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機械殺しのカルナ  作者: キリン
第一章 鉄仮面の『機人』
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蛇の腹の中で

 鉄の蛇は息をしている、ただ物凄く珍しいタイプの呼吸法だ。えらでも肺でもない……頭部と思われる辺りにある帽子のような長い筒の部位、あそこから煙がたくさん出ている。呼吸と共に煙を吹き出す生き物を見た事は無いが、口から炎を吐く「機人」を見た事ならある。――即ち、これは。


「離れろレイン! こいつは、「機人」だ!」

「なわけないだろ馬鹿」


 解きかけた義手の包帯を掴まれ、膝下のすねを蹴られた。痛い……痛がって声を出して、鳩尾の傷に響いてもっと痛い……。こうしている間にもレインは鉄の蛇の穴に入ろうとしている、待て、行くな!


「……いや、大丈夫だって。これが汽車、私たちがこれから利用する乗り物だよ」

「本当か⁉ ……信用するぞ」

「私はお前を信用している、だからお前も信用しろ……とまでは言わない。まぁ、可能な限り信用してくれると助かる。というかもう切符は渡してしまった、いまさら金を返してもらうのも時間がかかるだろう?」


 俺は、溜息をつきながらレインの言う事に従った。鉄の蛇、いいや汽車の中に乗り込む。中身は細長い長方形、窓とたくさんの椅子がある。


「ラッキーだな、空いてる。どこでも好きな席に座りたいだろうが……君は私の隣だ」

「その方が助かる、万が一襲い掛かってきたとき守りやすい」

「……はいはい」


 やけに呆れた様子のレインは窓側に座った。良い判断だ、車内から外に出る際に壁をぶち抜けば、すぐに外に出られる。……それはそうと、「機人」の体の中は皆こうなのか? やけに綺麗で人がちらほら見える、可哀そうに。


「早く座ってくれ、汽車が出発したら倒れるぞ?」


 レインは何やら嬉しそうだった。緊張もしていないため慣れているのだろうか? いろんなことを考えながら俺はレインの隣に座った、するといきなり手を握ってきやがった。


「特に意味は無い」


 そう言い捨てたレインは、次に。


「目的地まで時間が掛かる。暇だろう? 互いの事を知るべく話し合おうじゃないか」

「なんだそれ、そんな事より俺は「機人」の倒し方を知りたい。お前はスペシャリストなんだろう?」

「……? そんなこと言ったか?」


 この野郎、俺は眉を顰めた。やはり口から出まかせ、全ては俺に近づくための罠だったのだ。だとすれば俺は、もうすぐ……。


「だが安心したまえ、君の寿命はきちんと伸ばしておいた。そんな事より話をしよう、まずは初歩的な質問から……好きな食べ物は? 私はソフトクリームさ」

「……俺はカレーだな。ソフトクリームって何だ?」

「聞かれると難しいな……まぁ、冷たい菓子だ」


 甘いものはあまり好きではないが、何故か異常に気になった……ソフトクリーム。良い響きだ、可能なら食べてみよう。


「では次は君から質問だ、何でも聞き給え」

「ええ? ……じゃあ、嫌いな食べ物は?」

「ナットウだね、あれは臭い」

「臭い……? それ腐ってるんじゃないか?」

「実際腐っているのさ、ヨーグルトと同じく発酵しているのさ」


 その後も、俺とレインはお互いに質問をし続けた。くだらない雑談はとても楽しく、どれもこれも聞いたことが無く……現実味を疑う物だったが、この目で確かめてみたいという衝動だけは確かにあった。


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