任せた相棒
「――なるほどね、だから車掌の協力が必要だったわけか……」
「それをお前が気絶させちまった、これで万策尽きたって訳だが……お前だけでも逃げるか?」
そうだ、何を躊躇っているんだ俺は。初めからこいつは関係ない、ただ勝手について来ただけだ。これでこいつも分かっただろう、俺と来れば命がいくつあっても足りない事に、俺が本当の意味で呪われていて、疫病神だってことに……。
「まさか! ここからが本当に面白いんじゃないか……言っただろう? 私はお前を独り占めしたいんだ」
……は? 口角が上がっていると認識する直前だった。背負っていた荷物を空間の隅に投げ、レインは汽車のレバーやらボタンやら……勝手に、滅茶苦茶に動かし始めたのだ。まさか自爆でもする気か⁉
「私は伊達に世界を旅していないんだよ。馬車、車、船……汽車を運転するのは久しぶりだが、今回で三度目! いずれも快適な旅だったさ」
説得力があるように見える口ぶりに不安を抱いた……が、外の景色を見て俺は気づいた、汽車の速度が上がっている! 窓から顔を出して後方を見ると、並走していた盗賊達が地平線にどんどん追いやられていったではないか! この距離ならば、あのバズーカも届かない……。
「凄いぞレイン! すげぇ……すげぇよ! このまま逃げよう、っていうかこのまま『機械の国』にまで行けるんじゃないか!?」
「――いいや、無理そうだ」
レインの噛みつぶした声に疑問を抱き、次の瞬間答えが衝撃として伝わってきた。轟音が後方から鳴り響き……車体が一瞬線路から浮遊した。そんな、あれだけ距離があったのに!
「相当パワフルなエネルギーを使う車なんだろうねあれ! このままじゃ、あと三十秒ぐらいで完全に追いつかれる! カルナ、私の作戦は失敗した! 情けないが……君のふざけた作戦に賭けるしかない! だが無茶だけはするなよ、私はまだまだお前を楽しみ切れていないからな!」
俺は、レインの覇気に気圧されるように鉄の棒を握りしめ、レインに背を向けた。
「運転は任せた! そのまま全速力で突っ走れ! 相棒!」
「――! っ~~任せろ!」
小生意気で余裕のある声、俺の中のムカつく少女の声をしっかりと握りしめ、俺は後部車両に向かって走り出した。
『――、―――!』
「っ!」
義手で照準を定め、撃つ! 一斉掃射だった……だが、着弾する前に弾いてしまえば何の意味もない! 座席を飛び越え、転がり……汽車から落ちそうになれば窓に捕まって屋根に上がる! ぐらつく足場など気にしている暇ではない、とにかくこの車両間の境目に……!
「……あった!」
そう、俺は辿り着いた。車両と車両を繋ぐ大きな金具……連結器のある場所へと。