31-必要なこと
広場について少したってフィンが帰ってきた。
「よくここがわかったね」
「……馬車が、止まる場所なんて、少ない」
最近はかなり流暢に話せていたと思ったがまた片言になっているなと思いながらフィンの言ったことに納得した。確かに大通りなんかに止めては一発で見つかってしまう。だから、ある程度の推測はできるのだろう。
フィンが戻ってからアーロとライアンも戻ってきていた。南門付近から避難している人たちの居場所が分かったようだ。
アーロの説明によると南門近くが家や仕事場だったものや首都アルカイドに家を持っていないものは親戚や仕事仲間、友人などのところに避難させてもらっているそうだ。傭兵はこの街の者もいるがこの街に住んでいないものの方が多い。だからそういう傭兵は商人のところへ行き交渉し魔族に荒らされないよう警護に雇ってもらっているらしい。
ライアンの父親ルイスの家兼店は酒場の隣だ。だから友人のところへ避難しているらしい。マスターや酒場で働いている人たちは南門に近くない従業員の家に避難しているそうだ。
というわけで俺たちはどこへ避難するのとなるが、ないのが現状であった。こっちは32人とかなりの大所帯である。受け入れてくれところがない。アーロの予定では城に行くはずだったが城が避難所になっていないのでそれも無理らしい。で、結局どうなるかというとここで待機になった。食糧は持てる分だけ持ってきたがいつまで続くかわからない戦争とパーソナルスペースのない空間はみんな堪える。しかし、みんな特に不満は言わなかった。
しかしこのまま戦争が続けば食べ物がなくなってしまう。戦争中それも門がひとつ落ちていることで店などは全てしまっている。早く終わってもらわないと困る。しかし、傭兵は国からの要請がなければ戦争に参加できないそうだ。自営や雇ったものを守るくらいはいいが勝手に魔族と戦うと国の兵士と連携もとれず被害が拡大してしまう場合があるらしい。これもアーロの誤算であった。戦争になったら傭兵にも要請がくるだろうと思っていたらしい。国の対応が何もないせいでこちらも何もできなくなっているそうだ。
だが、戦争は悪い方向に早く終わろうとしていた。アルカイドについた次の日魔族が南門から大量に入ってきたらしい。アーロが朝見回りに出かけているとき南門から入る魔族の軍団を目撃したそうだ。ただこの軍団は昨日と同じように城方面を攻撃するだろうがアーロの見解だった。
その昼間俺たちが滞在している広場にオーク5人の部隊がきた。俺たち4人はすぐに馬車とオークとの間に立ち戦闘の態勢に入る。女性たちは隠れるように馬車の中に入った。
「おいおい、こんなところにいい獲物がいるぜぃ」
「女だ。女だ」
オークたちは下卑た笑顔で笑いながら話している。
「お前ら黙れ。おい、その赤兎馬はなんだ?」
そこへリーダー格のオークが俺たちに問いかけてきた。ただそのオークへフィンが駆け斬りかかった。斬りかかれたリーダー各のオークはすぐに持っていた槍で防いだがすぐにフィンは二撃目に行きリーダー格のオークの右腕を切り落とした。そして、フィンがオークたちを睨みつけて言った。
「お前らに言う必要はない」
腕を斬られたリーダーオークは後退し、命令を飛ばす。
「あいつらを殺せ‼」
命令を受けたオークたちは一斉にこちらへ突進してきた。相手全員が戦闘態勢に入ったことでフィンはこちらへ跳ぶように後退してくる。そこへオークが突っ込んでくる。
ドゴオオォォ!!!
こちらに突っ込んできたオークたちを火柱が襲った。俺は戦闘態勢に入るとすぐに熱血を使い、フィンが前に出ると同時に火柱をセットしていたのだ。それを踏まないためフィンも気を付けてこっちに戻ってきていた。しかし、火柱で倒せたのはオーク2人だった。オークたちの陣形が前衛2人、後衛2人だったため前衛は踏んでくらったが、後衛は止まって火柱に当たらないよう迂回して突撃してきた。しかし、3対2。3人あっさりと2人のオークを倒してしまった。
「なっ、なっ」
リーダーオークは一瞬の出来事に驚き固まっている。
「キリュウさん、あれを拘束してもらってもいいですか」
俺はアーロの指示通り火の縄をだしてリーダーオークを縛る。
「さて、いくつか聞きたいことがあるのですが」
「俺は何も答えん‼ 殺せ‼」
アーロはリーダーオークの前に立ちまるで今から拷問でもしそうな顔になっている。実際に拷問が始まったが。アーロはオークの口を布で縛り、俺に縄の温度を上げるように言う。正直拷問なんて見て気持ちいいものではない。でも情報は大事だ。それは情報社会で育ったのだからよくわかる。だから俺はオークの方を向かずに縄の温度を上げた。
「うーーーー。うーー。」
「ひっ」
布で覆われているせいで籠ったうめき声が聞こえてくる。反射で自分がやっている側にも拘わらずおびえてしまった。
「言う気になりましたか」
しかし、オークは首を縦に振らなかったのかすぐにアーロから温度を上げるようまた指示がとんできた。そのままどんどん上げていき、うめき声も聞こえてくる。
「もっとです」
「でも、これ以上、上げたら死ぬ、んじゃ」
俺はこれ以上上げると死んでしまうとアーロに伝えたことをすぐに後悔した。
「では温度を下げてください。氷より冷たく」
「は?」
「やってください」
アーロは冷酷な表情でそう告げた。このまま上げていればオークは死にうめき声ももう聞くことはなかっただろう。もうこの手で何人も殺している。だから殺すことへためらいはなかったが、相手を苦しませることには抵抗がある。やりたくなかったが3人とも何としても情報を引き出させたいのか早くとせかしてくる。俺は観念して縄の温度をマイナスまでどんどん下げていった。後ろからはさっきよりも大きなうめき声が上がり何秒かしてもういいですよとアーロが言ってきた。俺は縄の温度を空気中の温度にした。
「さて、質問に答えてもらいます。どうして、城ではなくこっちに来たのですか」
「命令だ。街を攻めろと命令があったんだ」
オークは鼻水をたらしすごい勢いで話し始める。そして、オークから引き出した情報は魔族側の戦争の経過だった。
1日目は一部の地上部隊が城の北門を航空部隊と他の地上部隊が城壁を攻撃したそうだ。1日目で突破はできなかったが魔族側が優勢であったそうだ。2日目も航空部隊による南門の開門。しかし、3日目は2方向から城を攻撃したが何の戦果も得られない。死者は多くないがそれゆえに兵量がどんどん減っていく。そこで4日目、作戦を変更して、城から街へと攻める場所を変えたそうだ。街から食糧の強奪もできる。兵士が焦って城から出てくるかもしれない。
情報は引き出せた。しかし、拷問でいっきに疲れた。
「ごめん、休んでいい?」
「はい、いいですよ。お疲れ様でした。すみません、キリュウさんは嫌がっていたのに無理をさせて」
「……必要なことだと分かっているから。気にしないで」
そう言って俺は馬車へ向かい眠ろうと寝ころんだ。しかし、どうしてもうめき声を思い出して寝付けず、他の魔族が訪れてしまった。




