64-いきなり仲間割れか!?
「集まってくれ」
騎士団長の号令で騎士全員が集まる。俺もネイサンに連れていかれた。
「ダンジョン攻略の日程が決まった。8日後に出発する」
「はい」
それから8日間はとにかく特訓の日々を過ごすことなった。騎士は他にも仕事があるのか騎士がいたり、いなかったりだったが、俺とアイラはずっと訓練していた。基本的に俺はずっと剣を振っていたり、打ち合っただけで一向に魔法を使わされない訓練だったが。
そして迎えた出発当日。俺が乗らされた馬車はアイラと同じ馬車だった。
「なんで一緒なの?」
「ここに案内されたから」
「あなたには自分の馬があるでしょ。出なさいよ」
「魔物連れていると紛らわしいからダメって言われたの。絶対やだよ。歩けっていうの」
「歩きなさい」
「フフッ」
俺とアイラが討論していると隣で侍女さんが笑った。
「失礼しました」
「「……」」
「アナベル、今日は馬車で寝ることになるのよね」
「目的地に到着するのは明日の昼の予定ですのでそうなりますね」
「夜になったら出なさいよ」
「流石にそれは出るから」
……異性と共寝はやばいって。
……暇だ。やることが何もない。
スピカに来るまでは天馬と話したりして時間をつぶしていたがここはすごく暇だ。
……うーん。何かないかな、暇つぶしになること。
移動中にやっていたことといえば、睡眠、音楽くらいだ。馬車の中は揺れる。こんな中では寝れない。音楽を聴くための音楽プレイヤーももちろんない。歌ったら多分アイラに怒られる。というか、人前で歌うなんて恥ずかしい。
「暇じゃない?」
「ん? そうね」
「何かやろうよ」
「こんな何もないところで何をするのよ」
……うーん。あ、せっかくだから魔法で。
氷を生成していく。板状の氷を一つ。氷のコマを32個。
「チェス?」
「正解」
氷でチェスを作成できた。黒と白の色分けはできないためコマの下に向きを示す凹凸を追加する。馬車の中には机がないため馬車内にいたを支える柱を生成。
「じゃ、チェスやろ」
走行中チェスをして過ごした。魔法で溶接を繰り返したため馬車が揺れようとコマが動いたり、落ちたりすることなく問題なく楽しめた。それに、細かい魔法の訓練にもなった。結果は15戦7勝8敗だった。
「ふふん、私の勝ちね」
「明日は勝つから」
翌日もずっとチェスをしていた。というかよくこんだけ飽きずにチェスをやれたものだ。今日の結果は6戦3勝3敗。
「2日間の合計で私の勝ちね」
「んっもう!」
……帰りはオセロにしたろ。いや、将棋もありか。
外に出ると丘の上に天幕が張られていた。
「勇者様はあっちを。キリュウ殿はこっちの天幕を使ってくだされ」
天幕の中には3人の騎士がいた。その中には唯一知っている騎士ネイサンがいる。 どうやら今日はここで寝泊まりするようだ。
「こんにちは、キリュウ」
「どうも」
「君はダンジョン攻略したことがあるかい?」
「いいえ、初めてです」
「まあ、僕も2回目だから先輩風が吹けるわけではないのだけど先輩からのアドバイスだ。ダンジョン内では火の魔法を使わないでもらおう」
「? それはどうしてなんですか?」
「魔族たちの魔法なのかな? ダンジョン内で火魔法を使うとなぜか全員毒に侵されるんだよ」
「毒?」
……めっちゃ限定的な魔法だな。どうせなら全ての魔法使えなくすればいのに。
「なぜ火だけ」
「それは分からない。私たちもそれは知りたいんだが、ダンジョン自体なかなか見つからないから」
「ふーん」
……じゃあ、吸熱でやるしかないか。
「それと罠には気を付けて。ダンジョンは魔族の城だから外敵用のトラップが多い」
「ちなみにどんな罠が」
「私が前に行ったダンジョンは槍の雨とか岩が転がってきたりしたね」
……結構定番な罠だな。
他にも定番といえば何かスイッチを踏んだら矢が飛んできたり、爆発したり、転移したりだろうか。
「明日は私たちと行動だから頑張ろうね」
「はい」
翌朝俺の目の前にはたくさんの人がいた。鎧を着た人たちだ。500人くらいだろうか。本当に多い。
俺は小高い位置に設営された天幕の中でアイラと説明を受けていた。
「あれがダンジョンだ」
丘の下の平野には直径2メートルほどの穴が8個あった。
「アリの巣みたい」
……ダンジョンっていうから洞窟とかを想像していたがそうじゃないようだ。
「あれがダンジョンなのか」
「腕がなりますね」
俺と同じで初めての騎士たちだろうか、騎士の何人かもダンジョンに驚いている。
「見ればわかると思うが今回のダンジョンは入口が穴だ。梯子をかけて降りないといけない。定石通り最初に傭兵を向かわせる。だから私たちが入るころには穴の深さはわかるだろう。入口が8つのため今回は12班に分かれる。1班6人だ。班はもう決めてあるのであとで確認しておくように」
……ほっ。今から班作れーとかじゃなくてよかった。
「では、出陣!」
「ウウォォォォォォ!!」
騎士団長の号令で集まっていた約300人の傭兵がダンジョンに入り込んだ。ただあんな威勢のいい掛け声を出したのにダンジョンの穴には一人づつ、8個なため8人づつしか入れないため傭兵の数は全然減ってない。
……フィンたちもいるのかな。
11日前に分かれた彼らのことが気になる。
「仲間が心配かい?」
傭兵たちも見ながらきょろきょろしているとネイサンが声を掛けてきた。
「まあ、一応」
「彼らもダンジョン攻略の経験はないのかい?」
「さー、わかりません」
「まあ、アルカイドで生き残っていた傭兵なら大丈夫だろう」
「それはどうゆう」
「アルカイドの傭兵ならダンジョン経験はなかろうが魔族との戦闘は私たちより多いだろう。つまり、それだけ魔族との戦い方を知っているということだし、生き残り方を知っているということだ」
……そういえば、フィンも生きることがなんとか言ってたな。
「確かに彼らなら大丈夫ですね」
「さっ、班で集まるよ」
「はい」
俺の班は班長がネイサン、他には昨日天幕でともにした騎士ホレス、バーナード、そして、女性騎士のシンシア、最後にアイラだった。
「はい、それじゃこの班の班長を務めるネイサンだ。この班には勇者様とキリュウがいるから攻撃力は多分一番高いと思うから2人を主体に作戦を考えるけど意義ある人いる?」
バーナードという緑色の髪をした人が手を挙げた。
「バーナード」
「その2人は私たちの班にはいらないと思います」
……おお、いきなり仲間割れか!?
「どうして?」
「班に味方を巻き込むような魔法を使うのがいるのですよ。それに2人は私たちと連携もとれないでしょう」
「だから2人を主体に考えるんだ。勇者様は剣の天才だ。キリュウの魔法も素晴らしい。でも連携がとれない。だから勇者様を前に出して私たち騎士がそれをサポートしていく。逆に戦闘以外ではキリュウを使って道を作ることもできるし、私たち全員を守る防壁も貼れる。もしも、彼らをのけ者にしたら単純に私たちの班が弱くなるだけだ」
「……」
「なっとくしてくれたかい」
「ちぇっ。……わかりました」
「次に入る順番だけど私、シンシア、バーナード、ホレス、勇者様、キリュウの順番で入る」
「はい」
入る順番を決めたら班のミーティングは終了した。
「キリュウさん、よろしくお願いします。私はホレスと申します。自分の魔法も火系統なんです」
「よろしくお願いします」
「ところでどうやって氷の魔法も使えるのですか」
「火って熱いじゃないですか……」
ダンジョン攻略開始までホレスと魔法談義をして過ごした。
……一応戦争前だよね、緩すぎない!?
もっと一致団結とかそうなんをしていると思っていた。班の会議なんて5分もかからず終わっていた。
遂にダンジョン攻略開始! ダンジョンにどんな出会いが間違えた。どんな試練が待ち構えているかな?
次回 突入




