…?)(姫咲さんの方が北村さんにいじわるを?!)(いや、でも。言われてみれば…)(確かに…え?なんで俺たち今まで…)という言葉を発していき。目が覚めた様な顔つきで、私と姫咲の顔を交互に見ている



「っっっ!!?」



そして。どうやら姫咲も、気がついたようである。


…そう。白川零はゲームの強制力…彼女の魅了の範疇外にいる。

元々、彼は攻略対象者。そんな彼が、直々にヒロインの行動を真っ向から否定する。そうするとどうだろう?

面白いほどに、それまで姫咲桃菜を全肯定していた一般生徒(モブ達)が、正常な判断をしだすのだ。



…そして。私がこの光景を見るのは。実は、2度目である



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