表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械殺しのカルナ  作者: キリン
第一章 鉄仮面の『機人』
10/25

夢物語

 話している時間が大変短く感じたが、実際に時計を見てみるともう一時間は経過していた。未だに会話の熱は冷めることなくむしろ強まり、レインの口から語られる世界は俺の興味を猛烈に誘った。


「世界って面白いんだな。良いなぁ……俺もいつか白黒の「ぱんだ」とか、首が長い「きりん」とか、見てみたいなぁ」


 気が付けば俺は夢物語を信じ切っていた。今思い返してもバカバカしく現実味はゼロ、でも絵本作家でもないただの少女が語るには、余りにも素晴らしい内容だった。


「なぁレイン、俺……お前と世界を――」


 言い終わる前に、涙が彼女自身の服を濡らした。ボロボロと溢れ出る涙に濡れた顔はくしゃくしゃになっていて、真っすぐだった背筋がどんどん前に倒れていくのを……俺はどうしようもなく見ているしかなかった。


「ごめん」


 何も言えるはずなかった。レインは俺の握っていた腕をさらに強く握りしめ、決して離さなかった。


「私にもっと実力があれば、私がもっと早く君の事を調べていれば。一年二年と言わず君の呪いを無力化できていたかもしれないんだ。君は復讐だけに目を向けていて……でも、私が、私が見てきた世界の事を話したから未練が出来てしまった」


 ――すまない。レインは体を丸めて、呻くように俺に謝ってきた。彼女が言っている事は事実だし、俺は多分、復讐だけに残りの寿命を使って死ぬ。だから彼女が言う世界を見ることは叶わない。


「……お前が気にすることじゃねぇよ。もともとすぐ死ぬ命だと考えれば、お前は俺の恩人だ。それに俺がやろうとしてる復讐は、世界を救うっていう意味も少なからずあると思うし……結果的であっても、俺が何を守る事になるのか知れてよかった。だから」

「ありがとう、なんて言わないでくれよ」


 レインは上半身を起こし、俺の顔を見た。


「私だって、君と旅をしたいさ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] プロローグから10話まで一気に拝読させて頂きました。テンポよく進みますね。 [一言] 完結まで頑張ってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ