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「あ。桃ちゃーん!今ヒマ?俺と一緒にお昼ご飯食べよー♪」

「おい!姫咲と先に食べる約束してたのは俺だぞ。割り込んでくんなよ!」

「全く、騒がしい…姫咲さん。この騒がしい馬鹿どもは無視して、私と食事を共にしましょう」

「そうだね。この前、いい感じの芝生を見つけたんだ。今日は天気もいいし、姫ちゃん、一緒にお弁当食べよ」

「ん…桃菜…。僕と一緒に、食べる…」



──高校入学して約1ヶ月。

目の前で繰り広げられているのは、どうやらハーレムルート開放に成功したらしい姫咲を取り囲むようにしているイケメン集団と彼女の攻防戦。

最初に正門で見た、赤髪が赤羽 雄一…攻略対象その1で俺様系脳筋。父は有名なスポーツ選手で本人も見た目通りの運動神経抜群男子。どうやらこいつがメインヒーローのようだ。

青髪の彼は青山 幸次…攻略対象その2。眼鏡をかけてるわかりやすいインテリ系ツンデレ。実家は華道の家元だとか。

緑髪の緑谷 三隅…攻略対象その3。さわやか系腹黒と言った感じの少年。父は大手企業の社長だそうで、笑顔で毒を吐いてくる。個人的に、こいつが1番関わりたくないこっち来んな。

紫髪の紫乃原 四弥…攻略対象その4。サブカル系ヤンデレ。天才ゲーマーで、その界隈ではなかなかの有名人らしい。この前、姫咲のシャーペンをそっと懐にしまっていたのは、見なかったことにしておいた。

黄色髪の黄村 五月…攻略対象その5。わかりやすいチャラ男系の見た目をしたナルシスト。ティーン雑誌の人気モデルをしているとの事だ。


うむ。正しく、古き良き、使い古されてはいるけど、だからこそわかりやすい乙女ゲームの攻略対象者って感じの人達だ。

そんな彼らに姫咲は「も〜。みんな、仲良くしないとダメなんだよ!」と、頬をプクッと膨らませながら可愛らしく怒っている。


…うん。超絶可愛い顔面の奴じゃないと、大事故になるアレだ。性格は一難どころか50億難位ある奴だが。そこはさすが、乙女ゲーのヒロイン()。様になっている



「う〜ん…どうしましょう?ボクは何を食べるべきだと思います?」

「ラーメン頼んだら私の弁当と半分交換するよ。今日は唐揚げ」

「からあげ!ソレ、オレも一個たべたい!ラーメンにするから、おねがい!」

「そう言うと思って、君らの分は別に持ってきた有能なわたし。崇め奉るが良い」

「「ははーっ!」」



そして。そんな乙女ゲー出演者の彼らの視界にも入らぬ場所で。私は私の親友達と、いつもの様にランチ前のなんでもない会話を繰り広げていた。おちゃらけた会話をしながらも、私は(ああ…楽っしい!私、今、ちゃんと学生生活できとるやんけぇ!)と、感動している最中だった。

高校生活も始まって、そろそろ経つ今日この頃。2人は姫咲の魅了に侵されることなく、私と友達を続けてくれている。


思うに、2人はゲームのモブですらない第三者に当たるとだろう。確かに、乙女ゲームのモブで金髪の人物って見ないもんな…大体が黒髪or茶髪だし。

そんな訳で、2人は毎日普通に私と会話してくれるし、私の話もちゃんと聞いてくれて意思疎通を測ってくれる。

おかげで、日本語も目に見えて上達してきたようで。この前は「実力試し」と称して、日本語縛りで、学園都市内のデパートで遊んだりした。英語使ったら豚の貯金箱に10円をいれるという罰ゲームを課した結果。3670円が貯金箱に収まり、その日のカフェでのティータイムに使用された。



(ふふ…!ふふふふふはははは!!そうそう!コレですよコレ!!私の求めていた普通の学生生活ってやつはァ!)と、先日の3人との買い物を思い返しながら昼ごはんを食べる為に弁当の包みを開けていると。聞きたくもない声が私の名前を呼んできた。


そいつは勿論…



「ちょっと、北村愛花!まだフレ君とシェーン君にわがまま言って困らせてるの!?離れなさいよ!」



…そう。勿論、姫咲その人である。

いや、ホント。姫咲と愉快な仲間たちさえ居なければ、私の高校生活、平和そのものなんだけどなー



「なんでアンタみたいなブサイクモブがイケメン外国人引き連れてんのよ。分不相応って言葉知らないの?!」



姫咲の声が昼間の食堂に響く。

その様子を見て「また北村かよ」「いい加減にしてくんないかな…」等の声がザワザワと聞こえてきた。



「…また君たちですか?いい加減しつこいですよ?」

「lunchのじかんをジャマしないでくれる?オレたちは、たのしく、ゴハンが食べたいんだ」



姫咲の言い分に(おいおい。さっきまでの可愛らしい君はどこに行ったんだよ?と言うか。またってなんだよ。また、って。こっちは何もしてないんですけどねぇ??)等と心の中でツッコミをいれていると。フレとシェーン君が、あからさまに顔を歪めて、姫咲を睨みつけた。


誰が見ても嫌悪感丸出しの彼らだが、姫咲はそれに気づいているのかいないのか。その目に涙を浮かべなら、「うっ…ひどいよ2人とも…桃菜はただ。2人が北村さんから酷いことされてないか心配しただけなのに…」、などと言い始めた。

その様子を見て、ハーレム集団が「優しいな、姫咲は!」「ほら、泣かないで」「ホント、いい子だよね〜」と、賛辞を送り始める。


そして、私には侮蔑の表情と「おい!姫咲に謝れよ!」「君の態度には皆嫌気がさしているんです」「ほんと、可愛げ無いよね」「顔だけじゃなく、性格までブスなのはどうかと思うよ?」「…謝って」と言った、蔑みの言葉を忘れない。


──はい。ここまでがこの頃のワンセットです!通常1日1回。多ければ3回ほど、こんなやり取りがあります。ぶっちゃけ疲れます!!



『…いつ見てもすげぇな、あいつら。あのクレイジーサイコパス女の言動見て、そうはならねーだろ』

『最初はちょっと疑ってましたけど…やはり、こうして毎日の子のやりとりと周りの反応を見ると。あいかちゃんの言ってた話に、真実味が出てきますよね』



2人が周りにその内容が分からないように、と。英語でそう言って、うんざりした顔でため息をつく。


2人には、魅了うんぬんの話を入学式初日にすることになった。

と、言うのも。姫咲が2人の前で私にいつものように話しかけ、彼女の言動と周りの反応を目の当たりにし。彼らがその異常性を入学早々に体験したからだ。


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