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それは入学式が終わって教室に各々、自由に帰っていた時だった



「ちょ…っ!ちょっと!アンタ、誰よ!そのイケメン達!」



簡単な自己紹介があるホームルームも終わって、「さあ帰ろう」と3人で教室を出た時に聞こえてきた、突然の背後からの罵声。

もちろん、姫咲である。

その隣には攻略対象者、赤髪の赤羽雄一がおり。姫咲は彼の腕に自分の腕を絡め、彼女然として2人で歩いていたようだ



「そんな人たち、ゲームにはいなかった!…隠しキャラ?いや、ファンディスクでも出たことないし…っもう、何なのよ!そんな留学生の男子、2人も引き連れて…!私に勝ったつもり!?」

『…なあ、あいか。あの、見るからにやばい女が、さっき言ってた子?』

『アレが、人気者の女の子…ですか?確かにカワイイですけど…日本って何?やっぱりヤクザ国家なのですか?裏で経済を牛耳ってるドンの娘だから、みんな逆らえないとかなのですか?それはそれでちょっとオモシロイですね!』



フレとシェーン君が、出会い頭一発目から姫咲節をかましてきた彼女を見て、各々感想を述べる。それを見るに、彼らに彼女の魅了は効いていない…と、いうことは。彼らはゲームのモブですらない第三者、という立ち位置なのだろう。と、その時私は確信した。

確かに。金髪青眼な外国人のモブとかいたら攻略対象者を喰ってしまうだろうし、いないのも当然だよね…、と



「すみません。あなた、だれですか?いきなりぼくたちのともだちに向かって、イジワル言って、しつれいデスよね」

「あ、はじめまして〜♪私、姫咲桃菜って言います!留学生の人達ですか?これから仲良くして下さいね〜♪」



シェーン君の問いかけをまるっと無視して、姫咲が可愛らしい声色で挨拶をした。


あくまで紳士的に、笑顔で質問をしていたシェーン君の表情が、ピシッと固まる。

その態度を見て、自分の可愛らしい笑顔に臆したと思った姫咲が、畳み掛けるように言葉を繋げた



「えっと…留学生君?あのね、その横にいる北村愛花さんなんだけど…。人の悪口言うのは気が引けるんだけどぉ…その子、あんまりいい子じゃないよ?いつも人の悪口言ってるし、嘘ばっかりつくし…その…。男の子ともたくさん遊んでるって噂聞くしぃ」



うん。見事なばかりに君の自己紹介だねー。

悪口は言わずもがな。現在進行形で嘘つきまくってるし。異性関係に関しても、この前、立て続けに違う男子生徒と草むらでちゅっちゅしてるのを3日連続で見かけたぞ、ワイ。

いやぁ。すっごい、いたたまれなかったね!0コンマ2位の速さで踵を返して、元来た道をUターンしたからね!動揺しすぎて、しばらく「やっべえよ!マジやっべえよ!」て言う感想しか口から出なかったからね!


…と、それはさておき。さて、問題はここからだ。

シェーン君の今の反応が姫咲の予想通り、彼女の可愛らしさに心奪われての反応ならそこでジ・エンド。

けど、もし。私とお姉ちゃんの仮説が当たっており、彼らがモブですらない第三者なのなら…──



「…すみませんが、きみのコトバは信じられません。ぼくが見たのは、きみがあいかちゃんにイジワルな事を言うところです。それに、あいかちゃんはイジワルな事言ってないし、ぼくらにウソもついてないです。

なのでぼくは、ウソもついて、ぼくの友だちをワルく言う、あなたがキライです」



シェーン君がそう言って、整った王子様フェイスに嫌悪感丸出しの表情を浮かべながら寄ってきた姫咲から距離をとるようにして、私の近くへと寄ってくる。


どうやら、彼ら留学生は仮説通り、ゲームの枠外。第三者の立ち位置だったようだ。

もし、彼らがゲームのモブの立ち位置なら姫咲に声をかけられた時点で、彼女の味方に回っている



「!!?…っな、何よ!なんでそんなひどいこと言うの!?」

「ひどい…?それは、オマエがおれらのともだちに言ったことの方がひどいだろ。オラ、はやくあやまれよ。このfuckin'××××」



姫咲の叫びに、今度はフレが応戦する…が、コイツ。なかなかに口が悪い。

サラッと放送禁止用語を姫咲に向かってジェスチャー付きで言い放った。


…まぁ、ぶっちゃけ。胸はスっとしたので、むしろ、もっとやれ!とも思いマース



「…によ…っ!何よ何よ何よ何よ!!タダのモブの分際で!この私にそんなこと言っていいと思ってる訳!?」

「モブ…?」

『ねえ、あいかちゃん。モブって、どういう意味ですか?』

『ああ。脇役って意味だよ。えっと…ちょっと説明するのが面倒だから、コレに関してはまた後で話そう』

『脇役…?は?何言ってんだ、この女』

『うーん…。まあ、端的に言えば。この子は自分の事を物語の主人公と思ってて、周りの人間のことを自分の都合のいいように動く人形だと思ってるのよ』

『…オイオイオイ。この女、その話がホントなら、マジの異常者じゃねーか!』

『え?なんで??なんでそう思い込んでるんですか、この人は。どうしましょう。僕、まだここら辺で腕のいい精神科医が何処に居るかなんて、知りませんよ?』

『速攻で精神病棟送り決めてて草www』

「──っ!!ちょっと!!私が喋ってるのに、勝手に無視してんじゃないわよ!!このクソモブ共ォ!!!」



姫咲の怒号が、まだ人の多い廊下に響き渡る。


長々と絡まれていたので忘れていたが、今はホームルームが終わったばかりの時間帯である。当然、教師もその場にいる訳で…



「おい!なんの騒ぎだ!」



近くにいた教師のひとりが、向こうから叫んでいるのが聞こえた。

流石に分が悪いと感じたのか、姫咲は最後にキツい眼差しで私たちを見据えると。足早にその場から立ち去り、自分の教室へと逃げていった



『…なぁ。日本ってたしか、陰陽師って言うエクソシストがいるんだろ?どこに行けば会える?』

『あ。僕も、同じこと言おうとしてました!行くならみんなで行きましょう。あの子に慿いてる悪魔がこっちまで来たら大変ですしね』

『陰陽師…は、ちょっと分からないね〜…。まぁ、気休め程度に、神社にお祓いでも行っとく?多分、効果ないけど』



そして、この日を境に。

姫咲は、何度か2人を味方につけようと数日間積極的に話かけることになるのだが、結果はさもありなん、と言った感じで。

結局。彼女は二人も含めて私たちを敵とみなし、様々な誹謗中傷をばら撒くことに専念する事にしたのだった。


その間、私は彼女の考えていることを2人にこと細かく説明


説明は「異世界転生もの」…つまり、必然的に私の前世から始まり、なかなかに全容を話すのに時間がかかりはしたが、何とか大体の事を話し終えたあと


2人は脳内容量が少々パンクしたらしく

「と、とりあえず。今日は帰ろう…」と、フラフラしながら自分たちの寮に帰って行ったのが説明初日の事。


しかし。こういった出来事を毎日のように目にし、体感していく中で、「「え?コレマジやん。やっべぇ」」と、なり。現在に至るのであった


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