25-無意識にセーブでもしているのか?
翌朝、昨夜考えたことをアーロたちに伝えると返ってきた言葉は不可能であった。
「アルカイド以外に難民を受け入れてくれる国はあまりないんです。近場の国々はどこも厳しいですから」
「スピカなら受け入れてくれるんだが……遠いからな」
「あるならそこに」
「誰が連れて行くんですか」
俺がスピカに送ろうと提案しようとしたときアーロにさえぎられてしまった。
「我々に難民を送り届けることなんてできませんよ。食料も時間もお金もないんですから」
そう強く言われると反論することができない。難民達だけで行けというのも酷なものだろう。誰かに頼むとしてもお金を取られる。結局助けてもアルカイドに行くと決定され作戦会議が行われた。
「今回は囚われた人々の救出とポラリス内の魔族の殲滅が任務です。人間は城の牢に囚われていると思うので城に侵入したらフィンの案内で牢とへ向かいます。魔族は見つけたら即攻撃で構いませんですが、別れないようにしてください。いくら主力がいなくなったとはいえそれでも数は多いです。油断しないように」
アーロは淡々と説明していく。
「キリュウさん、この前逃げだすとき飛んで逃げたんですよね」
俺は嫌な予感がしてきた。
「僕たちを背負って城のてっぺんまで送っていください」
「無理」
即答であった。
「あれは火事場の馬鹿力というか。危険だったからできたことで。目立って上空で迎撃されて着地できないかもしれないし、魔力消費が激しいからついた後戦える魔力なんてないと思う。」
そして、言い訳をペラペラと述べる。理論上は可能。でも、気持ち的に嫌だ。もちろんさっき言ったことは事実だ。本当に魔力消費が激しいし音も大きく光だって出る。ついたはいいが戦えないでは困る。この前すら大した役に立ってなかったというのに今回もアッシー君で終わるなんてまっぴらだ。
「そうですか、ではいつも通り城に侵入しますか」
アーロの説明を聞きポラリスへと向かう。中はこの前見たときと同じ廃墟でしかない。このまま走って城の方向へと向かっていく。城は堀で囲まれている。だから城へ入るには橋を渡って通らなければならないが跳ね橋で橋は上に上げられ通ることはできない。アーロはいつも通りと言っていたがまた、堀へ飛び込むのだろうか。
そう思っているとアーロが弓を構えた。アーロが射た弓は城壁の方に刺さった。その矢には綱が繋がれていた。アーロが手に持っている綱を掘り周りにある柵へと結ぶ。そして、もう一本同じように綱が繋がれた矢を射た。2つの綱が10cmほどの間隔をあけて並んでいる。
「ではいきますよ」
そういってフィンから綱渡りをし始めた。いやこれを綱渡りといってもいいのだろうか。フィンは2本の綱の上で走っている。左側の綱に左足で右側の綱に右足で踏んで。こんな超人的な動きを俺ができるのだろうか。フィンが渡り終わるとアーロも走る。だが、ライアンはアーロが終わっても綱に足をかけない。
「キリュウ先いっていいぞ」
ライアンがそう言ってきた。よく見ればライアンの顔が少し青い。ライアンも自信がないのだろうか。しかし、俺だって自信がない。
「いやいや、ライアンが先に」
2人して怖気づいて譲り合いをしているとアーロが戻ってきていた。
「2人ともなにをしているのですか」
「アーロこの作戦の欠陥を見つけた。」
ライアンがアーロにそう言いだし俺とライアン二人はハモッテ言う。
「「俺たちこれ渡れない!」」
「何を言っているんですかこれくらいさっさとわたってください」
「いやいや、何を言ってるの? こんなのどんな超人技術だよ」
「うん、うん」
ライアンが反論を言い、俺はそれにうなずく。
「ではどうやって城へ行くのですか」
アーロはそう聞いてくる。ほかにあるなら言ってみろというような顔で。でも、俺はすぐ思いついた。でも言わない。さきほど無理と言ったのだから。
俺は足に魔力を込める。そして、飛んだ。ただ、この前のようなスピードを出さない。綱より下を飛び、音も光もあまりでないよう魔力を小さく調整しながら飛ぶ。調整が難しく上がったり下がったりと高度が安定していない。後ろでライアンがずるっと叫んでいるが気にしない。これが俺の渡り方だ。壁までつくと音も光も抑えれるようゆっくりと高度を上げていった。そして、無事城壁に渡ることができた。
俺が渡りきったときにはアーロから早くいくよう催促されたのかライアンが半分くらいまで渡っていた。腰を曲げ落ちそうになったらすぐ手で綱をつかめる体制でゆっくりと落ちないように進んでいく。そうして3分くらいかけてライアンは綱を渡った。ライアンは渡りきると俺のずるだの卑怯だの言ってくる。俺はそれに反論する。そうこうしているとアーロが渡ってきた。
「フィン、ばれていませんか」
アーロの問にフィンはすぐうなずく。
「2人とも、喧嘩してないでいきますよ」
フィンを先頭に城内へと向かう。そして、城の裏口のようなところから入った。城内の狭い通路を右へ左へ右へ左へと進んでいく。まるで迷路のようだ。そして、目の前に大きな扉と一人のゴブリンが見えた。だが、見えたゴブリンはすぐにフィンが斬り殺された。速すぎる。この前のホムラとの戦闘の時はこんなに早くなかった。この前のことをしっかりと反省し、気持ちが切り替わっていることがわかる。俺がフィンの速さにあっけにとられているとすでに扉が開いていた。扉の先にはゴブリンがもう1人。これもフィンがあっという間に倒した。
扉の奥は牢だった。そこにはたくさんの全裸の女性がいる。だから、急いで目を背け来た方を見る。
「おい、どうした」
ライアンは後ろを向いた俺にそう問いかける。
「ここで誰かこないか警戒しておくよ」
そう言っておく。童貞には全裸の女性たちは刺激が強すぎる。ほかのみんなは牢の鍵を開けていっている。後ろからは喜ぶ声、泣いている声、などいろんな声が聞こえてくる。
「何をしている」
そして、前からも声が聞こえた。前方からゴブリンが2人やってくる。俺はすぐに魔法の準備をする。
「ファイアボール」
自分の周りに火の弾を2つ作り放出する。狭い廊下2人はかわすことができず一発ずつ直撃した、だが、あたりどころが悪かったのか倒すほどではなかった。2人は止まるもまた、こちらに突っ込んでくる。そのとき後ろから火の弾と矢が飛んでくる。火の弾は左のゴブリンの頭に矢は右のゴブリンの頭に命中し、2人は絶命した。
「攻撃するなら頭を狙え」
フィンが後ろからそう言ってやってくる。フィンがこんなにはきはきと喋ったのを初めて聞いた。とそんな失礼なことを考えたが忠告はちゃんと聞き入れすぐにうんとうなずく。
さっきの魔法とっさだったとはいえ威力がいつもより落ちていた。いつもの威力ならどこにあたろうが絶命しただろう。さっきのゴブリンたちは普通に喋っていた。森でのウサギやクマは喋らない。だから、ためらいもなく殺せた。だが、さっきは殺せなかった。日本語を聞いて人間と同じように思ったのだろうか。
……俺は無意識にセーブでもしているのか?
命をとることをためらってはいられない。これは互いの命を懸けた殺し合いなのだから。
こんな気持ちで参戦していたなんてフィンのことを言っていられない。俺は気持ちを切り替えた。
「次はちゃんと殺る」




