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機械殺しのカルナ  作者: キリン
第二章 「機械の国」を目指して
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輪郭を帯びる根拠

 地面の硬い感覚、レインの叫びに似た声……しかし俺の頭に響いているのは、俺を吹っ飛ばした目の前の「機人」の物である。低く、冷たく、感情が無いように思われるが……その中にはしっかりと葛藤と憎悪が込められている。俺が嫌いな、大嫌いだった――。


(父さんの、声)

「カルナ! しっかりしろ……来てる!!」


 ハッとして、手に持っている鉄棒を構える。次の瞬間には「機人」の一撃が薙ぎ払われる。鉄棒を伝って体に伝わる衝撃は尚凄まじく、俺はレインを背に、必死に乱撃を受けまくった。――ガキィン! 攻勢に転じる事ができた俺は、ひとまず立ち上がってから距離を取った。


(なんだ、今の声)


 父さんの声そのものだった。あれは、俺の耳が逝かれていたとかそういうレベルの物ではない……機械による電子音だから? 見た目が全然違うフルフェイスの「機人」だから? いいや違う、これは、この重圧と抉り込むような圧迫感は父さんの物だった。何故だか分からないけど、そう……何故か、生物として生きて来た道そのものが違うのではないかと思ってしまうほどの、存在圧。


「逃げよう、レイン」

「馬鹿言え、武装した軍人どもを適当に殺せるスペックだぞ。何故だか分からな

「あれは俺の父さんだ」


 レインの遮った言葉は再び紡がれること無く、一拍置いて新たな言葉として紡がれる。


「……どういうことだ?」


 何言ってんだお前は。そんな顔ではあるが、声のトーンは怯えた様子で、体も震えている。妙に納得できるのだろう、出来れば否定してほしかった。この冷静な女であれば、即答で「そんな訳ないだろう」と言ってくれる自分がいた。――そんな彼女でさえ、俺の最悪の予感は納得に値するものだと判断した。


 彼女はしばらく、目の前の「機人」を睨んでいた。その間の俺といえば、自然の中に放り出された赤子のような気持ちであった。どれだけ鍛えても、広く大きいという自然の前では無駄のように思える……それが人の形をして、憎い「機人」として。そして何より、自分の父親の声を放って。


「……前言撤回だ、カルナ。あれは人が勝てる代物じゃない、『魔法』が消えたこの世界で、それの生き残りたる『無の魔術師』を相手に勝てる訳が無い! ああそうか……分かったぞカルナ、エルメスは、「機人」の神はとっくに死んでいる!」

「なんだって!?」


 敵から目を逸らすという、対峙にあるまじき行為さえ躊躇わない。どういうことだ……『魔法』、そんなものが本当にこの世に存在していたのか? エルメスが死んでいる、そんな事が本当にあり得るのか? あり得るとして、では何故「機人」は活動を続けているんだ? 誰の命令で、どんな目的を以て?


「これはあくまで私の推測だが、お前の父親はエルメスを倒した。これが事実なら、もしかしたらお前の父親は……エルメスを分解したのかもしれない」

「どういう……」

「エルメスの、「機人」達のテクノロジーを理解して、自分に組み込んだんだ! 何でそんな事をするのか、なんでお前の事を狙っているのかまでは分からないが……もしかしてお前の父親は、『魔法』でも『科学』でも成し遂げられなかった何かを、成し遂げられる力を欲しているんじゃないのか⁉」


 そこで、俺は思い出した。父さんは、パラケルススは夜な夜な……何か写真のような物を抱いて泣いていた。毎日だ、毎日。欠かさず、僕と母さんが寝た後にこっそりと静かに……だが深く悲しそうにいつも泣いていた。

 もしも父さんの目的が「それ」で、そのために「機人」を利用している……ああ、仮説が成り立っていく。根拠が形を、説得力を手に入れて襲い掛かってくる! それなら、それならあの「機人」は――。


 〈自己紹介がまだだったね〉


 機械音、しかし重圧が俺たちを圧し潰すように圧し掛かる。まるで後頭部をぶん殴られたかのように膝がぐらつき、その場に倒れ込むように膝を突いた。――前を見ると、そこには「機人」が立っている。


「――とう、さん」

 〈そう、父さんだ。君はあいつと僕……パラケルスス・ホーエンハイムとの子供。カルナ〉


 そいつは、いいや父さんは、何のためらいも無さそうに鉄の棒を天に掲げた。


 〈子供なら、親の言うこと聞けるだろ?〉


 躊躇いもせず、振り下ろしてきた。


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