59-私は必ず強くなる!
「アイラ様」
「大丈夫。行くわよ」
扉を前にして少し怖気づいてしまい、アナベルに心配される。しかし、もう騎士団長には行くと伝えてある。了承の返事が来たから相手もいいと思っているのだ。ここで『やっぱ無理です』と引き返すわけにはいかない。
……大丈夫。
自己暗示をして扉を開ける。扉が開くと騎士たち視線が集中してきた。入り口から騎士団長がいるところまで歩いて行く。向かっている最中周りからコソコソとこちらを見て話す声が聞こえるが気にしない。
「騎士団長、今日は時間を取ってくれてありがとうございます」
「いえ、高貴な方のお願いを聞くのは当たり前ですので」
……なんとなくだが、『命令ですから、仕方なくですよ』と言われた気がしたのは私の気のせいだろうか。
「では、早速剣の」
「その前に少しいいですか? 皆さんを集めてほしいのです」
「……集合!」
騎士団長の号令で修練場にいた騎士全員が私たちの前に集まり整列する。
「これでいいですか?」
「ええ、ありがとうございます」
1歩前に出て深呼吸をする。
例え謝ったってみんなの溜飲は下がらないだろう。でも、それでもだ。これから教えを乞う立場なのだから。
……これが私の責任の取り方なんだから。
「今日は剣を習いに来ました。でも、その前に皆さんに謝らないといけないことがあります。1か月前私は騎士を殺めました。たくさんの騎士にけがを負わせ、この国で最も大切なエリザベスにも傷つけるところでした。魔法で被害を出してしまったこと、それについて1か月間何も言わず逃げていたこと、本当に申し訳ございませんでした。でも、私は人の命を奪いました。こんな謝罪だけでそれが償えるとは思っていません。……だから、ここで誓います。私は必ず強くなって、魔王を邪神を魔族たちを倒します!」
目に力を入れて騎士たちを見ながらはっきり言う。
「私は必ず強くなる! 魔族を滅ぼす!」
再度繰り返す。語気を強めるため敬語をなくす。
言い終わると後ろを向いた。
「ありがとうございました」
「いえ。……解散!」
騎士団長の合図で整列していた騎士たちは解散して各自の訓練に入った。
「一つ質問をいいでしょうか」
騎士団長が私にだけ聞こえる小さな声で聞いてきた。
「はい」
「本当にそのようなことが可能だと思いますか」
「可能不可能ではないんです。やるんです! それが私がここに呼ばれた使命でもあるし、責任でもありますから」
「アナベル、いい主従になれよ」
「はい。お父様」
……お父様!?
なぜか急に騎士団長の話し相手がアナベルに変わったと思ったらアナベルの口から衝撃発言が飛び出た。
……あ、でも確かに似てるわ。髪や目の色も一緒ね。
「勇者様、アナベルをよろしくお願いします」
「え? あ、はい」
「では、剣の修行に入りましょう。シンシア後は頼む」
「はい」
騎士団長に呼ばれたのは黄緑色の髪の女性であった。確かこの前森で私を背負って逃げようとしてくれた人だ。
「では、アイラ様剣の修行を始めましょう。どうぞ」
シンシアが渡してきた光を反射した銀色の剣を手に取る。
「離しますよ?」
「はい。……!?」
シンシアが剣を離した瞬間急激に重くなった。重いと思っていたがこれほど重いとは。
「それを振れるようにならなければなりません」
「頑張ります!」
そこからひたすら剣を振る練習が始まった。上から下へ、右から左へ、前へ突き出すなど型を何回も何回も振った。全ての型を終えた時には最初は持ち上げることすら難儀した剣を片手でも持てるくらいになっていた。
やっと謝罪をしたアイラ。これで騎士からの風当たりも和らぐかな?
次回 おつかい受け取り




