37-仇
今回はフィン視点です。
空で2人と2匹が戦っている。それなのに俺は止めることもできない。魔法は射程外。援護すらできず、ただ茫然と見ているだけだった。
地上でのアルカイド軍と魔族軍の戦闘も終わったころキリュウの攻撃がやっとホムラに命中した。
その時城の方に変化が起こったように感じた。軍は出てきてないし、門も開いていない。でも何か動きがあったと感じる。
その正体がわかったのはホムラの腕が飛んだときだ。将軍である。7年前の侵攻から女を自分の妹をも監禁し、この戦時中国民を見捨て城に閉じこもった方針を取っていた国のトップがホムラと対面していた。
将軍はキリュウに近づき何か言っているように見える。そのときキリュウが天馬の背中へと奇妙な動きで向かい乗った。そのまま、1匹と1人は地上の誰もいないほうへ降りてくる。
俺は急いで降りていった方向へ向かう。
「キリュウ大丈夫か」
キリュウのもとへと駆け寄るとそこには寝っ転がる天馬と天馬を枕にし眠っているキリュウがいた。
「フンッ」
安否を確認しようとキリュウに触ろうとすると天馬が首だけ起こし警戒する。
「大丈夫だ。俺は何もしない」
警戒をとくよう声をかけるがそれでも警戒を解く気はなく、鼻から火をだす。強引に触ろうとできるがやったら天馬に攻撃されるだろう。それにかすかに寝息が聞こえる死んでいるわけではなくただ眠っているだけだ。
俺はキリュウから目を離し、上の戦いに集中する。
戦いは一方的だった。将軍ウィリアムがホムラを一方的に攻撃している。ホムラは防戦一方になっている。
……先のキリュウの攻撃が相当効いているということか。
将軍の魔法は風刃。将軍が剣を振るうとそこから衝撃波が飛び出て相手に斬撃を浴びせる魔法だ。ホムラもキリュウの攻撃を防いだように爆発で防御しているが将軍の連撃速度を追えず何発か斬撃が入っている。ホムラの背中から炎の触手が出た。それは将軍めがけて飛んでいくがその触手をぶった斬った。
「華陽‼」
ホムラが何かを叫ぶ。すると炎を纏った鳥が将軍へ突進した。鳳凰だ。火山に暮らすと言われている狂暴な鳥の魔物。先ほどもキリュウの戦っていたがホムラはあんな魔物を手名付けているのか。鳳凰は炎の渦を繰り出し将軍を襲っているがその炎の渦もまたぶった斬っている。
「うおおぉぉぉぉぉ」
その時城門が開いた。城から一斉に大軍がでている。そして、瓦礫にはさまれた中央道路で2つの軍の戦いが始まった。
そして目の前にさっきまで将軍と戦っていたホムラが降りてきた。
「ハァ、ハァ……」
降りてきたことに気付いた瞬間剣を抜いていた。
目の前に自分の両親を、自分の家臣を、自分の国を奪った仇がそれも弱った状態でいる。
……こんなチャンスもうない。
「ここで……殺す!」
剣を下から相手の首めがけて振り上げた。しかし、ホムラは翼で俺をはたき後ろへ後退した。
……完全に不意打ちだった。なのに。
「あなたは捕えて置いた、……そう逃げたのね。でもこんなに弱ってもあなた程度に後れを取らないわ」
そういって膝をついた状態から立ち上がった。もう一度ホムラめがけて突進する。ホムラは右手をこちらに向けてくる。爆破攻撃が来ることを予想し、左へと曲がる。すると右側で爆発した。衝撃は受けるが構わずホムラめがけて剣を振るう。振るった剣はホムラの目の前で軌道を変えホムラの左翼を斬り落とした。さっきと同じように翼ではたいてくると思ったが当たっていた。左腕、左翼と斬り落とされたホムラは出血もすごく体がふらついている。
「炎乱」
ホムラは腕と翼があった部分から炎の触手を出し出血を止めた。
「負けない、私は強い、私は負けない、人間なんかに、生きてきた年数が違う、戦ってきた年月が違う、絶対に負けない、……」
何事かしゃべり始め炎の触手を伸ばしてくる。避ける、避ける。弱っているからか下から見ていた時より遅く感じる。
避けた先にはホムラの腕が顔の直前まで迫っていた。爆発がくる。
……避けられない。
避けられないと思った。負けたと思った。
「ッ⁉」
そこへどこからか飛んできた矢がホムラの右腕を射抜いた。そのおかげで爆発されることはなかった。
……貫く‼
ズサッ
剣の先がホムラの胸に到達した。だが、硬い胸筋に阻まれ貫くことができない。
「私が人間なんかにぃ……」
ヒュッ
そのとき前から剣が横から矢が飛んできて、剣はホムラの右翼に刺さり、矢はホムラの右目をえぐる。
「ぐああ」
そのおかげでホムラの体から一瞬だけ力が抜ける。
……チャンス。
「貫けええぇぇぇぇ」
「あああぁぁぁぁ。……………………ア・・・アア、ア」
剣はホムラの胸を貫通した。炎の触手が消え、血が流れ、ホムラから生気が消えていく。目を閉じ、立ったまま絶命した。
……仇を、撃った。……。俺が。
ドーン
俺の真横に鳳凰が落ちてきた。それも死に絶えている。
「やぁ、王子様。横取りとはひどいね~。僕が殺すはずだったのに」
将軍ウィリアムだ。顔に火傷や煤がある。鳳凰相手に苦戦していたのだろう。
「いや~難しいね。体から風をだして飛んでみたんだけど空に住んでいる魔物は、近づかれると動きについていけないよ」
何も返答をしないとそのままひとりで話し始める。
「何? まだ無言キャラなの? いいかげんしゃべろうよ。さっきはあんなに大声出していたのに。仲間とは話しているでしょう」
そういって肩に手をかけてくる。
……うっとうしい。これは何かしゃべらないと逃げれないだろう。
「……これは俺とキリュウの功績だ」
こいつが少しの間相手にしていたのを大勢の人間が見たはずだ。だからホムラを殺したのがこいつになるかもしれないので釘をさす。こんなことを言っても意味はないかもしれないが。
「ん、当然じゃん。僕が戦った時にはもう弱ってたし、殺したのは君なんだから。成果は公正に評価しないと。……いや~助かったよ。僕じゃこいつを殺れなかったから」
意外だった。独裁者だと思っていたから功績はすべて自分のものと言うと思っていた。
「はいはい、敵の頭を撃ったんだからちゃんと仕事をしないと。首採って」
言われるがままに胸から剣を抜き取り首を切り裂く。
「ほら、首掲げて、大声だして、ダメだよ無言は戦争終わらないんだから」
「……。」
「あ~、じゃないと僕の功績になっちゃうけどな~」
「て、敵の」
「ホムラの首はポラリス国の王子フィンがとったあぁぁ‼」
背中から押されて声がした。寝ていたはずの人間の声が。キリュウが俺の代わりに終戦の合図を出していた。その声が響くと戦っていた魔族、人間どちらもがこっちを見る。俺の左手に持ち上げられてたホムラの頭を見る。
「うおおぉぉぉぉぉ」「うあぁぁぁ」
歓声と嘆声が同時に聞こえた。その声の裏でさっき叫んだやつは俺の背中で眠っていた。
「ありがとな、キリュウ」
「……ウ~、ウン」
「フッ」
俺は小声で背中に抱えている仲間に感謝した。
「ありがとな、ライアン,アーロ」
剣を飛ばしてくれた仲間と矢で援護してくれた仲間に小声で感謝した。
……これは俺たち4人で勝ち取った勝利だ。
キリュウが弱らせ、ライアン、アーロが援護してフィンがとどめをさす4人での勝利でした。+@なんか混じってましたが4人の勝利です。
次回 叙勲式




