7-地味だ
酒場を出てからすぐに目的の場所があった。
……てか隣の店じゃん。
傭兵が集まる酒場の向かい側に武具屋があった。
店に入るとそこには傷がついた鎧や人の手あかが付いている剣がおいてある。中古品ばかりだがこの店は大丈夫なのだろうか。
「おやじ、こいつにみあう装備はあるか」
ライアンがそう言い店の店主を呼ぶ。
出てきたのは中年の坊主男だった。
「あん? お~ライアン久しぶりだな。で、そこの赤髪のか?」
「あ、はいっ」
返事をして前に出た。
「お前役職は?」
「魔法使いです」
そこからいろいろな質問に答えた。そして体のいたるところを触られた。
「ライアンはちゃんとやってるか? 他の人に迷惑かけちゃいねえか?」
「え~全然。魔族に囚われていた俺を助けてくれたのはライアンですし」
サイズ測定中はそのようなライアンに関する会話をずっとしていた。どうやらこの店の店主はライアンのお父さんで名前はルイスというようだ。
「よし、お前に会うの装備はこれだ」
そういうと店内を見て回っていた3人もこちらにくる。持ってきたのえんじ色のコートとえんじ色の革靴だった。
……あれ? 装備て鎧とかじゃ?
そう思っているとライアンが話し始めた。
「親父この装備はどんな効果があるんだ?」
「火熊の革で作られたコートと靴だ。炎系の魔法を使っても燃えにくいようになっている。あと暑がりですぐ脱ぐ炎系魔法使いのために暑く感じないように体感温度が一定になるようになっている」
どうやら炎系の魔法使いは露出狂のたまり場だと思われているようだ。
「それ以外の効果はないの?」
「あとは足音がなりにくいくらいだな」
……え? 足音とか関係あるの? fpsじゃないんだから。
「切れにくいとか魔法に耐性があるとかないの?」
「ない」
装備ていうから防御力を上げるようなものだとばかし思っていたのに。なんか違う。これで敵の攻撃をどう防げばいいのか。
「鎧とかじゃだめなの?」
「魔法使いに鎧は必要ないだろ」
……え?
「フィンも前炎の魔法使っていたのに普通の鎧だけど」
「フィン? あいつは魔法使いではないだろ」
「え?」
そのことを聞いてフィンに目を向けた。俺に見られたフィンは恥ずかしそうにしながら答えてくれた。
「お……おれは魔法は……使うけど、基本……は剣で戦うから」
「それに前衛を担当する剣士や槍使いと違って後衛の魔法使いは鎧なんて装備する必要はない」
「後衛だったら狙われないの?」
「いいえ狙われます。後衛役は味方を援護できる距離で隠れ続けるのが役割なのです」
それを聞いて俺の魔法使いへのイメージがだいぶ崩れた。アニメやゲームでみた魔法使いは普通に戦闘を行っているものがごろごろあった。でもこの世界では魔法使いは姿を現さないスナイパーやサポーターのような役割のようだ。
「鎧を着たことで金属音がなり見つかってしまったりしてはだめなので鎧は必要ないのです」
……地味だ。
まさか魔法使いという職がこんなに地味だったとは。あれ? でもこの服の色目立たない?
「この服赤っぽい色だけど目立って居場所ばれないの?」
「はい、なぜか魔族は赤と緑の区別がつかないものが多いみたいで」
……まさかの魔族赤緑色盲!?
「ちょうど髪も赤だし。魔族を殺すために生まれてきたんじゃないのか。わっはっは」
「親父いくらなんでもそりゃねいだろw 赤髪なんて別にいくらでもいるぞ」
「もちろん冗談だ。わっはっは」
……うわぁ~、ありそ~う。異世界きて人間救えとか。誰に転生されたかしらんけど。
ライアンが買ってくれた装備はいがいと着心地がよかった。それにいままではライアンの大きい靴を履いていたので歩きづらかったがそれも自分の足に合うサイズになり、履き心地も改善された。