不甲斐なさ
運ばれてきた食事を見下しながら、分厚い肉にフォークを突き刺した。
持ち上げて、口に入れて、何回か噛んで、飲んで……また持ち上げて。そんなことを繰り返しながらも、俺は横目で彼女を見ていたのだ。
「……」
「……」
カチャカチャと響くナイフとフォークが皿に当たる音。静かな部屋の中に響いているのはその音だけで、レインとの気まずさをさらに加速させ……焦らせた。
(やっぱり不味かったかな。いきなり抱き着くのは……俺の思い違いだったのか? まぁそりゃ、いきなり男に抱き着かれて喜ぶわけないよな……)
「カルナ」
「うぶごぉっづづ」
自分の世界の外からいきなり話しかけられたため、思わず喉がギュッと閉まる。食道にすっぽりとハマった肉が気管を塞ぎ、いきなり呼吸困難へ陥った。……背中を強く叩かれる衝撃がうなじ辺りに直撃し、俺はギリギリ肉を飲み込むことができた。
「――っは! かはっ、がはっ!」
酸っぱくなった口の中がひりひりとした、瞳孔がかっぴらいたレインが水の入ったグラスを差し出し、それを受け取って口に含んだ……いくらか気分と呼吸がマシになり、俺は深呼吸と共にレインを見た。
「ごめん、ありがと。助けられたの……二度目だな」
「しっかりしてくれ、お前が死んでしまえば私の人生が非常につまらなくなるからな」
溜息をついたレインは、再び肉を食い始めた。つかの間の命の危機よりも、俺はこれからの関係性について心配だった……が、この様子だと心配する必要はないように思える。
「この硬い肉を食い終わったらすぐにイギリスに行くぞ。近くの町に国をまたぐ国際列車の駅がある、それに乗れば……一週間ほどでロンドンに着く」
思えば、レインに頼ってばかりだな。俺は何もできないでいる自分に歯がゆさを感じながら、不釣り合いさに不甲斐なさを感じざるを得なかった。
「そしてこれは私の憶測にすぎないが……ロンドンには他の国とはけた違いの数と性能の『機人』がいるに違いない。何たって人類と『機人』の激戦地であり、これ以上広げてはいけない絶対防衛戦線だからな」
「……本当に、このまま俺に着いてくるのか?」
レインの手が止まる。
「カルナ、君は汽車の中で私の強さを見たはずだ。言っただろう? 私は対『機人』のスペシャリストなんだ。おおっとそれ以上口を開くと殴るぞ? 今更契約を打ち切られるのはお断りだ」
そう言って、俺の返事を待たずにさっさと料理を平ら上げた。次に服を適当に脱ぎ始め、とんでもない速度で着替え終えた。へらへらした余裕、どこか遠くを見るようなその目に頼もしさを感じ、同時に……またどうにかしてやりたくなるような。どうとも思えない何かを抱きながら、俺は薄く笑って。
「いつまで食っているんだ。列車が出るまであと三十分も無いぞ?」
皿の上の料理を全て口にブッ込み、レインを担いで部屋を飛び出した。




