カルナの秘策
肩の部分から空気が吸い込まれ、二の腕の部分で空気が圧縮され、掌の部分から空弾が発射されていく。このサイクルは義手一本の中で何百回も繰り返されているのだろう……ほとんど破壊光線のように、盗賊達の乗り物やらご本人共の顔面やらを手当たり次第に殴打していった。
「凄い……お前、やっぱりすごいな! カルナ!」
はじめてちゃんと名前を呼ばれた気がする……なんだろう、非常時だというのに心がざわついて、それでも妙に心地が良くて……。
『こんのぉ!』
「――危ないっ!」
図太い声が響いたかと思ったら、伏せていたレインが俺の胴にタックルをしてきた。俺は後頭部から倒れ、座席に頭を打ち付けた。何事かと尋ねようとした瞬間……目標を見失った銃口から放たれる一撃が、この車両の大部分を吹き飛ばしたのだ。――レインが使った、『対「機人」用バズーカ』だった。
「……すまねぇ助かった!」
「お礼は良いから前の車両に走れ! 次が来るぞ!」
俺はほぼ反射的に、無抵抗のレインを抱えて走り出した。当たらなくても役目は果たせる、当たればラッキー……俺は義手の空弾を外に乱射しまくりながら走った。読みが当たった、あいつらはビビって撃ってこない!
「どうする!? 数だったらあっちの方が上だ、何か策を打たないと!」
「考えがある、だがこれをやるためにはまず『シャショーサン』ってのに許可を取らなきゃいけない!」
「何するつもりだお前!?」
俺は放たれる砲撃を直感で避け、牽制しながら先頭車両に走った。