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プロローグ
緑豊かなビンデリア国、その森の中に堀に囲まれた王宮があった。その王宮は一見、華麗に見えた。しかし古くなった壁が崩れ、所々に剣が当たってできたと思われる痕が残っており、その年月を感じさせた。玄関に回ると、そこは石の階段と何本も大きな柱が立ち、壮大で厳めしい印象を与えた。そこから伸びる広い廊下は美しく磨かれており、まっすぐ進むと大きな広間に出た。そこには往時のにぎやかさはなく、冷たい空気が流れ、がらんとして静まり返っていた。
ただそこには不思議なものがあった。その広間の中央に大きな黒い鉄の塊が不自然に置かれていた。それは差し込んだ日の光を鈍く反射し、手を触れるとなぜか、ほのかな温かみを感じさせた。しかしその鉄塊はそれを目にする人たちの涙を誘った。それは物悲しい鉱にまつわる話を思い出させるからだった・・・。