34-悪寒
「逃げたらフィンを殺すの?」
「お前が私から逃げれることはないけどそう思ってもらって結構よ」
これは逃げられない状況だ。しょうがない今はこいつに付き合わないと。
「面白い騎獣を見せてくれたお礼に私のも見してあげるわ。来なさい華陽」
ホムラが呼ぶとこちらに向かって何かが飛んできた。それは燃えていた。そしてホムラのもとまでくると炎をあたりにまき散らし体長4メートルほどある赤い鳥が止まった。
「どう? 私の騎獣華陽は」
華陽がホムラの周りをゆっくり飛んでいる。
「で……でかいね」
「それだけ? この毛並みの美しさ、花のように炎を飛ばす技、賢そうな瞳、わからない?」
「……もちろん」
俺の答えにホムラは呆れた視線を寄せてきた。
「まぁ、いいわ。本題に入りましょう。お前ウィリアムが何を考えているのかわかる?」
「ウィリアムて誰?」
「なんでこの国にいるのに知らないのよ。この国の将軍よ」
ホムラがまたまた呆れたような視線を寄せてきた。
国の女を幽閉して、この一大事に軍を引きこもらせている将軍はウィリアムというらしい。
「……わからない。俺も今この戦争はアルカイドの負けと思ったところだから」
そう答えるとホムラは笑い出した。
「フッフッフッフッ……。やっぱりそうよね。私もそう思うわ。前回は北門破って北側を破壊しただけだったけど、今回は北と南を抑え、西も随時攻撃中。そして、着々と街を破壊している。確実に勝敗は決しているわ。……でも何か悪寒がするのよ。……わからない?」
「悪寒?」
「そう悪寒。何かは分からないけど。とんでもないものがあるような。何か秘密兵器でもあるのかしら?」
俺はホムラの問に首を振ることしかできない。ホムラも将軍の行動がわからないようだ。俺は逆に気になることを聞いてみた。
「あの城ホムラ一人で落とせそうだけどやらないの?」
魔法で建物を壊せるのだ。城壁をその向こうの城を壊すのなんてこの化物になら簡単にできるだろう。
「無理ね」
「え?」
「人間の城は結界が覆われているのよね~。あの結界魔法を通さないわー、中からは自由に攻撃ができるわーでずるくない? 直接殴るしかないのになかなか壊せないうえにそのすきに攻撃されるし。入口は門しかないのよ。見せてあげるわ」
そういってホムラは手を城の方へと向けた。その手にすごい量の魔力が集まる。
……ッ⁉ これはやばい
天馬にしっかりつかまる。少しでも気を緩めたら吹っ飛ばされそうなほどの魔力の圧だ。
「波動爆裂」
魔力の塊から渦のように炎が出てそれにそって周囲が爆発していく。渦は一直線に城へ向かい、その途中透明な壁のようなものに阻まれた。壁にあたった瞬間今までの攻撃がなかったかのようにホムラの放った魔法は消えた。今はかなり高く飛んでいるから地上への被害はないがこれをもっと下で撃っていたらすでに街はなくなっていたかもしれない。それぐらいの威力だった。
「どうわかったかしら?」
「…………壊せないことはわかった」
あまりの威力の魔法とそれをも無効にする守りに唖然としてしまう。
あんなものがあるならば籠城していれば食料次第だが負けはしないだろう。だったらどうして城へ国民を避難させなかった。将軍の行動が全くわからない。
その時城の方で変化が起こった。門が開いたのだ。城門から軍隊がでてきた。雄たけびをあげて城周辺にある瓦礫から物色してバラバラになっている魔族をどんどん襲っていく。
「え? でてきた」
驚いてしまう。
「今更でてきて何を考えているのかしら」
ホムラも怪訝な目を向けてそうぼやいた。
「戻らなくていいの?」
「そうね。何もわからなかったけど状況が動いてよかったわ。じゃあね」
そういってホムラは華陽と一緒に城の方へと飛んでいった。
「はあぁぁ~。……疲れたぁ」
……怖かった、怖かった、怖かった~。やばいやばいやばい。なんだよあの魔法。
とてもかなうとは思えない。今の攻撃でも透明な壁を破れないと知ってても俺だけに見せるために使ったのだ。だからあの威力の魔法を放ってもまだ余裕があるということなのだろう。逆にどうやって以前の侵攻を防いだのか気になってしまう。あんな化け物と大量の軍勢がいても北北側を破壊するだけで結局追い返したのだから。
考えてもわからないことなので思考を切り替える。今はわからない問題より目先の問題だ。
「フィンを救いに行かないと。天馬いくよ」
俺は北門のあるほうへと向かった。
ホムラの発言でわかってはいたが北門も魔族に制圧されている。しかし上から見てもそこにフィンがいるかはわからない。そこへ一人の有翼人が俺のもとへ向かってきた。
「見たことないこね~。何か用かしら?」
「人間の捕虜はどこにいる?」
「捕虜? 人間は全員殺したはずだけど……。あぁ、ホムラ様が一人だけ生かしていったけ。どこだったかな~。それに何で教えないといけないの~?」
目の前の有翼人はとぼけたように返答を返してくる。そしてだんだんとこちらに警戒の姿勢になる。これは戦闘を免れない展開になる。速攻で終わらすため熱血を発動させる。
「仲間だからだ!」
そう答えてファイアボールを撃ちこむ。初弾はかわされた。それでもかまわず次々とファイアボールを撃ちこむ。
「ちょっ、ちょちょちょっ。なんでそんな連射できるの~」
そんなおどけた態度を取りながらでも有翼人はしっかりと俺の攻撃をかわしつづける。
「ちっ」
「ちゃんと狙わないと。あたしには当たらないよ~」
そういいながら空中をちょろちょろと飛び回る。完全になめられている。
「じゃあ次はあたしが」
有翼人の手から黒い炎がでた。なにかくると身構えた瞬間天馬が殴られともに地面へと落下した。殴られたところから黒い炎がでる。
「いい騎獣ね~。とっさに動いて主人をかばうなんて」
地面へと降りてきて目の前に立つ。
……速い。強い。でも負けるわけにはいかない。
すぐに立ち上がり攻撃にでようとしたが、立ち上がった瞬間殴り飛ばされた。
「ほうほ~う。よくファイアボール連射するな~と思ってたけど常に炎をまとっている状態というわけね」
俺のお腹当たりから黒い炎がでる。動けない。痛い、痛いがそれよりも力がでない
「あ、その炎相手の力を奪うの。面白いでしょ~」
熱血を解除し黒い炎を消すため炎から熱を奪う。
「え? 消したの~? まあいっか」
こいつは他のやつとは違って遠距離から攻撃してこない。さっきから近づいて殴って攻撃している。その炎は射程の短いのか、単純に遠距離攻撃より殴るのが好きなのかわからない。だからわかる。次も殴りに向かってくるに違いない、それも立ち上がる瞬間に。殴られるとき迎撃する。
また立ち上がろうとしたとき近づかれみぞおちを殴られた。でも俺は必死に離されないように相手をつかむ。
「ん? な、何をした?」
相手は俺から逃れようと殴ろうとして止まった。
「絶対零度」
触れた相手の体温を奪う魔法。そのまま目の前の有翼人は体の表面に霜ができ凍ったように停止した。事実凍死した。




