45-政治家運動でもするのだろうか
私が召喚されてから1か月たった。あれから一人で魔法の練習をしているのだが一向にうまくいかない。
コントロールできないのは電気が強すぎるからだと思い、今は指と指の間に弱い電流を流す練習をしている。一つの指にプラス、もう片方にマイナスのイメージをイメージして電流を流してみると電流のコントロールができたのだが、光と音の量がすごかった。1本くらいの電流を流したかったのだが、指くらいの太さの光がでて、静電気がなった時の『バチッ』ではなく、雷みたいに『バチバチバチ』と鳴っていた。
これで強さのコントロールはできなくとも狙った方向に飛ばせると思ったのだが、的を狙うとあらぬ方向に行ってしまう。
「討伐に参加してくれない?」
そんな毎日を過ごしている中、聖女ことエリザベスとのお茶会でそんなことを言われた。
「魔族を攻めに行くのですか」
「いえ、近隣の魔物や害獣の駆除に行くの」
討伐とは街や街道に人の生活の害になる生き物が出てこないよう国の騎士団が狩りに行くことだそうだ。
「その~、勇者を召喚したのにその勇者が一切でてこないと貴族からの苦情が多くって、行ってくれるだけでいいの」
「はい、わかりました」
「いいの?」
「私も自分の仕事はしなきゃならないので」
「それはよかったわ」
「それは騎士の方たちと行くことになるのでしょうか」
まだ、魔法のコントロールができないから他の日とと一緒に行きたくない。それにこの前修練場で騎士を殺してしまったばかりだ。恨まれていてもおかしくない。
「やはり、騎士との同行は難しいよね。だけども、今回は同行するだけ、戦闘は騎士にすべて任せてもらって構わないわ」
……それはそれでどうなのだろうか?
行くからにはちゃんと働かないとダメだと思うのだが。まあ、張り切ってまた騎士に被害がでてはあちらも嫌だし、私も嫌だ。ここはエリザベスの言う通りにしよう。
「わかりました」
「では、3日後ね」
それから3日後の朝、私はアナベルに奇妙なものを着させられ修練場にいた。それは騎士が来ている白色の長袖長ズボン。そのの上に金色の鎧と兜、マントは赤く、兜の額ととマントの表には『私が勇者』と書いてある。
服は動きやすそうだからいいのだが、鎧とマントが目立つのとこの勇者という文字。
……すごく恥ずかしい。
「では勇者様、こちらに」
「…………はい」
私は階段を上り、馬車の上に乗る。馬車の上にだ。馬の上でも馬車の中でもなく、馬車の上に立った状態で乗る。柵はあるから落ちないとは思うが走られると足元が不安だ。だが、そんなことより。
……今から政治家運動でもするのだろうか。
いや、違うだろう。これは私のアピールだ。エリザベスも勇者が出てこないから苦情が来ていると言っていた。これで私の存在をいやでもわかるようにアピールするのだろう。
「開門‼」
騎士団長の号令で門がゆっくりと開く。騎士が馬で私が立っている馬車を囲みながら進む。
門を出ると初めて見る街が見れた。道路は白くて広い。左右にはでかい白の豪邸が並んでいる。
しかし、路上は静かなものだった。私はてっきりパレードのように道路の周りに大勢の人が並んでいると思ったがそんなことはなかった。
「ここは貴族街です。貴族は家の中から見ています。笑顔で前だけを見ていてください」
アナベルが馬車の屋根を開けて出てそう言ってきた。
アナベルの言ったように豪邸の窓やベランダから見ている人たちがいる。私は言われた通りあまりキョロキョロせず、前を見ていた。
「次の門から平民街になりますのでそこをくぐったら笑顔で手を振ってください」
貴族が街を5分程度進み門の前までくるとアナベルが馬車の屋根を開けて出てそう言ってきた。
「わかったわ」
門をくぐると大勢の人がいて大歓声が飛んできた。私は笑顔を作り、手を振り始める。馬車は左に曲がりへと曲がった。
平民街は貴族街と違っていろいろな色であふれていた。貴族街が一面白だったのに対して、平民街は壁には絵や模様が描いてあり、道路は茶色のレンガの道であった。その茶色も濃い茶色から薄い茶色までと統一感のない貴族街とは全く別の世界であった。貴族街を綺麗であるのに対し、平民街は鮮やかだ。
ずっとまっすぐ貴族街と平民街をはさむ壁に沿って進んでいると右へと曲がった。予想通りパレードのように街1週を回ったのだろう。
ただ、鮮やかだった街も最初だけだったのか進んでいくと壁の絵は消え、普通の家が多くなってきた。道も少し悪くなっている場所があるのかときたま馬車が揺れる。
「おおっと」
私は転びそうになり慌てて柵を握る。
そのままガタガタする道を片手で柵を握り、片手で手を振って進んでいった。パレードが終わったのは出発してから3時間はたったごろ。もう昼になっていた。
最後尾の騎士が門をくぐると馬車は止まり屋根が開いた。
「お疲れさまでした。入ってきてください。休憩です」
はしごを降り、馬車の中へと入る。
「簡単な物だけど」
出されたのはサンドイッチが詰まった弁当箱と紅茶の入った水筒だった。
あの日から私はアナベルに敬語を使わなくなったし、アナベルも私と2人きりのときは敬語で話さなくなった。今まで誰に対しても丁寧に接してきたせいかなんだかこういうやり取りが新鮮に思える。
「はぁ……」
紅茶を飲み、一息つく。水筒の保温性が低いのかぬるいがそれでもおいしい。
私は頬に手をあてて顔をマッサージする。
「疲れた~」
「お疲れ様」
……まさか、あんなアイドルみたいなことするなんて思わなかったわ~。
疲れたからだを癒すようにゆっくりと昼食をとって休んでいるなか馬車が動き始めた。
「もう終わり?」
「騎士は保存の効いた軽い食事ですので。到着まではまだ時間がありますからアイラ様はゆっくりでいいですよ」
私は言われた通り着くまでゆっくりと馬車の中で過ごすのだった。道はさっきよりもガタガタなっててあまり休めなかったが。




