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異世界転生してもハーレムは作れません  作者: ミカン
第二章 偽モノ
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58-慣れとは本当に恐ろしい

 ……ご飯を食べた気がしない。


 あれからパンと肉料理が出てきて、その後デザートにフルーツポンチが出てきた。だが、どれも味がわからない。食べた気がしない。お腹が満たされなかった。


 ……人間、緊張すると食べても食べた気がしなくなるのか。


「食後のお茶になります」


 最後に出てきたのは紅茶と砂糖菓子だ。


「きれい」


 アイラは出てきた瞬間そう言った。砂糖菓子は小鳥を精巧に再現されている。砂糖の粉1粒1粒が輝いていて本当にきれいだ。

 だが、アイラは見るだけで一向に手を付けない。きれいすぎて食べられなくなってしまったのだろうか。その隣の侍女さんも食べない。2人とも下の舞台を見たり、砂糖菓子を見ながら紅茶を飲むだけだ。


「砂糖菓子って食べたらダメみたいなルールがあるんですか?」


 不安になって聞いてみる。


「いえ、そういうのはないのですが」

「あんなに甘い食事をした後によくまだ食べれるわね」


 アイラは食事中ずっと甘い甘いと言っていた。肉料理のときは言わなかったがそれでも全体的に甘い料理ばかりだったのだろう。だから、この見ただけでものすごく甘いとわかるものには手が出せないそうだ。


 ……ま、どーせ味感じないから食べよ。


 小鳥の砂糖菓子を口の中に放り込む。かみ砕くと一気に砂糖が口の中に充満する。


「っ!?」


 ……あ、甘い。


 ずっと味を感じなかった舌が急にものすごい甘さを訴えてきた。口の中でじゃりじゃりと音を立てて気持ち悪いほどの甘さが口の中に広がっていく。

 急いでカップを手に取り紅茶を一気飲みして口直しする。口の中に紅茶の苦味が砂糖の甘味を洗い流してくれる。


「はあ」

「フフ」


 俺がすごく慌てて紅茶を流し込んだからだろうか、急にアイラが笑い出した。


「すごいおいしそうに食べてましたね。よかったら私のも食べてもらってもいいですよ」


 アイラがものすっごい笑顔で自分の砂糖菓子を差し出してきた。


「ケッコーデス」


 ……こいつは勇者じゃねえ。悪魔だ。


「宮での料理はたしかに甘かったけどここまでじゃなかったよね。どうしてこんな甘くなったの?」

「宮の料理が改善されたのは最近のことです。ちょうど、アイラ様が召喚される少し前です。それまではこれくらいの甘い料理ばかりでした」

「改善されてよかったわ。来た瞬間食べた料理がこれだったらご飯を食べる気がなくなっていたわね」


 ……砂糖菓子しか味を認識できたんかったからわからないが食事全部が砂糖菓子のような甘さだったら絶望するな。


 人間、3大欲求は大切である。そのなかで最も大事と言っていい食欲が甘さで死んでいたら生きられないだろう。


 ……俺は性欲で恐怖を感じたけど。


「一般市民の食事はさすがに砂糖や香辛料などは使われていないと思いますが富豪や一部の貴族はこういう食事でしょうね」

「本当にそれおいしいと思っているの?」

「おいしいと思っているでしょう。慣れとは恐ろしいものですから。私は子供のころからこの甘さがおいしいと思っていたのですが、最近の宮の料理を食べていたら今回の料理は甘すぎると感じるようになりましたから」


 ……うんうん、慣れとは本当に恐ろしい。男同士はおかしいと思っていたのに最近だいぶ流されるようになったんだから。


「あなたも日本よりこっちの料理がおいしいと思ったの?」


 うなづいていたからアイラに勘違いをされてしまった。日本の料理とこっちの料理比べるでもなく日本が圧勝である。


「いや」

「? なんでうなづいていたわけ」

「……なんでもいいでしょ」


 ……食後に言えるわけねえ。いや、ご飯とか関係なく誰にも言えないよ。



 レストランを出た後馬車に乗り今度は神殿にきていた。神殿は貴族街と平民街を分ける門から入るとすぐに現れる立地に立っている。

 中に入ると人がすごく充満している。貴族街はたとえ馬車の通行量が多かろうと別に人が多いわけではなく、静かそのものであったが、ここは人が多くにぎやかだ。

 人の恰好を見ると俺がいつも来ているような服の人がたくさんいる。貴族街に許可のないものの立ち入りは禁止されているんじゃなかったのだろうか。


「貴族街なのにどうしてこんなに人が?」

「ここは厳密には貴族街ではありませんので。この神殿は出入りの際に危険物は持ち込んできてないかなどの審査はされるだけで基本誰でも入れますよ。この国一の観光名所ですから」

「失礼します。聖女様、神殿長の部屋まで案内、? 聖女様は来てないのでしょうか」


 青い修道服を着た女の人が現れ急にそう聞いてきた。


「すみません。聖女様の馬車を借りただけで今日来たのは勇者様です」

「あ、そうでしたか。すみません、急に聖女様の馬車が見えたので勘違いしてしまいました」

「こちらも紛らわしい真似をしてすみません。今日は勇者様にこの国を案内しようとしただけでして、神殿長の部屋へ赴く気はありませんので」

「そうでしたか、神殿長にはそう伝えておきます」


 そう言って青い修道服を着た女の人は去っていった。


「あの人私が召喚されたときいた人?」

「あのときは中央神殿の神官、巫女は全員参加していたのでいたでしょうね。では行きましょう」


 侍女さんに連れられ神殿に入ろうとするがなぜか入り口と思われる方へは行かず反対側に歩き出した。


「? 入口はあっちじゃ」


 アイラも同じことを思ったのか聞いている。


「あそこは平民用の入り口です。もちろんあちらからも入れますけど並びますよ。あの列なら2時間は待つでしょう」



 ついたのは反対側の入り口だった。入り口の見た目はさっきと全く同じである。あっちの入り口がものすごい量の人がいたが、こっちの入り口は俺ら以外に4人しかいない。侍女さんが紋章を見せることでさらっと神殿内へと入れた。


「この神殿は神が降臨した日に神の住居として建てられたと言われています。1,2階が観光スペースで3階以上が神官、巫女の部屋になっております」


 侍女さんに案内されながら神殿を歩く。


「まずはこちらでしょう」


 最初に案内されたのは長蛇の列が並んでいる場所だ。長蛇の列のところにいる神官に侍女さんが紋章を見せると今部屋に入ろうとしている人を飛ばしてすんなりと部屋の中へと入れた。列を見ても誰も文句を言っていない。


 ……特権階級てすごい。国一番の観光名所も待ち時間ないのかよ。USJのエクスプレスパスじゃん。


「ここは神が降臨したときにお使いになったお部屋になります。ここにどういう生活をしていたかが乗っています」


 部屋の中に入ると入り口でロープを張られそれ以上奥へは入れないようになっている。ロープの前には看板があり、神の暮らしが書いてあった。


 ……二条城だったかな? 修学旅行のときにこういうのあったなあ。高貴な者が住んでいた部屋を見世物にはするが決して中に入らせないのはどこの世界でも同じなのかな。


『神は新暦0年スピカに降臨。1日で神殿を建てここを住みかとした。そこで3日間祈祷を行い人間に魔法を授けた。神はこの地の食事をたいそうお喜びになり食事中だけは笑い声が絶えなかった。神が暮らしたのはたった1週間だがこの神殿は建ち続け次いつでも神が降臨してもいいよう我々神殿の者は準備している』


 ……準備しているといいながら見世物にしてるんだ。


「本当にこんな暮らししていたの?」

「さあ、言い伝えですので」


 部屋の中を見ると普通の大きな部屋だ。リビング、台所、寝室が一緒になってはいる。


 ……これだけ広いなら壁を付けた方がいいだろうに、見せるためにとったのだろうか。


「次行きましょ」

「めっちゃ自由人だな」

「まだ見たいものがあったの?」

「いやないけど」


 そのあとも奉納部屋でお賽銭をするみたいにお金を箱に入れたり、神殿教室で神への歌を習ったりなどした。


「はあ、疲れた」


 馬車へ戻ってくるとアイラがだらーとした恰好になった。神の部屋は入れるスペースが小さいから1組ずつだったが、他はたくさんの人が入っているせいかアイラの口調が丁寧語になり、終始笑顔になっていた。


「別に勇者とバレてないんだから丁寧語なんか使わなくてもいいのに」

「違います―。これが私の素なんですー」

「そっかやっぱり猫かぶっていたのか」

「猫が何? 今の絶対悪口よね」

「さ、さあ」



「今日はここで最後としましょう」


 最後に立ち寄ったのは塔であった。高い。街を囲う外壁よりも高い。


「ここはスパイカ塔といいます。この国でもっとも高く、高さ108メートルです。こちらにお入りください」


ガタッ


 言われた通り入ると床が上がりだした。エレベーターである。


「この世界にエレベーターなんてあったんだ」

「ほんとそうね」


 エレベーターの壁は四方すべて壁でなく4隅が柱になりそこをつないでガラス張りにされている。だから、外のスピカの光景を見ることができた。


「こんなものがあるなら神殿なんかよりこっちのほうが来たくなるはずだけど」

「たしかに」


 アイラの意見に同意して疑問にもつと侍女さんが答えを返してくれた。


「それはほとんどのものがエレベーターを動かせないからでしょう。わたくしも来たのは2回目ですし」

「動かせない? 普通に動いてますけど」

「エレベーターは魔力で動くのです。この塔は乗った者の魔力を吸い取りそれで上げているのです。魔力量が多くないと最上階まではたどりつけません。今回はお2人の魔力がとても高いので来たのです。ここを利用するのは最上階まで行けるとわかっているものか、腕試しにやってくる貴族の成人たちでしょうか」

「うーん。魔力、なくなってるかな?」


 とくに魔力が吸われている感じがしない。ウィンドウでは魔力量の最大値がわかるだけで現在の量はわからないので確認しようがないが減っている感じが一切しない。


「私も何も感じないわ」


 アイラも同じらしい。


「ここは魔力が多いものを優先して吸っていくので吸われているのはアイラ様だけかと」

「あ、多すぎて気づかないんだ」


 例えば1メートル上がるのに魔力が1必要な場合アイラは百万も魔力があるので108ひかれても残りが999,892である。誤差だ。

 というわけで余裕で最上階までたどり着いた。


「うわぁ」

「It's beatiful」


 ちょうど夕日が沈む光景を見られた。アルカイドで見た朝日も素晴らしかったがここの夕日も素晴らしい。スピカの素晴らしいところは街のきれいさだろう。夕日を反射して白の貴族街が少し赤みを帯びている。街と夕日を一望できるここは本当に世界一の光景なのだろう。



 そのあと、宿まで送い別れることになった。


「では、本日はお付き合いありがとうございました」

「いえ、俺も絶対にできないような体験をさせてもらってありがとうございました」


 ……高級レストランに行ったのも、神殿を待ち時間なしで周ったのも俺なんかにできるような体験じゃない。


「では、これを」


 侍女さんに渡されたのは手紙であった。


「3日後、聖壁と聖水を取りに来てください」

「わかりました」

「アイラ様も何かありませんか」

「Good bye Kiryu!」

「ばいばーい。アイラ」


 アイラは馬車から手だけを出してそう言った。

スピカ観光。俺も大英博物館とかビッグ・ベンとかスカイツリーとか行きたい。


次回 謝罪(本当に)

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