24-吸熱反応
キャンプ地に戻るとアーロもフィンもまだ寝ていた。汗もかき、熱もさらに上がっているきがする。これはまずい気がする。
二人はホムラに頭をつかまれなにかの魔法をくらって倒れた。風邪なら自然に治るものだ。だがこれが魔法で引き起こされたものならまずい気がする。
「フィン、魔法で高熱をおこすことはあるの?」
「……人を、癒す魔法がある。人をびょ、うきに、するのも……」
あるそうだ。一応まだ症状は熱しかでてない。ホムラの魔法がなにかしらないが俺やフィンと同じ炎の類だろう。だったら、ただ熱が上がるだけだろうか。
熱。……ん? 熱? 俺の魔法って熱だよね。これって治せないかな……。
俺はアーロとライアンの額に手をおく。
……治れ!
「な、にを、してい、る?」
俺の行動を不思議に思ったのかフィンはそう問いかけてきた。うん自分でも謎だと思う。いくらその魔法をもっているとはいえ祈って治るわけがない。
水でぬれた布もすぐにあつくなる。熱さまシートでもあれば長時間使えて楽なのだが。
熱さまシート。熱。……あっ‼
俺はまた、二人の額に手を置く。そしてイメージする。吸熱反応を。吸熱反応は周りの熱を奪う反応。俺の魔法が熱で熱を操ることができるのなら熱を発生させることも熱を吸収することもできるはずだ。
俺の体内に2人の熱が入りほんの数秒で終わった。なんともあっけない感じだ。
「フィン、2人の熱は?」
俺の体感温度がおかしくなっている可能性もある。だから、フィンに問うてみる。
「なっ、治ってい、る」
成功してよかった。これであとは2人が目覚めるだけだ。
その夜は二人は元気よく目覚めた。
2人が起きてから昨日の闘いの結果を伝えた。ホムラから敗走したこと。2人がホムラの魔法で高熱がでていたこと。そして、次はどうするのか作戦を練る。
「昼……ま、魔族の軍勢、がうごいて、るのみた」
「それはどういうことですか」
フィンの発言にアーロが食い気味に問う。フィンが見たのは昼間ポラリスの街から魔族の軍団が大移動していたらしい。その数約五千。ただの傭兵4人の追跡にしては多すぎる。それに、軍団は別れたりせず、全体が一方向のみに移動していたという。これは誰でも簡単に予想がつく。つまり、魔族側が人間側に対する侵攻だ。
「これって、俺たちが仕掛けたから……」
俺が自分たちのせいで戦争に発展すると危惧しているとアーロが否定した。
「いえ、違うでしょう。懸念はしていました。先日偵察に赴いたとき門への集まりが依然より多いように感じたんです」
アーロの発言から察するにこれは前から進められてきた計画的な侵略となる。だが、問題は原因なんかより被害がでるかどうかだ。
「早く、戻らないと」
「あぁ、今すぐにでも」
「まってください」
俺とライアンが焦って立ち上がるとアーロが静止の声を上げた。
「フィン、軍の中にホムラはいましたか」
「……うん」
アーロの問いかけにフィンはうなずいた。つまり、アルカイドへあの化け物じみた強さの魔族が向かっていることになる。
「では、私たちはポラリスにいる魔族を一掃しましょう」
「は?」
「え?」
ライアンと俺はアーロが出した結論のわけがわからない反応を示す。今アルカイドが攻め込まれるかもしれない中どうして救援に戻らないのか。それに、ホムラを倒さなければ一掃しても状況は何も変わらない。
「アルカイドには軍も傭兵も、そしてあの将軍もいます。だから、大丈夫でしょう。なら今は逆に攻めてポラリスの人たちを開放すべきです」
ポラリスに人? ポラリスは魔族に侵攻されて滅ぼされたんじゃなかっただろうか。
「ん? ……ポラリスに人なんているの?」
「えぇ、おそらくまだいるでしょう。牢屋で過ごしているのか。奴隷になっているのかはわかりませんが。それにアルカイドから連れ去られた女性の方も」
アーロの言わんとしていることがやっとわかった。敵のボスと大多数の兵がいない間に人質を救い出し、連れて帰ろうということだ。
「だが……」
ライアンはそれでもアーロの決断に納得していない。それもそうだろう。アルカイドにはライアンの父親ルイスがいる。家族が心配になることは当然のことといえる。
「あなたの心配もわかります。でもアルカイドはちゃんと守ってくれるでしょう。いくらあの将軍がクソ野郎でもこと戦闘に関してだけは信頼できます」
「う~~~、……わーかった」
アーロの説得により長考の末ライアンも納得したらしい。だが、ひとつ気になる。将軍がクソ野郎とはなんのことだろうか。
「将軍がクソ野郎てどういうことなの?」
俺がそう言うとみんながなぜか押し黙る。え~とそんな言いにくいことなのだろうか。そして、アーロが口を開いてくれた。
「将軍は国中の女性を保護というなの監禁を行っているんです」
それは衝撃的なことだった。国の首長、将軍は8年前に起こった魔族側のアルカイドに対する侵攻以降たくさんの女性が拉致されているとわかったそうだ。だから、国中の女性を保護して城に住まわせた。そして、城内の一定の場所からでることを禁じられ、家族や知人との面談も申請して申請が受理され順番がきてやっとあえるそうだ。しかし、これも順番待ちがあるせいで会えるのはほんの少しの間。そして、若い女性は国の上層部に娼婦のような扱いを受けているらしい。
普通こんな法律がでたら反対する者もでてくるはずだ。実際でたそうだ。でも全員将軍に倒された。アルカイドでは強さが絶対。弱いやつには発言権がないそうだ。だから、誰も異を唱えれない。誰も将軍には勝てないとわかっているから。
そういえば、以前ルーカスが城の方を睨むように見ていたことがあった。あれは将軍を憎んできたのか。
女性だけを拉致るとか皆殺しよりむずくねと思っていたがまさかこんな真実があったとは。
「その話を聞くとポラリスにいる人間を助けても待っているのは監禁になるんじゃ」
「えぇ、そう……なりますね」
アーロの語尾が弱弱しくなった。
「だからといって助けないわけにはいきませんから」
魔族に囚われている彼女たちに今後待っているのが監禁だとしても奴隷よりはましだろうということだ。たしかに生活レベルはあがるだろうが釈然としない。
「まぁ、救う前からこんなことを考えて結局救えなかったんじゃ意味がありません。今は明日の戦闘に備えて休みましょう」
アーロは考えの後回しを提案してきた。そして、全員が寝てしまった。だが、俺は夜中寝るまでずっとこのことを考えてしまった。そして、考えた末にでた結論はアルカイド以外の国へ送るであった。




