41-召喚
今回から第2章! 視点も変わります
「すまないな。今夜も帰れなくて」
「仕方ないよ、お仕事なんだもん」
「夕飯は食べたか」
「今準備しているわ」
「『コンコン、専務』ちょっと待っててくれ。すまないが電話を切る。おやすみ」
「お父さんもおやすみ。お仕事頑張ってね」
電話を切った私は沸騰している鍋の火を止める。そのとき地面が光りだした。足元に目を向けると紋様のようなものが浮かび上がっている。
「え? え? なにこれ」
そのまま強くひかり、眩しくて私は目を閉じた。
目を開くと一面真っ白な空間に一人の男が立っていた。
「君には勇者になってもらう。魔王と神とその子を倒してほしいのだ」
目の前の男は意味の分からないことを述べるばかりだ。
「待って、待ってください。いきなり何ですか」
「君には行ってすぐ戦える力を与える。どうか人間を救ってほしい」
そのとき、ものすごい情報が私の中に入ってきた。その世界の神、目の前の男パワから見た世界のあらかたや魔法のこと、どのような種族が暮らしているかなどいろいろな情報が洪水のように流れてくる。その情報が流れ終わると少しめまいがした。
「では、人間を救ってくれ。依頼達成で君を元の世界に返すことを考えよう」
パワは言い終わるとまた、眩しくひかりだした。私はまた目を閉じる。
再び開けたときは目の前に白い修道服を着た女の人と周りにはたくさんの青い修道服を着た人がいた。なにやらわあわあと騒いでいる。
「よくぞ参られました、勇者様」
白い修道服の人が私にそう言い跪くと後ろにいる青い修道服の人たちも跪いた。
「こんにちは」
ぐうぅ~
あいさつをしている最中に私のお腹が鳴りだした。私はごはんの準備をしているときに呼び出されたのだ。今現在すごくお腹が減っているのだがこんなときに鳴らなくても。大勢の人たちに聞かれてしまった。
「クスッ。まず、お食事にしましょう。ついて来てください」
言われるがままについていくと大豪邸のような長いダイニングルームに連れていかれた。そして、一番奥の席に料理が用意されていた。その料理は美しく盛り付けられていてフランス料理みたいだ。
「どうぞ」
メイドの恰好をした人に椅子を引かれ座り、いろんな人に見られている中ごはんを食べることになった。
「いただきます」
うちの家もそれなりにお金持ちでたまに家政婦も呼ぶが、こんな衆人環視の中こんなでかいテーブルで一人ごはんを食べることなんてない。王族とかはこんな気分になりながらごはんを食べているのだろうか。味が全くわからないままごはんを食べ終わると皿が下げられ、紅茶が2つとフルーツが出てきた。
私から見て左の席にさきほどの白い修道服の人が座る。
「わたくしは神聖国家スピカの国主兼パワ教聖女エリザベスと申します。このたび急に召喚して申し訳ございません。神様から聞いていると思いますが人間を救ってもらうためあなた様をお呼びしました。どうか我々をお救いください」
頭を下げ、すごく懇願された。私も元の世界に帰りたいと思っているから頷くがこんなにへりくだられるとは。
「お顔をお上げください。もちろん、人間を救うためご助力します」
「ありがとうございます。勇者様」
「それはそうとそんなへりくだらないで下さい。一国の主なんですから。私の方が敬う立場なんですから」
「そんなことありません。あなたは神に選ばれた勇者なんですから」
「でしたら、お友達になりましょう」
「わかり、わかったわ。勇者様」
「勇者様もやめてください。って名前を名乗ってなかったですね。……アイラと呼んでください」
「よろしく。……アイラ」
「こちらこそよろしくお願いします。エリザベス」
こうして私とエリザベスは対等の関係を気づくことができた。
「それはそうと、最近の情勢を聞いてもいいでしょうか」
「? 神様からお聞きになったのでは?」
「あらかたは。でも、百年単位で来てなんともあいまいで」
私に流れてきた情報は300年前に神が飛び出して魔族のところに行ったとか。200年前に人間に魔法を授けたとか。魔族が世界の半分を占めているとか。最近、子供ができたとかなんともあいまいな情報しかはいってこない。だから、私はエリザベスにここ最近の情勢を聞きたいのだ。
「おっほん、まずは10年前にポラリスという国が魔王四天王ホムラの手に陥落したわ。国民全員死んだか捕らえられたそうよ。そして8年前ポラリスの近くにあるアルカイドという国が攻められたけどこれは被害はでたものの勝って魔族の軍勢を追い返したと聞いているわ。そのほかは魔族との国境を有している国は小競り合いとかも多いそうだけどここ10年滅んだ国はポラリスだけ。あとは、四天王のホムラがポラリスに根付いていて戦争の準備をしているかもしれないという情報を聞いているわ」
「そうですか。邪神と魔王についての情報はありますか」
「邪神はかつてパワ様の奥様だったイブですね」
神についての情報はヘルスーシャから送られた情報道理だ。なんならパワのほうが詳しい。
「魔王はいっぱいいて把握してませんが四天王はわかっています。大陸東側を支配している吸血鬼の魔王リョウマ、大森林を支配しているエルフの魔王カリン、大陸中央南部を支配している鬼の魔王イズミ、大陸中央北部を支配している有翼人の魔王ホムラ」
「魔王っていっぱいいるんですか?」
「ええ」
私が聞いている魔王は吸血鬼の魔王しかいない。それが複数人。これはパワの言っていた一人を倒せばいいのだろうか。それともすべてなのだろうか。
「魔王について他の情報は」
「ホムラが炎の魔法、イズミが水の魔法を使うくらいにしか情報がなくて」
あとは子供のことだが生まれたばかりなら情報などないだろうが一応聞いてみる。
「イブに子供ができたと言われたのですが、その情報はあるのでしょうか」
「子供? 神に子なんてできるの?」
「わかりません。その子も倒してほしいと言われただけで」
「その線の情報も調査しておくわね。他に聞きたいことはない?」
「今のところは大丈夫です」
「では、今日はおやすみになられて。アナベル、アイラを部屋へお連れして」
アナベルと呼ばれたメイドに従って私の部屋へと案内される。
「こちらのお部屋でお寛ぎください」
案内された部屋はまさにお姫様のような部屋だった。部屋は綺麗に刺繡されたソファや細かく模様が彫られた机など豪華な家具が並び、花とかも飾られている。部屋の大きさは100m²くらいだろうか。
「晩餐会に誘われたら食堂でお食事されますが、基本的にははこちらでお食事することになっています。また、お客様をお呼びするのもこの部屋をご使用ください。次にこちらは寝室になります」
隣の部屋は寝室だった。大きい。とても大きなベッドが部屋に収まっている。
「こちらは衣装室になります」
寝室にあった扉を開くと部屋1面に服が立ててあった。だが、着たらぶかぶかな大きな服から絶対に着れない小さな服まである。
「勇者様の性別などは聖女様が聞いておられたようですが、サイズはわからなかったのでいろいろなサイズをご用意しました。ある程度の間ここにある服を着てもらい、サイズを測り次第勇者様に合う服をご用意いたします」
いろいろなサイズの服があったのはそういうことか。たしかに召喚される人間の体形なんてわかるはずもない。するとその部屋に異質な段ボールがあることに気付いた。
「あの箱は何でしょう」
「ん? あれはなんでしょう」
私は気になり段ボールのガムテープをはがし開けてみようとする。
「危険です。そんなよくわからないもの。まずは入念に調べてから開けましょう」
「すみません。もう開けちゃいました。それとこれは私の私物でした」
その段ボールの中には手紙と私の下着があった。その手紙にはヘルスーシャからの伝言が書かれていた。
「女性の下着はすごくデリケートだと妻に言われたことがある。この世界の下着にはなれないと思うのであちらの神に頼み持ってきてもらった」
……そんな気遣いできるならとっととその妻と仲直りしなさいよ。
新章開始‼ 登場人物、用語一気に増えます。
楽しく読んでくれると幸いです。
次回 アイラVSアナベル




