秘密の依頼
「どうだ?」
いつも乗りなれた宇宙船とはかなり異なる形状の球体の乗り物は、300年前の地層から発見されたものだった。
わたしたちが住む星では、昔の宇宙船で宇宙旅行を短期間楽しむことがブームとなっている。
正直、宇宙船の訓練には一定の予算と時間が必要になり限られたものにしか与えられないものになっていた。
そこでの昔の宇宙船ブーム。
全く保証がないことを条件に、宇宙船の免許もいらない。そして、宇宙船には識別番号があり、それぞれの国や地域で管理しているが、それも一切関係ない。
簡単に言えば、何の保証もないが、自由に許可なく宇宙へ行ける。
これがかなりのブームとなり、国も動きはじめていた矢先、わたしたちにある任命が下された。
「行ってくれるか?」
それは大学の教授からの言葉だった。
その教授は、ある天体からの定期的な動く物体と遭遇していた。
それは完全に学会から笑われる事になった。
しかし、わたしと彼はその教授の話していた事が事実であることを知っていた。
なぜか。
それはその場に居合わせた事があったからだ。
教授はその事を学会で発表した直後、大学を去った。しかし、その教授の人柄は生徒を惹き寄せる魅力があった。
大学を去った後も、教授の話を聞きたいと、月に2回、教授の用意した地下室に集まった。
人数はアンドロイドを合わせて50名ほど。
そのアンドロイドは教授が作ったもので、生徒のように可愛がっていた。
「彼らはアンドロイドをただの機械としてしか思っていない。しかし、わたしは違う。このアンドロイドは明らかに私たちよりも長く生きる事になる。
私たちという人型宇宙人がいたことを、他の星々のものに伝えてくれるだろう。
そして、彼らの記憶は何万年という時を経て私たちを記憶の中で甦らせてくれるのだ。
私はただ記憶の中に留めておいて欲しい訳ではないのだ。
私たちが人型宇宙人として学んだ歴史を伝えて欲しいのだ」
生徒は真剣に耳を傾けている。
「教授!教授が会ったアンドロイドはどういったものだったのですか?」
ここに集まっている生徒全員が聞きたいことだった。しかし、教授は首を横に振ってこう答えた。
「悪いが、君たちを信頼しているからこそ、本当の気持ちを伝えたい。まだ君たちには話せないのだ。
でも、きっと話せる時がくるはずだ。
私はそれを望んでいる」
「何故ですか?ここには教授を信頼している生徒しかいません。もし、教授がこのアンドロイドについて研究しているのなら、ぜひ手伝わせて欲しいのです」
地下室の少し湿った空間が、熱気で空間が曇るような雰囲気が立ち込めていた。
「ワタシタチ ノ ナカマガ キテイタノナラ アッテミタイ」
アンドロイドが席から立ち上がり、教授の側に駆け寄った。
「アイタイ」
教授は腕を組んで天井を眺めながら、しばらくの間何も答えなかった。
そして、しばらくしてアーティマスという甘い植物を絞ったものを一口飲んで、私たち生徒をひとりひとり見つめた。
「本当に君たちには感謝している。君たちがいてくれることで、私が私でいられる。
でも、物事にはタイミングがある。そのタイミングが合わないと、君たちも大学に行けなくなる可能性もある。
せっかくの君たちの熱い気持ちを無駄にはしたくない。
いつか、その時が来た時に私は君たちに話そうと思っている。
もちろん、アンドロイドの君たちにもね」
教授の側に行ったアンドロイドは先に戻り、隣のアンドロイドと話をしていた。
私と彼は何も言わずにいて欲しいと言われていた。
「乗り心地は悪くはないです。ただ、運転が難しいのが難点で……」
彼は苦笑いをして大きく背伸びをした。
それなりに背丈のある彼が背伸びをしても天井に届かないくらい、この球体には余裕があった。
「アリスくんはどうだい?快適かな?」
「時空間移動が今の宇宙船とまったく異なるので、まだ慣れていません。もう少し慣れるまで、衛星からは離れないようにしたいと思っています」
「相変わらず、君はしっかりものだ。頼もしいよ。よろしくたのむ」