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異世界転生してもハーレムは作れません  作者: ミカン
第二章 偽モノ
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75-鍔にプラスを剣先にマイナスを

アイラ視点

「次はアイラの番」

「え?」

「ここで魔法を使ってもらう」


 キリュウが急に私に魔法を使えと言い出した。私の魔法は全くの制御が効かない。このダンジョン内でだって危ない目にあったのだ。一緒にいて怒ってくれたキリュウが忘れているはずがない。


「俺の攻撃は通りにくい。まだ倒す技はあるけどそれをする魔力が残っていない。大丈夫俺は電気を防げるから。万が一失敗しても死ぬのは相手だけだ」


 実際にキリュウは初めて出会ったとき私の不意の攻撃をも防いでいた。魔力がなくても純水な水の壁で防げるのだろう。しかし、電気はこの部屋に帯電しないだろうか。


 ……いいえ、違うわ。


 私はやらないための言い訳を探してきた。失敗してキリュウを殺したくはないもの。だから逃げようと、自分の力から逃げようとしている。

 さっきの言葉がブーメランになる。私も魔法を使うのが怖くて逃げている。


 ……キリュウだって戦う覚悟を決めたんだから、私だって。


「わかったわ」


 剣を構えると、キリュウは後ろから私の体を覆うように腕を掴んできた。


 ……何!? これじゃ集中できないじゃない。


 さっきから抱かれたりしてスキンシップが妙に増えている。


 ……こいつ私のこと好きなの?


 キリュウの腕が妙に温かく感じる。今は温度を感じない魔法にかかっているはずなのに、温度を感じた。


「剣に魔力を集中させて」


 抱かれていることでいっぱいいっぱいだった頭がキリュウの低く真剣な声で戻される。


「鍔にプラスを剣先にマイナスをイメージして。腕から鍔を経由して剣先へ電流を流す感じで」


 言われた通り、剣に魔力を流し込む。


 ……あれ? 溢れない!?


 いつもならこの時点で電気が飛び出るのに今はしっかりと剣だけに電気が流れている。


「できたね。この感覚を意識して」

「ええ」


 キリュウの手が私から離れた。


「じゃあ、あとは敵を倒すだけ。サポートはしっかりやるから頑張って」

「ええ」


 私は飛び出した。


「戦場でイチャイチャしやがってこんな冷気なんてなんともねえ」


 私に向けて≪兄≫が斧を振り下ろす。私はそれを受け止める。と同時に剣から斧へ電気が流れていく。


「あ゛、あ゛あ゛、あああ」


 ≪兄≫に電流が流れだす。≪兄≫はすぐさま斧を投げ捨て後ろへ後退した。


「大丈夫か、兄者」

「わからねえ、俺は何をされた? あいつに触れたとたん斧が牙を向いてきた」


 電流に敵は戸惑っている。やるならここしかない。


「上がれ」

「開け」


 床に穴が開く。しかし、噴水は出てこなかった。


「なぜだ!?」


 キリュウの冷気で凍った氷が水をせき止めてくれている。そのことに≪兄≫が驚いている。穴を飛び越えて敵めがけて全力疾走する。私が飛び越えてから穴から水が噴射された。私の行路に穴がいくつも開くが水が噴射されるのは私が飛び越えてから。まるでアクション映画の爆発から逃げているシーンのようだ。


「うわああ」


 ≪弟≫が恐怖に陥った顔で斧を抜き攻撃してくる。私はそれをかわし、≪弟≫の持つ斧を斬り飛ばす。そして、2振り目で≪弟≫の体めがけ横薙ぎ。剣は鎧にヒビを入れたが、貫通することは無理だった。しかし、これで終わりじゃない。剣から≪弟≫へ電流が流れる。


「ぐがっ、がああああ」


 感電し、≪弟≫は絶命した。残るは武器のない≪兄≫だけ。


「や、やめろ。俺は嫌だ」


 奥になる扉まで走り出ようとする。


「くそ、なんで開かねえ」


 だが、凍っているせいで扉が開かない。私は≪兄≫に近づいていくとほど≪兄≫の顔から生気が抜けていく。


「うぁっ、うぁっ、ううう」


 恐怖に支配されたのか剣を当てる前に≪兄≫は気絶した。


「キリュウ、やったわよ」

「おつかれ」


 後ろを振り返るとキリュウは床に倒れていた。私は急いで駆け寄る。


「ちょっとどうしたの?」

「魔力を使いすぎただけ。大丈夫、大丈夫。寝れば回復するから」


 キリュウは目を閉じ眠りに入った。と同時に私を覆っていた膜が消え一気に冷気が私に当たってくる。キリュウの魔法は消え、冷気はもう発していないが部屋の寒さは冷凍庫の中といっていいほどだ。こんな部屋なんかで眠ってしまったら命を落としかねない。

 出発前のエリザベスとの会合を思い出す。



「この国では夫婦で騎士をしているものが多いわ。あなたが知っている方で言えば、ネイサンとシンシアね」

「え? あの2人夫婦だったんですか」


 私の剣術を見てくれる2人が夫婦だったとは驚きだ。でも2人とも結婚はしていてもおかしくない年齢。


「他にもいるのよ」

「夫婦で騎士。ロマンティックだからでしょうか?」


 2人で主を護りましょうとかロマンチックな気がする。


「緊急事態に対処するためよ。戦場で魔力がなくなった時分け合うためよ。口内から魔力を流すことで相手に自分の魔力を分け与えることができるわ」


 ……つまり、口づけで魔力共有すると。


「これは別に誰でもいいの。でも、さすがに誰でもやるのを忌避する人は多いわ。だから夫婦がいるの」

「その話をどうして今するんでしょう?」

「あなたは魔力が多いわ。なのに魔法を使わないから他の人にやれと言われるかもしれない」

「えっ」


 ……それは私が騎士に口づけをするということ!?


 さすがに忌避感が湧いてくる。いくらなんでも知らない人とやるのは無理だ。


「もし嫌ならしっかり断りなさいよ」



 ……今、それをやるときよ。


 私の唇をキリュウの唇へと押し当てる。


「んっ」


 そのまま魔力を送り出すのをイメージする。


 ……熱い。さっきまでものすごく寒かったはずなのに今は猛暑のような暑さだわ。

アイラ遂に魔法使えるように。これで彼女は最強です


次回 キリュウ視点

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