46-指示と魔法
森に到着すると馬車から降りた。地面の雑草が膝くらいまで伸びきっており歩くのにも難儀しそうだ。
「勇者様」
私が馬車を降りると騎士団長のエリオットが話しかけてきた。
「今から2班に分かれて森の探索をします。勇者様は私と共についてきてもらいます。魔物がでても焦らずその場から動かないでください」
「わかりました」
「では行きます」
私と騎士20名で森へ入る1班、私たちとは違う方向で森へ入る騎士15名の2班、アナベルと騎士10名の馬車で待機する3班に分かれることになった。
騎士団長に連れられ森の中を歩くが予想通り歩きにくい。いつも平坦な道と同じ歩き方ができず戸惑っている。しかし、騎士の皆さんが合わせてくれているのか移動に送れることはなかった。しばらく歩いたところで騎士団長から止まれと合図がきた。
「ジャイアントボアです」
「数は」
「3匹です」
「では15人でかかれ、私と共に4人は勇者様の護衛だ」
そんな会話をして15人の騎士たちが走っていった。
「勇者様こちらです」
私が移動すると目の前で大きなイノシシと騎士が戦っていた。騎士5人でイノシシ1匹を相手している。
一人が後ろで魔法を放ち、4人がイノシシに近づき足を中心に攻撃している。
魔法を撃っている人がイノシシの動きを読み指示をだし、近づいている4人は指示通り正確に動いている。
……すごい。
その鮮やかな連携に私は感嘆した。
すべてのイノシシをほぼ同タイミングで倒し終わっていた。騎士には傷一つとない。
一番すごかったのは魔法を後方にいた騎士だろう。イノシシの動きを正確に読んでいるのか騎士にイノシシの攻撃が当たらないようずっと指示をだしていた。その中でイノシシにも正確に魔法を当てていた。私は魔法すらまともにコントロールできないから指示と魔法を同時にできる彼らに驚嘆する。
「すごいですね。特に魔法を使っていた方たちは」
私が騎士団長にそう話しかけたが騎士団長は闘っていた騎士の方へと行ってしまった。どうやら私と話すつもりはないようだ。
私のせいで3人も部下が死んだのだ。それに自身も大けがをした。恨んでいて当然だろう。
そのまま魔物を発見しては騎士たちが討伐していった。敵が私たちより大きくとも、多くの数がいようとも、団長や一部の騎士が適格に指示をだし、安全に倒していった。誰もけがをすることはなく順調であった。
私が森に慣れ始めたころ前ポを歩く騎士が声をあげ、転んだ音がした。
「うわっ」
「どうした」
「すみません、何かに引っかかり」
「警戒!」
転んだ騎士の報告とともにすぐに騎士団長の号令で騎士たちが剣を柄をつかみ、全方位を注意深く索敵する。
私も周りに視線を送ると地面の近くに光っているものを発見した。
「あの、あそこに光るものが」
私がそう言うと指さした方に騎士が近づく。
「騎士団長。糸のようなものが」
「騎士団長。こっちにもあります」
その糸は前にいくつも張られていた。
「なんだこれは、罠か」
「警戒! 前方から何か来ます」
一人の騎士が声を上げると前から何かが飛んできて木へと激突する。木の下に落ちた飛んできたものをみるとそれは大きなカラスの死体だった。2メートルはあるくらいの巨体なカラスである。
「ジャイアントクロウ⁉」
ドン! ドン! シュッ‼
前からは木に激突した音だったり、風切り音がしている。その風切り音はドンドン私たちがいる方へと近づいてきている。
「くはっ」
前からまた何か飛んできて今度は私の左前にいた騎士の方へ落ちてくる。
「女?」
騎士は飛んでくるものに気づいた瞬間慌てて剣を捨て、それをキャッチした。
「騎士団長。少女です」
「前から来ます。ジャイアントクロウ、数7羽」
「前衛間合いに入ったら切り刻め。後衛、魔法で撃ち落とすぞ」
私の周囲の騎士たちが一斉に魔法を放つ。
「私が預かっておきます」
私は少女を抱えたままの騎士にそう言う。
「ありがとうございます」
騎士は私に少女を預け、剣を拾いなおした。
……あぁ、よかった。
少女を見ると嘴でつつかれた後や切り傷などがあるが、息はしている。
ここにいる人たちは強い。この少女ももう大丈夫だろう。
私は安心した気持ちで騎士とカラスの戦いを見た。
何分か経ち、戦いは終了した。今までは戦いが終わっても誰も傷一つとなかったのに、今は何人かけがを負い、ほとんどの騎士が息切れしていた。
……こんなにてこずるなんて。
今まで、どんな大きさの敵も複数の敵も難なく倒してきていたのでこの騎士たちの消耗に驚く。
「各自手当を。けがをしてないものは警戒を」
騎士団長が命令をだし、私の方へきた。
「大丈夫ですか」
「私は無傷です。この子もけががひどいですが息はしています」
「貸してください。手当をします」
少女を騎士団長に預ける。
「あ、アーマークロウです」
「なに?」
「くわああーー!!!」
警戒していた騎士が声を上げ、全員が上を見上げる。そこには全身が黒く光ったカラスがいた。そのカラスは1メートルほどでさっきのカラスよりは小さいがさっきのカラスより強いことがなんとなくだがわかる。その赤い眼光に睨まれ私は固まってしまった。
「くそっ。アドルフ、ネイサン、オスニエル、ジャレッドは残れ。あとのものは勇者様とその少女を連れて撤退しろ」
騎士団長はそう命令すると棒を取り出し、それを折って投げた。棒からは赤色の煙が上りだす。
「失礼」
私が茫然と上のアーマークロウをみていると急に後ろから女性の騎士に持ち上げられる。そのままおんぶされカラスのいる反対方向へと走り出したとき後ろから爆音が響いた。
後ろを向くと、わずかに燃え、体から煙がでているカラスが地面へと落下していた。
「え?」
その声が誰の声だったか、私か、私をおんぶしている騎士か、騎士団長か、いやアーマークロウが落ちているのをみた全員だっただろう。
走り出した騎士は全員止まり、後ろを振り返った。さきほどアーマークロウがいたところへ赤い何かが飛んできた。それは羽があるウサギのように耳が長い赤い馬に乗った赤い男であった。髪は赤、顔は白いが服も赤黒い。その赤い男が何かを言う。
「****************」
……え? なんて言ったの?
私にはその男がなんと言っているのか聞き取ることが出来なかった。
最後の人はだーれなのか。なんか見たことあるような。




