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魔道の剣  ー王宮の鉱(あらがね)にまつわる悲話ー  作者: 広之新
第5章 ニールの港
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第19話 脱出する

(このままでは火に巻かれてしまう・・・せめてエミリーだけでも・・・)リーカーがそう思った時、「バーン!」と床が割れた。リーカーはすぐに後ろに下がって身構えた。するとそこから男が顔を出した。

「俺だよ!」それはハイスだった。抜け道から地下室を抜けて床を割って出て来たのだった。リーカーはハイスの目を見て、彼が正気に戻っているのがわかった。

「ここから逃げるんだ!」ハイスが言った。リーカーはすぐにエミリーをハイスに渡し、その後に続こうとした。

 マークスは逃げるリーカーをじっと見ていた。そして大声を上げて叫んだ。

「リーカー! 必ず、私はお前を追い詰める! 逃がしはせんぞ! いいな!」その声は響き渡った。

 リーカーもマークスをじっと見た。お互いに炎越しににらみ合った。相手の心を探ろうと・・・。彼らはお互いに何も言わなかった。やがてリーカーはその場から姿を消した。


◇◇◇◇


 やがて貯蔵庫は燃え落ちた。マークスはそれをじっと眺めていた。そこにミラウスや魔兵がようやく到着した。

「マークス様!」ミラウスが声をかけた。

「リーカーはいた。」マークスは静かにそう言った。

「えっ! ではすぐに追いましょう!」驚いたミラウスは慌てていた。だがマークスは慌てる様子もなく冷静に、

「地下の抜け道を使って逃げている。どこに通じているかはわからぬ。魔兵たちを方々に放って探らせよ。」と指示した。

「わかりました。さあ、皆、行け!」ミラウスがそう命令すると魔兵たちが散らばっていった。

 マークスはまだくすぶる貯蔵庫を見ながら物思いにふけっていた。燃え盛る火の中とは言え、リーカーを直接目にすることができた。彼は悲痛な声で無実を訴えていた。その声はまだマークスの中に残っていた。

(マークスのあの目。まっすぐな目をしていた。あれは嘘を言う者の目ではない。そしてその叫びも・・・。やはり・・・)マークスは口をぐっと結んだ。


◇◇◇◇


 ウイッテもその現場に再び、姿を現した。そこでリーカーがあの燃え盛る火の中を脱出したことを知った。

「くそ! うまくいっていたのに。何か手違いが生じたか・・・。だが、リーカー。逃げられたと思うなよ! 必ずお前の行き先を突き止めて討ち果たしてやる! そんな手を使ってもな。」そう言ってウイッテは姿を消した。


◇◇◇◇


 地下の抜け道を通って出て来たところは街道の近くだった。ハイスが穴から顔を出し、誰も見ていないのを確認した。

「よし。じゃあ、ここから出よう。」ハイスは穴から這い出すとエミリーを抱いて外に出した。その後にリーカーが出て来た。

「追っ手がまた来るだろう。すぐに逃げた方がいい。この街道をまっすぐ行けば、その先に別れ道がある。ベークの村でもダーゼン寺院でもどこにも抜けられる。」ハイスは言った。

「ありがとう。助かった。」リーカーは言った。彼は結界魔法を使いすぎて左肩が黒く硬くなって鈍い痛みを発しているのを感じていた。

 ハイスはリーカーたちが気がかりだった。自分を操った魔法使いもそうだが、それ以上にリーカーを追い詰めていた剣士には並々ならぬ力を感じていた。あの剣士ならさすがのリーカーも危ういと・・・。ハイスは心配そうに

「お前を追ってきた剣士。あれはかなりの者と見た。十分、気をつけろよ。できれば戦わないほうがいい。」と忠告した。リーカーにはマークスが強敵であることは十分にわかっていた。しかしそれでもいつの日か、戦わねばならないことを感じていた。だがリーカーは

「わかっている。」ただそう答えるしかなかった。

 ハイスと別れて、リーカーとエミリーは街道を歩き始めた。追われる身の2人には安住の地はなかった・・・。

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