閑話 わたしの実力を見せてやる
アビー視点
「お兄様、許して」
「ダメだ、傭兵はいつ死ぬかもわからないんだぞ」
「わたしだって戦えるもん。アルカイドで」
「たとえ、魔法を使えようがそれが生きられることに直結するわけじゃない」
アルデミランを出発してから毎日この言い合いを続けている。わたしはお兄様と一緒にいたいのに、戦えるのに何度説得しても一向に許可をもらえない。摸擬戦で決めよと誘ってもダメと断られる。
……わたしの実力を知らないくせに。
お兄様はわたしの実力が分からないからダメと言うのだ。わたしの実力が分かれば許可をくれるはずだ。
……こうなったらわたしの実力を見せてやる。
「もういい」
わたしはお兄様の胸を押しどかす。その時お兄様の胸に魔法で糸をつける。壁にもう片方の糸をつなげてお兄様が糸に引っかかってすぐには追いかけてこれないようにする。そして、後ろを向き、馬車を飛び出した。
「アビー」
お兄様はすぐに立ち上がり追いかけようとしたが糸に引っかかる。
わたしは自分の指から目の前の森の木に糸を飛ばす。糸が木に着いた瞬間私は前方へ飛び、糸を短くさせ、森へと飛び込んだ。
追ってきたときように罠として適当に細い糸をあたりの木に引っ掛ける。
木から木へと糸を使って飛んでいく。森の中へ入ってしばらく進んだところで獲物を見つけた。体長30㎝ほどの大きな蟻である。アルカイドにいるとき図書室で読んだ。ジャイアントアントという魔物だ。
魔力で普通の蟻より大きくなった魔物で群れで行動している。どんな相手でも物量で捕らえる。ただ、大きさのせいか普通の蟻より群れの数は少ない。ざっと見えるだけで5匹だろうか。
「こいつを狩って認めさせる」
糸を周りの木にどんどんつけていく。そして、自分のフィールドを作る。相手の方が数が多いのでしっかり準備したうえで奇襲を仕掛けないと殺られるのはわたしになる。この糸はちょっとやそっとじゃ切れない。敵の足を引っかけたりするし、私の足場になる。
……準備完了。今から狩る。
「アイアンスレッド」
わたしの魔法の中で最も硬い糸だ。粘着力をなくし最大限硬くした糸だ。アルカイドの新兵程度なら鉄製の剣を使おうとこの糸を断ち切ることはできなかった。だからこの糸は奇襲なら確実に殺せる自信がある。糸が木に差し込まれる。そして、わたしは木の上から飛び出した。
糸を足場にして、糸から糸へと飛んでいく。アルカイドにいたとき最も練習したことだ。細い糸を足場に相手が捕らえられない速さで動く。そして、私が動くと私と木を繋いだアイアンスレッドが軌道に沿って敵を切り裂く。
ジャイアントアントは想定通りわたしの速さをとらえられないようで1匹、また1匹とどんどん死んでいく。逃げようとしたものは糸に引っかかりその隙にわたしが仕留める。
「お前が最後だ」
最後のジャイアントアントを殺す。
「狩り終了! 楽勝だったね」
ジャイアントアントの頭に糸をつけて馬車へと帰ろうとする。
急に出て行ってきっと怒られるだろう。でもこれでわたしの実力を見せれる。お兄様の仲間に助け舟を出すこともできるかもしれない。
「あれ? 帰り道どっちだっけ?」
帰る方向が分からず森の中をさまよう。追ってこさせないため来る途中にだした糸をすべて消したのが失敗した。それをたどれば帰ることも可能だったのに。
「はぁ、お腹すいた」
みんな心配しているだろう。迷ったと知られれば一緒についていくことを許されないだろう。そう思うとお兄様が言っていた言葉が思い出される。
『たとえ、魔法を使えようがそれが生きられることに直結するわけじゃない』
今がまさにそういう状態だ。森で迷って遭難。魔法が使えてもこの状態では死んでしまう。
「わたし、間違ってた」
魔法で戦えれればついていけると思っていた。でも今この状態だ。本当に大切なことは敵を倒す強さじゃない。もちろんそれも大事だろうが、もっと大事なのがお兄様が言っていた生きることなのだろう。
お兄様に言われていたことについて考えているとき突然殺気を感じた。これは森へ討伐に行くとき何度も経験した。魔物が獲物を狙うときの殺気だ。
わたしはジャイアントアントの頭は邪魔なので捨て、急いで糸を木につけて移動する。木の枝に乗り、葉に隠れて上を見るとジャイアントクロウがいた。これもアルカイドの図書室で読んだ。カラスが魔力で巨大化した魔物だ。
あたりの木に糸をつけていき、逃げていく。
「アイアンスレッド」
糸をジャイアントクロウへ飛ばすが空を飛んでいるせいか思ったように糸が飛ばず、簡単にかわされる。
糸を張り巡らせながら移動していると前からジャイアントクロウが迫ってきた。急いで攻撃を避けるが行く先に糸がない。
……やばい。
受け身をとって地面に着地するが着地地点を予想してたのかすぐにそこへジャイアントクロウが攻撃してくる。
「っん‼」
攻撃を受けて飛ばされるが受け身をとりすぐ起き上がる。
……わたしが何度受け身の練習をしたと思っている。
最初は糸から糸へ着地できずいっぱい落ちた。それに兵士との摸擬戦のときも飛ばされた。そんな中で受け身の技術がどんどん上達したのだ。
そのあとまた同じように2羽ジャイアントクロウが攻撃してくる。
「アイアンスレッド」
アイアンスレッドを周囲の木に張り巡らせる。ジャイアントクロウはそこへ突っ込んできた。2羽は私の目も前にある糸で切り刻まれた。
「はぁ。はぁ」
アイアンスレッドは硬い分魔力消費が激しい。わたしの魔力はもうあとわずかであった。
いままで張っていた糸を足場にジャイアントクロウから逃げていく。何度か攻撃を受けるが致命傷ではない。近づいてきたジャイアントクロウは糸でからめとり投げ捨てる。だが、そんな攻防も長くはもたなかった。私はジャイアントクロウから強力な1発をもらう。
「うっ」
嘴でお腹をつつかれた。そのあと翼ではたかれ吹き飛ばされる。
……あ、わたし死ぬんだ。ごめんなさい、お兄様。
木に激突してわたしは意識を失った。
アビーちゃんかっけえ。糸で攻撃する暗殺者みたいな戦い好き。あとは短剣を持ってほしい。
グラス〇ッパー殺法!!
次回 キリュウとアイラ出会う




