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異世界転生してもハーレムは作れません  作者: ミカン
第一章 女のいない世界
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29-天気様様

 馬車でアルカイドまで向かう。馬車はポラリスにあったものだ。昨日まで捕まってボロボロになっていたのだ。急に長距離の移動を徒歩で行くことなど不可能である。

 ただこの馬ただの馬じゃない。体は赤く、鬣は茶色でウサギのように耳が長く、普通の馬よりは速いし、力も強いらしい。赤兎馬という魔物らしい。魔族が一般的に使う馬らしく、自分より魔力が多いものには従順だが、魔力が少ないものはいうことを聞かないし、乗せることもないという。

 今その赤兎馬に何人かの魔力が多いものが御者をして馬車を動かしている。当然俺も。

 俺の赤兎馬は他の赤兎馬より耳が長い。馬を選ぶとき自分から俺の方へと寄ってきた。

 御者なんてしたことなかったが、この赤兎馬は賢く、俺は手綱を持っているだけで思い通りの方向へ勝手に進んでいく。非常に楽である。

 馬車には他に結構な食糧が乗っている。ここにいる全員の数は31人。いくら赤兎馬が速くても速すぎる強行軍は馬車だろうと負担がある。だからアルカイドまで3日くらいだろうといわれた。徒歩より速いから全然速いけど。

 馬車の中は静かだった。これから戦地へ赴くのだ気楽にはいられないのだろう。それに相手は自分たちの国を占拠した存在。非常に気まずい。


 ……こういうときどうすればいいんだろう。


 他の馬車でもこんな感じなのだろうか。はぁ、せめて、アーロかライアンは馬を引かないのだからこちらに来てほしかった。


 ……うーん、話題、話題……ない!


 昨日会った人とする会話。そんなものわからない。共通の話題はポラリスにいた魔族について。でもそんな話題は彼女たちからすればいやだろう。

 この気まずい空間がずっと続いて1日目の移動は終わった。


「アーロ、明日は俺の馬車来てよ。馬車の空気が気まずくて、これが3日も続くとなると」


 夜、野営地にて俺はアーロに頼み込んだ。

 どうやら他の馬車ではお通夜みたいな感じではなくそれなりにみんな会話をしていたらしい。今までつらかったのだから楽しくなるようにしていたそうだ。


「警備の都合上1台には1人が付きたいのですが……」


 馬車は4台。俺たちは全員バラバラの馬車に乗っていた。


「そこをなんとか」

「無口なフィンもやれているんです。アルカイドでも友達を作ってたじゃないですか。キリュウさんならできます」


 そんな励ましや勇気づけじゃなく来てほしいのだが。同じようにライアンにも頼んだが無理だった。

 場の空気をよくするのも大事だが、警備のほうが優先順位は上だからである。


 次の日、前日と同じようその空間は静かであった。


「え~、え~と、……天気がいいですね~」


 昨日の夜と今日の朝考えてでた言葉がそれである。これが俺のトークスキル。言葉が出ただけでも褒めてほしい。


 ……つなげて。なんとかこの言葉で会話になってくれ。


 俺は祈るように前を見る。


「……そ、そうですわね」

「雲一つないから……暑いくらいかしら」

「もし、屋根がなかったら倒れていたかもしれませんわね」


 なんとかつながった。あとはこの会話を発展させなければならないが。

 俺は後ろを向く。みんな俺のほうへ視線を向けている。


 ……え? 俺の番?


 頭を巡らし必死に次の言葉を考える。そして、みんなの服装が厚手の衣装なのに目を向ける。その服装はいかにも貴族の衣装といった感じで暑そうだ。室内でも熱中症になることだってあるのだ。こんな格好ではつらいだろう。


「たしかに、その服装が暑そうですね。こ……氷とか作れますけど……いりますか?」


 俺はさて、どうだといった感じで後ろを見る。


「ぜ、ぜひ」


 よく見ればみんなかすかに汗をかいていてつらそうである。


「ハンカチとか持ってたら貸して下さい。なかったら後ろから布でも取ってもらって」 


 手綱から手を離し、渡されたハンカチの上に空気中の水分を集め凝固させて氷を作り出す。水分を集めることに全神経を集中させて氷を作り出す。そして、ハンカチで包んで返していった。


「ふぅ」


 水分を集めるのはかなり大変だった。ただ、手綱を離してもちゃんと進んでくれて事故になることがなくてよかった。


「こ、氷まで作れるなんて⁉」

「炎とは対照的なのに……」

「いったいどんな魔法なのでしょう?」


 ……よし、この会話になってきた。


 俺は内心ガッツポーズをとる。流石、天気。年齢、性別関係なくてもできる会話。大学入るとき散々調べまくってよかった~。


「俺の魔法は周囲の温度を操るって感じかな。温度を上げて火をだし、下げて氷を作っている」


 なるべくわかりやすく説明していく。説明しながら馬車の中が涼しくなるよう馬車ないの温度を少し下げる。気分はクーラーである。

 後ろをみれば氷を額に当てたり、頬に当てたりして、気持ちよさそうにしている。


「お、温度を……」

「そんな魔法初めて聞きました。」

「温度を操れるなんて暑いや寒いとか感じなくてよさそうだわ」


 ……確かに、この世界に来てからあんま感じたことないな。


「確かに、ないですね。毛皮の服とかすごく暑そうなのに快適だし」

「まぁ、それはいいですわね」

「私も魔法が使えるならそんな能力がいいわ」

「夏は得に暑いからねぇ~」


 そのまま彼女たちは暑さをテーマに話題を展開していく。夏の暑さの我慢話だ。これでここの馬車も静かな気まずい空間とはおさらばだろう。よかったよかった。天気様様である。

 2日目はそのまま魔法の話だったり、暑さだったりと会話がどんどん続き1日目では考えられないほどにぎやかな場になった。

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