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異世界転生してもハーレムは作れません  作者: ミカン
第二章 偽モノ
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51-俺と目が合ったよね

キリュウ視点

「あ、あの、そこの女の子探してたんです。助けてくれたようでありがとうございます」


 天馬から降り、地面へと着地する。そして、さっき返事をくれた全身鎧の前に立った。


「むっ」


 目の前の全身鎧が右を向く。つられて俺も右を向くとさっき倒したカラスが起きていた。ただ、起きてすぐに天馬がカラスのところに降りてきて踏みつける。俺は天馬のところへと行き、カラスの生死を確認する。


 ……ちゃんと死んでるね。


 全身鎧たちの方へ体を向けるとお姫様抱っこされていたアビーが立っていた。


「アビーさん、帰ろ。フィンたち心配しているよ」


 アビーに近づきだすとアビーが頭に『私が勇者』と書いた兜を被った人の後ろに隠れる。


 ……一応2週間旅した仲だよね。こんなときまで嫌わなくても。


 アビーが俺を怖がっていることを悟ったのか全身鎧たちが剣を構えてきた。


「怖がっているようですが。……魔物を連れていますし、もしや魔族ですか」

「天馬待って」


 返事をしてくれた全身鎧が俺に剣を向けてきたとたん天馬が暴れそうになったので静止する。


 ……まずい。


 この人たち鎧が羽とか土とかついてボロボロそうに見えるけど一人一人がめちゃくちゃ強そうだ。


「魔物を連れていますが人間ですよ。怪しいものとかじゃないですので。あ、そうだ、これ」


 俺は急いでポケットからアルカイドの証を見せようと胸の内ポケットに手をいれたら天馬に引っ張られ後ろへと下げられた。俺がいたところには剣を振りぬいた全身鎧がいた。天馬に引っ張られなかったら斬り殺されていたのだろう。


 ……あっぶねー。


 天馬の背中に乗り、高度を上げ、話ができるよう距離をとる。そして、胸ポケットからアルカイドの証を取り出す。


「私アルカイドの使いの者でして」

「アルカイドの使者が魔物を連れているなんて聞いたことないですな」

「偽物だ」

「女を攫う魔族なんだろ」

「エアカッター」


 風の刃がとんでくるが天馬はそれを難なくかわす。

 話ができそうな感じではない。天馬がいるせいかアルカイドの使者の偽物扱いをされる。アルカイドの証も小さくてこの距離では確認もできないかもしれない。


 ……これは無理そうだな。


 俺は諦めて合流するため待っている場所まで飛んで行った。全身鎧の人たち。勇者とか書いてある人もいた。恐らくスピカの騎士だろう。アビーも保護されてスピカまで向かうはず。スピカに行ったらちゃんとアポをとり返してもらおう。今のは俺だったからだめで、フィンやハンナならアビーも普通に帰ってくれるだろうし。


 ……あれ、待てよ。飛び出して行ったよね。


 喧嘩で飛び出して行ったのだからフィンやハンナでももう一緒にいたくないとか言って帰ってこないかもしれない。


 ……俺が考えてもわかるわけない。急いで帰ろう。


 早く、帰って報告した方だいい。それにあの人たち強そうだからアビーに何か起きる心配はないだろう。



 馬車のところまで戻り火柱を撃ちだす。これでアーロやライアンに伝わっただろう。


「アビーは?」

「スピカの騎士団に保護されていた。俺が行ったらアビーは俺を怖がって、天馬がいたせいで魔族扱いされて連れ戻せなかった。ごめん」

「分かった。……スピカの騎士団か。なら、まだいいか」


 馬車をすぐだせる準備をしてアーロとライアンが帰ってきてからすぐ出発する。アーロとライアンにはことの経緯をフィンが説明している。

 道路に戻りスピカを目指す。予定では今日の昼に到着だったが日が沈む直前。門が閉まるギリギリの時間だった。

 アルカイドの証を見せ、待合室で待ち、天馬のことを話して街の中に入る。


「うわぁ」


 アルカイド、アルデミラン。他にもアルナスルやヌンキなどここへ来る道中たくさんの街に入ってきたがここは別世界だった。アルデミランのように道路で、4車線あり、車道と歩道が分かれ、手信号をしている人がいる。それだけでなく、建物に絵や模様があり鮮やかな感じになっている。それに夜なのに明るかった。家のベランダからべランドに糸をかけ、糸にちょうちんみたいなものがかけてある。


「明るいですね。お祭りでもやっているのでしょうか」


 適当な宿をとり宿のカウンターの人に今日何かしているのか聞いてみる。


「あぁ、今日はね勇者様がやっと出てこられたのだよ。それで討伐に行っててね。国が祭りを企画してくれたのだよ」


 ……もしかしてあの兜の人?


 『私が勇者』て書いてあるからイタいなあ~とか思ってたけどあの人が勇者だったのか。引きこもりを脱却できたのか。


「いや~、今までニセモノとバカにしてたけど本当にいたんだねー。ちょうどもうすぐ帰ってくるさ。北門から凱旋するんだ。お客さんたちも見に行ったら」


 荷物を部屋に置き、これからどうするか聞く。今日はお祭りのせいでこの宿でご飯は食べれないそうだからどこかに行くことは確定している。


「とりあえず、各自で自由行動しましょう。フィン、宮に乗り込んだらだめですよ」

「……分かっている」

「フィン。凱旋見に行こ。もしかしたら勇者と一緒にアビーがいるかもしれないから」


 俺はフィンと一緒に凱旋を見ることにした。アーロも誘ったが断わられた。ライアン? いや、誘ってないよ。ライアンは彼女と行くのだろう。

 ライアンは馬車で旅する中一人の一人の女性とめちゃくちゃ仲良くなりだして気づいてたら付き合っていた。


 ……俺が孤独に御者をしているというのに、一人彼女を作りやがって。ぐぬぬぬぬ……。



「すごい人。酔いそう」

「離れるなよ」


 フィンに手をつかまれる。それもなぜか恋人つなぎ。


「なんですか、これは?」

「迷子にならないためだ」

「もっと普通の」

「いいから」


 せめて普通の手のつなぎ方をしようと言おうとしたら言う前に断られた。


 ……付き合ってるわけじゃないんだから。


 そうツッコミたいがアビーがいなくなってしまったからだろう。今日は恥ずかしいが我慢するか。周りの人も興味があるのは勇者でこっちに興味を示す人なんかいないわけだし。多少手のつなぎ方が独特でも気にする人はいない。

 歩道にびっしり人が集まり、兵士が車道に出ないようロープで歩道と車道に境界を作っていた。


 ……あれ懐かしいな。


 祭りなど何かあるとき、歩道と車道の間にロープがしかれて警察官が睨みをきかせている光景を思い出した。警察がいようが、トラック横転させたり、道頓堀川に飛び込んだりといろいろ事件が起きていたが。


「勇者様だ」


 そんなとき馬車に乗って勇者一行が帰ってきた。柵がついた馬車の上に乗り、政治家みたいに街の人々に手を振っている。


 ……女だったんだ。


 昼間は兜で頭を覆っていて、目のところも反射して見えなかったし、顔より兜の文字が気になったので気づかなかった。そもそも、勇者と聞いたときから何となく男だと思っていた。彼女は兜を緩く上げ笑顔で手を振っていた。


「あっ」


 その勇者が乗る馬車の後ろから牢屋があった。牢屋の中には魔物の死体が吊るされている。黒い体でちょうちんの光を受けて僅かに反射している。さらに焦げて灰もついている。


「アーマークロウだ」

「すごい勇者様、アーマークロウを狩るなんて」


 ……俺が倒したやつじゃん。


「あれはキリュウが倒したやつか」


 俺の話を聞いていたフィンも気づいたのか聞いてきた


「うん、そだね」


 ……くー、手柄を横取りされたか。……別にいいけど。


 もともとあれを持って帰るの面倒だし、お金特に気にするほどないわけじゃないので魔物を横取りされようが気にしない。

 笑顔で手を振っていた勇者の手が一瞬止まり、顔も固まった。だが、すぐ顔を反対側に向け手を振り始め、門をくぐり、貴族街のほうへ去っていった。


「今、俺目あったよな」

「馬鹿野郎、俺とあったんだよ」

「いや俺だ」

「おいらだ」


 目の前で自分が勇者と目があったと言い合って喧嘩が始まっている。その喧嘩を兵士が来て止めようとしているが止まらず、その喧嘩に加わる輩もいる。


「ご飯食べに行こ」

「うん」


 フィンは目の前の喧嘩には目もくれず、ご飯を食べにうるさい喧噪の人混みの中を歩き出した。もちろん、手を繋いだ状態で。


 ……完全に、俺と目が合ったよね。


やっと、やっとスピカに着いてくれた。アルデミランとかなんで立ち寄ったんだろ。


次回 キリュウとフィンが付き合います(大嘘)

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